巻き爪は色々な治療法があるみたいだけど、手術しなくても治るの?

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巻き爪の治療法は病院での手術のほか、サロンなどでもおこなえるワイヤーやプレートを使った矯正方法、自宅で使える矯正テープなどのグッズまでさまざまだ。どのようなケースで手術が必要なのか、巻き爪の手術を実施している「みなと芝クリニック」の院長、川本徹医師に伺った。

 


監修ドクタープロフィール:
川本 徹(かわもと・とおる)(みなと芝クリニック 院長)

筑波大学医学専門学群卒業、筑波大学大学院医学研究科修了。「“メスをとれる内科”たる外科医になれ」の教えの元、筑波大学附属病院の消化器外科で、内科医以上に内科のことを知っている外科医をめざす。筑波大学臨床医学系外科(消化器)講師、米国テキサス大学MDアンダーソン癌センター客員講師、東京女子医科大学消化器病センター外科非常勤講師などを歴任後の2010年、都営地下鉄三田駅の近くにみなと芝クリニック開院。2014年には、現在の地へリニューアルオープン。内科や外科から、皮膚科、整形外科、消化器科、肛門科まで、幅広い診療を行っている。
日本外科学会認定医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器病学会専門医。

多くの人が勘違いしている「巻き爪」の実態

編集部巻き爪は、痛い手術をしなくても治せるのでしょうか? 川本先生一般の方がイメージされている巻き爪全体でいえば、手術を必要とするケースは約2割ほどです。
では、どのようなケースで手術を用いるのでしょう。その話題へ入るためにも、まず「本当の巻き爪」と「陥入爪(かんにゅうそう)」の違いを説明する必要があります。編集部両者の違いを教えてください 川本先生「本当の巻き爪」とは、爪に限らず、爪床(そうしょう)という爪の生えてくる部分ごと湾曲している状態です。器具などを使って爪先を広げても、もともとの爪床が曲がっている限り、再発してしまいます。これは手術しないと治りません。編集部陥入爪はそうじゃないと? 川本先生はい。陥入爪は、合っていない靴や深爪などの外的要因によって、爪が本来とは違った方向に伸びたり曲がったりした状態のことをいいます。爪床自体が丸まっているわけではないので、必ずしも手術を必要としません。編集部陥入爪の方の割合は、どれくらいなのでしょう? 川本先生あくまで当院に来られる方の割合になりますが、陥入爪が「5」だとしたら、巻き爪は「1」といったところでしょうか。ワイヤーなどの施術を受けたのに「再発した」という場合は、おそらく巻き爪のケースです。一方の陥入爪なら、爪を元の形に戻してあげれば、痛みも引くし再発しない。もちろん陥入爪を治療しても、外的要因を改善しなかったために再発するケースは起こり得ます。とにかく、この辺がごちゃごちゃになって理解されていますよね。編集部自分で陥入爪と巻き爪を見分ける方法はありますか? 川本先生爪の左右両方が湾曲していたら巻き爪、片方だけなら陥入爪。ただし、そうである可能性が高いと言うに過ぎません。詳しくは、専門医の診察を受けてみてください。

陥入爪の対処法と、なりやすい人

編集部陥入爪の治療方法を教えてください 川本先生爪の正しいお手入れとともに、外的要因を改善していくことが治療の目的になります。例えば靴選びだとしたら、つま先の広がった圧迫されない靴がいいでしょう。また、歩き方も関係してきます。かかとからきちんと着地して、指先に余計な力をかけないことが大切です。
一般には、ワイヤーやプレートを使った爪の矯正方法もあります。しかし、陥入爪の方の爪床は正常ですから、曲がってしまった爪を取り除いてしまえばいいのです。編集部指先への過度な負荷が、陥入爪の原因なのですか? 川本先生そう言っていいと思います。とくに女性の場合はハイヒールが問題です。日本人はもともと農耕民族なので、扁平(へんぺい)足の方が多いんですよ。欧米のようなつま先の細い“カッコイイ”靴がなじまない。できれば、社内にいるときだけでも、サンダルなどに履き替えてみてはいかがでしょうか。足への悪い負荷が、結局は自分にはね返ってくるのですから。



巻き爪の治療方法について

編集部ほか、陥入爪になりやすい人っているのでしょうか? 川本先生扁平足の人ですかね。足の裏のアーチで体重を吸収しづらいため、足先への負荷がかかりやすくなります。靴のインナーソールなどを上手に活用しましょう。後は深爪のクセがある人。短い爪、つまり生えて間もない柔らかな爪ほど、外からの影響を受けやすくなります。編集部今度は巻き爪の治療方法について教えてください 川本先生昔から伝わる治療方法は、問題を起こす爪床の部分だけをなくしてしまうものです。「爪床形成術」などと呼ばれています。ただ、爪のわきの皮膚組織は巻き爪で痛んでいるので、新しい爪が生えてくるときに炎症を起こしかねないのです。治りかけの傷をひっかくようなものですから。編集部先生の所では、どのような対応をしているのでしょうか? 川本先生「フェノール法」で爪床を焼くときに、爪の伸びるスピードが遅くなるような処置をしています。組織が正常化する時間を稼ぐわけです。これにより、満足のできる結果が得られているようです。編集部ワイヤーなどを使った爪の矯正はやっていないのですか? 川本先生繰り返しになりますが、陥入爪の場合は変形した爪先を切ってしまえばいい。巻き爪は本格的な手術が必要。そう考えると、ワイヤーなどの器具を利用した治療は出番がないと思っているんです。むしろ、器具による炎症や感染症が怖いですね。

編集部巻き爪の原因も、指先への負荷でしょうか? 川本先生それが、一概にそうとも言い切れないんですよね。考えられるのは、足指の骨がパイプのように丸くなってくること。そうなると、爪の形も骨に添って丸くなります。本来、足先の骨は平べったい形をしているものなんです。巻き爪を訴える方に高齢者が多いことを考えると、どうやら、加齢や後天的な要因で骨が変形してくるのではないかと。まだ断定できませんが、そう推論できそうです。編集部最後に、読者へのメッセージがあればお願いします 川本先生「爪床形成術」を受けると爪が細くなってしまうこともあります。また、そもそも治療の必要がない陥入爪なのかもしれません。爪のことでお悩みなら、専門医の診断を受け、正しい処置を受けるようにしてください。

編集部まとめ

自分で巻き爪だと思っていても、実際は「陥入爪」で、簡単な処置により治せる場合がある。
このことは、巻き爪の手術が「痛い」「怖い」と思っている人にとって、朗報なのではないでしょうか。ただし、巻き爪か陥入爪かの判別は専門家の診断に任せ、ご自分で安易に治療法を選択しないことが大切です。診断を受けるだけなら痛くも怖くもないので、心当たりのある方は、専門医に調べてもらうといいでしょう。また、普段から気をつけるべき点もたくさんありましたね。歩くことが嫌にならないよう、できることから工夫してみてください。

巻き爪に関する症状についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

巻き爪に関する症状の原因・病気一覧・診療科

医院情報


みなと芝クリニック
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診療科目
内科、消化器科、皮膚科、外科、整形外科、大腸肛門科
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