県外掘るのも静岡県の了承必要? リニア工事でJRと県の認識に″溝″ 会議で浮き彫りに
10月31日にリニア中央新幹線の「南アルプストンネル」をめぐる専門部会が開催。静岡県側とJR東海側での県境「手前」の工事をめぐる認識に隔たりがあらわとなりました。
9回目の専門部会
試験運転が行われているリニア新幹線の車両(乗りものニュース編集部撮影)。
リニア中央新幹線の南アルプストンネル建設工事に関して、2022年10月31日(月)に静岡県は中央新幹線環境保全連絡会議地質構造・水資源専門部会の9回目会議を開催しました。
議題は「どの時点で静岡県境へ向けた工事を止めるのか」。10月13日に県の難波喬司理事は文書で「トンネル掘削が県境付近に近づけば近づくほど、山梨県側のトンネル湧水として静岡県内の水を引っ張る量が増え、結果として、大井川の水資源へ影響が生じることが懸念されます」としており、県境ギリギリまで掘削することも問題がある、との構えです。
それゆえ静岡県側としては、「県境にここまで近づくと、湧水が出てくる。だからその地点でトンネルを掘るのをやめます」という資料の提出をJR東海に期待していたようです。
いっぽうJR東海側が会議に持ち込んだ内容は「県境まで掘りたい。そのためには当然湧水も出てくる可能性があるし、その湧水をどう対処していくのか検討する」というもの。「湧水をそもそも出すな」対「湧水が出ればそれに対応する」という、スタンスの違いが浮き彫りになった形でした。もっとも湧水の対処については、東京電力の田代ダムの貯水を活用して水を戻す案などが別個検討中です。
この"認識のギャップ"は会議の各所で明らかに。図面で「高速長尺先進ボーリング」が県境を超えていることについては「このボーリング自体で静岡県の水が出ていく」と部会長である森下祐一氏(静岡大学)は指摘。オブザーバーである難波理事は「県境まで掘れば水は出るとJRは言った。でも資料では県境まで掘ると書いてある。県民の懸念をまったく無視した感情です。どこで止めますとか水を返す協議をしていきますとか、説明資料に書いていない。姿勢を疑わざるを得ない」とバッサリ。
委員の丸井敦尚氏(産総研)が「静岡県の水が山梨県側へ引き込まれるかの確認のためには、県境から静岡県側へセンサーを入れたほうがいい。プラグを打てば水は止まりますので」と提案すると、森下部会長は「その必要はありますか?水が出ないところで止めればその必要もないでしょう」とヒートアップし、丸井氏が思わず絶句する一幕も。
会議の最後で難波理事は「JR東海は資料に『県境まで掘る』と書いているだけですが、その際に協議はしますよね?」と念押しします。JR東海側は「しっかりと対応させていただきます」と返答。これはある意味で「山梨県側の工事の可否についても静岡県側の"了承"が必要となる」ことについて言質を取ろうとしたのかもしれません。