XFN-ASIA通信によると、中国商務省は先週、外国企業による中国企業のM&A(合併・買収)を独占禁止法の審査対象にするという新しいガイドラインを発表したが、外資系企業の間では、この動きは中国で経済ナショナリズムが今後、台頭する兆候だとして、警戒感を強めている。

  中国商務省の発表によると、当局の事前承認を得なければならない外資による買収案件は、当該外資が中国国内に30億元(約440億円)の資産を保有しているか、中国での年商が10億5000万元(約150億円)を超えるか、または買収前の中国内の市場シェアが20%に達しているか、あるいは買収後のシェアが25%に達する場合となっている。

  この外資の独禁規制に関しては、先週、フランク・ラビン米商務長官が、「憂慮すべき傾向」であり、中国の市場開放の動きが逆行する可能性があると懸念を表明した。また、日本のJETRO(日本貿易振興会)の渡辺修理事長は昨年、中国リスクに対応するために日本企業は「チャイナ・プラス・ワン」戦略を採用し、他の有力投資先も考慮すべきと呼びかけている。

  ただ、中国ウォッチャーの多くは、新たな規制の影響が拡大を続ける中国経済のすべての業種に及ぶわけではなく、M&A熱が急速に冷めることはないとの見方だ。

  香港のコンサルタント会社、ポリティカル・アンド・エコノミック・リスク・コンサルタンシーのボブ・ブロードフット氏は、「これ(新規制)は官僚に、また、新たな許認可権を与えただけで、外資にすれば、もう一つ、輪をくぐり抜ければいいだけの話だ」と話す。同氏によると、中国政府が懸念を示しているのは、外資の進出が目覚しい流通業など一部の業種に限られており、自動車などの戦略部門に規制の網をかけようとする意図はないという。

  そうとはいえ、外国企業のある幹部は、最近、政治的配慮からか商談が破談になっている例が出ていることから、中国で経済ナショナリズムが頭をもたげていると危惧している。最近、当局の介入で、とん挫した顕著な例としては、米投資会社カーライル・グループによる中国最大の建設機械メーカー、徐工集団工程機械を総額3億7500万ドル(約440億円)の買収交渉がある。さらに、米投資銀行ゴールドマン・サックスが、中国の食肉加工最大手、雙匯集団と2億5200万ドル(約290億円)の買収交渉を進めているが、これも破談に追い込まれる可能性があるといわれる。【了】