通常機と全然違う! レアな「緑のANA機」に乗った ほんわか癒やされ眠くなる…? これぞ“攻めの癒し”
ANAからデビューした緑の尾翼デザインが特徴の特別塗装機「ANAグリーンジェット」、その機内はどのようなものなのでしょうか。実際に乗ってみたところ、通常のANA機とは異なる“癒やし要素”が目白押しでした。
2022年10月から欧米路線を中心に
2022年10月、航空ファンを驚かせるような特別塗装機がANA(全日空)からデビューしました。「ANA Green Jet(ANAグリーンジェット)」と名付けられたこの機体、通常2色のブルーが入った尾翼デザインをトレードマークとするANA機のなかで、2色の緑の尾翼をまとっています。今回、この特別機に乗ってみたところ、その機内も、通常とは大きく異なる取り組みが各所に凝らされていました。
「ANAグリーンジェット」就航初便(2022年10月、乗りものニュース編集部撮影)。
「ANAグリーンジェット」は、ANAグループが持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指し立ち上げたプロジェクト「ANA Future Promise」の取り組みをアピールするもので、選ばれた機体は、ボーイング787-9国際線仕様機「JA871A」です。同機は、特徴的な緑の尾翼だけではなく、胴体にANAのコーポレートカラーである青、左側には葉をモチーフとしたライン、右側に水をモチーフとしたラインが描かれており、左右非対称のデザインが特徴です。
「ANAグリーンジェット」の塗装をまとった「JA871A」は、おもに欧米路線を担当します。取材時は羽田発ロサンゼルス行きのNH126便に投入されました。搭乗を行う左側前方のドアには、「ANA Future Promise」「SAF Flight Initiative」と描かれたデカールが貼られています。
またこの機では、CO2排出量削減に向けた取り組みの第一弾とし、“サメ肌効果”が得られるという「リブレット技術」を用いた縦35cm×横45cmのフィルムを数か所に貼り付け、その効果を検証しています。これは国内初の取り組みで、機体の空気抵抗を低減できる効果が期待されているとのことです。仮にANAの全機材にリブレットシートを貼った場合、年間約30万tのCO2排出量の削減を期待できるといいます。
そのような「ANAグリーンジェット」は、機内に入った瞬間から、乗客の目からも耳からも“自然の中にいるような癒やし感”のある情報が入ってくる特別機となっています。
「ANAグリーンジェット」の機内、通常機と大違い!
通常ANAのボーイング787では、白く明るい客室照明が採用されています。一方「ANAグリーンジェット」の客室は、緑の照明を採用。また、搭乗時のBGMは、通常のANA機で流れるバイオリンを中心としたBGM「アナザースカイ」ではなく、自然を想像できるような特別なもので、鳥のさえずりや環境音などがうまく用いられたヒーリングミュージック調の曲となっています。
「ANAグリーンジェット」の座席のヘッドレストカバーには、ヴィーガンレザー(植物由来の成分を使用した人工皮革)を使用したものを導入。この取り組みは世界の航空会社のなかでも、とくに先進的なものとのことです。ちなみに触り心地や頭を置いた感覚は、かなり革に近いものとなっていました。
ロサンゼルスに到着した「ANAグリーンジェット」(松 稔生撮影)。
この機を担当するCA(客室乗務員)は機内サービス時、「ANA Future Promise」プロジェクト仕様の特別デザインのエプロンを着用します。出発前には機内アナウンスで、この機体に関する説明も流れました。
食事などは通常のANA機とほぼ変わらない内容となっているものの、調理時の残渣に由来した堆肥を使用して育てたソフトケールを使用したミックスサラダをエコノミークラスで提供したり、ビジネスクラスのデザートカップのプラスチック容器を廃止し、リユース可能な陶器に変更したりする取り組みも。なお、この食事面での取り組みは、通常のANA機でも実施されています。
ANAはこの特別機の就航を皮切りに、機内サービスや運航オペレーションの面で、さまざまなサステナブルな取り組みを進めていくとしています。それでいて、既存のサービスを“寂しい”方向に変更することなく新たな価値観を与えようとしている点に、同社の本気度が窺えました。なお、今回搭乗した「JA871A」のほか、今後、国内線仕様機の「JA874A」も同様の塗装に塗り替えられる予定で、2機体制で国内・国際の両路線で中長期的にこの塗装で運用するとのことです。