藤田寛之が激動の2022年を振り返る(撮影:山代厚男)

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2022年は53歳の藤田寛之にとって転換期となった。40歳を過ぎてから12勝を挙げ、12年には43歳で賞金王に輝いた男も、昨シーズンはスイングの不調に苦しみ、23季連続で守ってきたレギュラーツアーの賞金シードから陥落。今シーズンは生涯獲得賞金25位以内の資格でレギュラーツアーに参戦したが、賞金ランキング109位で復活シードとはならなかった。来季の出場権を得るために26年ぶりに挑んだファイナルQTでは57位に終わったため、各試合の予選会を勝ち抜くか、推薦での出場に限定される。
一方で、20年から参戦している国内シニアツアーでは、3年目で初めて出場義務試合数をクリアし、初優勝を含む2勝を挙げて賞金ランキング2位に入った。これで、賞金ランキング10位以内の上位2名の資格で、来年のシニアメジャー「全英シニアオープン」、同4位以内の資格で「全米プロシニア」と「全米シニアオープン」の出場権を得た。どんな心境の変化があったのか。改めて本人に激動の2022年を振り返ってもらった。
■シード復活を目指したレギュラーツアーでは賞金ランキング109位でしたが、シニアツアーでは賞金ランキング2位に入りました。この1年をどう評価していますか?
「当初は『レギュラーツアーでのシード復帰』を、自分の最大のテーマとしてスタートしました。でもなかなかレギュラーツアーのレベルについていけず、結果が残せないまま6月にシニア(スターツシニア)で初優勝した。以前からメジャーにこだわっているところがあって、その優勝がきっかけで、“もしかしたら”って思ったんですよね」
■ちょっと待ってください。その優勝した試合でシニアメジャーの可能性が出てきたときに、「シニアにシフトしますか?」って聞いたら、「レギュラーでも頑張りたい」っておっしゃっていましたよね?
「そのときはおそらく鼻で笑っていました。『俺はレギュラーの人間だから』って(笑)。スターツはたまたまレギュラーと重なっていなかったから出るんだと自分で納得していたし。『勝ってどうするの?』って聞かれても、『俺はレギュラーの人間だから』だったんですよ。ところが時間が経ってよくよく考えてみたら、すごく魅力的だなって(笑)」
■『レギュラーで戦っている俺と、海外メジャーに出ている俺はどっちが価値がある?』という逆質問もされました。
「悩ましいですよね。要するにプロの価値はどっちが上なのか? 藤田寛之は“王道”を行く人間だから、階段を上るのに大義名分が必要なわけです。はじめはレギュラーの階段を上っていった。『レギュラーの賞金シード』という今までと同じ大義名分でいいわけです。だけど、シニアに優勝したことでもうひとつの階段ができた。その階段の上には『シニアメジャー』という大義名分があるから、そっちの階段を上ろうかって。初めてシーズン中に目標が変わりました。あの優勝がすべてを変えましたね」
■それで夏以降はレギュラーではなく、シニア出場を優先していったわけですね?
「シニアの賞金が高い試合が続くところとレギュラーが重なっていた。そのときにどちらを選択するか迷ったわけです。レギュラーに出られるのに何でシニアに行くの? という人もいるかもしれない。自分のなかではすごく難しかったけど、海外メジャーというのを大義名分にして、シニアツアーを選びました。スターツに勝っていなかったら、おそらくずっとレギュラーに出続けていたと思います」
■結果的にシニアメジャーの資格をつかむわけですが、レギュラーもシニアもどちらもうまくいかない可能性もありましたよね?
「自分たちプロは結果論で生きるというか、評価を受ける。だから変なプレッシャーはありましたよね。シニアを選んだからにはシニアメジャーだけはゲットしないとって。すごく悩ましくて、なのにレギュラーはスキップしないといけないわけです。例えば、セガサミーカップ(8月18〜21日)とか、KBCオーガスタ(8月25〜28日)とか、ANAオープン(9月15〜18日)とか(過去に)勝っている試合を全部『ごめんなさい』と言ってシニアに行かないといけなかった。自分のなかで本当に苦しかった」
■しかし、最終戦はシニアの「いわさき白露シニア」ではなく、レギュラーの「カシオワールドオープン」を選びましたね。
「シニアの賞金王の可能性があれば、自分はシニアに行ったんですよ。試合の締め切りの時点で(プラヤド)マークセンが5連勝していたから、最終戦に勝っても賞金王はなかった。なのに行くのは嫌で、だったらシーズン最初はレギュラーでスタートしているので、本筋というか王道のレギュラーを選びました」
■カシオで単独5位以内に入れば、レギュラーの逆転賞金シードもありました。(結果は68位タイ)
「ある、ある、ある。だけど正直、カシオのKochi黒潮カントリークラブは自分には向いていないわけです。シニアのほうが楽しいのはわかっている。でもそこは自分のこだわりだと思うんですけど、最後の最後まで諦めずに『やるべきことはやった』と自分自身で思いたいし、あとから『何で?』とかいろいろ言われたくなかったんです」
来季はシニアメジャー3試合の資格を獲得し、海外での活躍も期待される藤田。国内ではシニアと推薦でのレギュラー出場をメインとしつつ、下部のABEMAツアーの出場も視野に入れている。インタビュー後半では、なぜ賞金王にまで登りつめた選手が、下部ツアーに出るのかについて迫る。
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