イーロン・マスク氏はTwitterのCEOに就任して以降、言論の自由を掲げて数万件のアカウントを凍結から解除している一方で、マスク氏のプライベートジェットの離着陸情報を発信するアカウント「ElonJet(@ElonJet)」を凍結したり、そのニュースを報じた複数のジャーナリストのアカウントを次々と凍結したりと、その不安定さが懸念されていました。その数日後、Twitterユーザーの投票にしたがってマスク氏はジャーナリストのアカウントを凍結解除しましたが、一部のアカウントは凍結したままであったり、この件とは関係なく過去に凍結されていた政治系アカウントが大量に復活したりと、さまざまな問題が指摘されています。

Elon Musk re-enabled Twitter accounts for several journalists banned over @ElonJet - The Verge

https://www.theverge.com/2022/12/17/23513620/elon-musk-suspended-journalists-twitter-reinstated-elonjet

Twitter Reinstates Some Accounts of Suspended Journalists - WSJ

https://www.wsj.com/articles/twitter-reinstates-some-accounts-of-suspended-journalists-11671292940

Elon Musk reinstates Twitter accounts of suspended journalists | Twitter | The Guardian

https://www.theguardian.com/technology/2022/dec/17/elon-musk-reinstates-twitter-accounts-of-suspended-journalists

フロリダ在住の大学生であるジャック・スウィーニー氏が運営する「ElonJet(@ElonJet)」アカウントは、連邦航空局(FAA)が公開している情報を解析することでマスク氏のプライベートジェット情報を追跡しており、過去にもマスク氏から直接口止め料を提示されるなどのコンタクトを受けていました。そして、2022年12月14日の朝頃にElonJetおよびスウィーニー氏の個人アカウントは凍結され、同時にTwitter Safetyも「他人の位置情報をリアルタイムで共有することは禁止されます」とツイートしました。

イーロン・マスクのプライベートジェットを追跡するTwitterアカウントがBANされる - GIGAZINE



ElonJetが凍結されたというニュースは、数多くのメディアによって一斉に報道されました。しかし、報道の翌日から2日後までの間に、CNNやワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズといったメディアのジャーナリストがTwitterアカウントを凍結されてしまう事態が報告されました。

Twitterがイーロン・マスクのプライベートジェット騒動について報じたジャーナリストたちのアカウントを次々と凍結 - GIGAZINE



ジャーナリストのアカウント凍結を実行後、マスク氏は「これらのアカウントの凍結解除をいつ行うべきか」というアンケートを実施しました。最初は「今すぐ」「明日」「7日後」「7日より後」という選択肢で投票が行われ、約53万5000人が投票して「今すぐ」が最多となる43%を得票しましたが、次点が「7日より後」の38.1%であったことや、最多得票が過半数を超えなかったことから、マスク氏は「選択肢が多すぎたからやり直す」と述べて「今すぐ」と「7日後」という選択肢で再投票を行いました。その結果、約369万人が投票し、58.7%が「今すぐ」に投票しています。





投票が終了した直後、マスク氏はジャーナリストのアカウント凍結を解除し始めました。





マスク氏は「民意にしたがって、今すぐに凍結の解除を実行する」と述べていますが、記事作成時点ではすべてが完了したわけではなく、ElonJetについて報道後に凍結され、説明無く解除されないままのアカウントが複数確認されています。





また、凍結解除の際に「Twitterのルールに違反したためアカウントが停止されています。投稿を許可する前に、ツイートを削除する必要があります」と通知があったケースも報告されています。凍結時に通知とともに投稿の削除が求められるのは従来も同様でしたが、今回の件は「ジャーナリストはElonJetのアカウント凍結について報道したのみで、マスク氏のプライベートを追跡しておらず、プライベートを追跡したElonJetの詳細を明らかにしたわけではない」という異議を唱えているため、議論の対象になっているとCNNのレポーターであるオリバー・ダーシー氏は指摘しています。





この一件に伴い、Twitterはポリシーを更新し、「リアルタイムな位置情報」と「移動経路をさらしているURLへのリンク」をTwitter上で共有することを禁止しています。Twitterのトラスト・セーフティーの責任者であるエラ・アーウィン氏は、「我々はジャーナリストやその他のアカウントに対して、このポリシーの例外を作りません」と報道目的の位置情報拡共有でもアカウント凍結の対象となることを示しています。また、ElonJetがTwitter以外のSNSアカウントやサイトでは稼働していますが、TwitterはSNSのライバルとなるMastodonへのリンクをTwitterのプロフィールに追加するのをブロックしています。

Twitter Safetyはジャーナリストのアカウント解除に合わせ「私たちは、Twitterのルール違反に対して永久停止が不釣り合いな処置であるポリシーをいくつか確認しました。私たちはこれらのポリシー違反で停止されたアカウントの復帰を開始し、今後30日間、毎週多くのアカウントに拡大する予定です」と述べています。



しかし一方で、アンケートの後にジャーナリストのアカウントが凍結解除される数時間前、元議員候補のラバーン・スパイサー氏が「Twitterでのアカウント復活ペースが、ますます加速しています」とコメントし、これを受けてマスク氏は2022年12月17日に「自由の金曜日」を宣言しています。ここでのアカウント復活はElonJetに関連するものではなく、右派や極右の著名人が含まれており、Twitter Safetyの「ポリシー違反で停止されたアカウントの復帰を開始し、今後30日間で多くのアカウントに拡大する予定」というものが、ElonJetに関するものなのか、マスク氏による「言論の自由」を掲げた凍結解除についてなのか、不明となっています。