犬と触れ合うことが人々のメンタルヘルスに好影響を与えることは以前から知られています。実際の犬またはぬいぐるみと触れ合う被験者の脳活動を測定した新たな研究では、「犬と触れ合うと社会的・感情的な処理に関与する前頭前皮質(前頭前野)が活性化する」ことが示されました。

Effects of contact with a dog on prefrontal brain activity: A controlled trial | PLOS ONE

https://doi.org/10.1371/journal.pone.0274833

How petting dogs could be good for you (not that you needed a reason) - Scimex

https://www.scimex.org/newsfeed/how-petting-dogs-could-be-good-for-you-not-that-you-needed-a-reason

Go Give Your Dog a Pat - It'll Have a Delightful Effect on Your Frontal Lobe : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/go-give-your-dog-a-pat-itll-have-a-delightful-effect-on-your-frontal-lobe

人間が動物と交流することによるメンタルヘルスの改善は以前から注目されてきましたが、動物との触れ合いによる神経生理学的な相関については、まだ十分に理解されていないとのこと。そこでスイス・バーゼル大学の心理学者であるRahel Marti氏が率いる研究チームは、被験者に「犬」または「ぬいぐるみ」とさまざまな方法で触れ合ってもらい、社会的認知処理に関わる前頭前野の活動を測定する実験を行いました。

実験には18歳以上で健康な被験者21人と、6歳のジャック・ラッセル・テリア、4歳のゴールデンドゥードル、4歳のゴールデンレトリバーが参加し、犬の比較対象として湯たんぽ入りで犬と同じ温度のライオンのぬいぐるみ「レオ」が用いられました。

被験者は「白い壁を見る」「1m離れたところから犬またはぬいぐるみを見る」「犬と添い寝またはぬいぐるみを太ももにのせる」「犬またはぬいぐるみをなでる」「白い壁を見る」というセッションを2分ずつ、1頭の犬とぬいぐるみに対して交互に行いました。研究チームはその間の前頭前野の活動を、被験者が動きやすく邪魔な音もしない機能的近赤外分光分析法(fNIRS)で計測しました。



研究チームは、被験者21人のうち2人を脱落とデータ不備のため除外し、残る19人の被験者から収集したデータを分析しました。その結果、前頭前野の活動はぬいぐるみよりも犬と相互作用した時の方が大きく、中でも「犬をなでる」というセッションで最大になることがわかりました。

また、前頭前野の活動は犬とのセッションを重ねるごとに増加していることも確認され、これはぬいぐるみでは見られない変化だったとのこと。研究チームは、犬への親しみやすさや社会的絆が前頭前野の活動に影響しているのではないかと考えているそうです。

研究チームは、今回の発見が犬やその他の動物を用いたセラピーにおいて重要な意味を持つ可能性があると主張しています。しかし、今回の研究の被験者はいずれも健康な成人だったため、次の段階では社会的または感情的な問題を抱える人々においても、犬との触れ合いが前頭前野に同じ影響を及ぼすのかを調べる必要があると研究チームは述べています。