2022年のステップ・アップ・ツアー11戦目となる「中国新聞ちゅーピーレディース」が広島県の芸南カントリークラブで22日(木)に開幕する。シーズンも後半戦に入り、ますます白熱。レギュラーツアーでは2週連続で19歳が優勝するなど、ステップの選手にも刺激を与えている。そこで同ツアーを放送するCSチャンネルのスカイAで16年からラウンド解説を行うプロゴルファーの下村樹美に今週の見どころを聞いた! 今回は遅れてきた黄金世代について。
■名門・日大出身の新鋭は猫っぽい?
昨年11月の最終プロテストに合格を果たした選手の躍進が止まらない。レギュラーツアーでは「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」で川崎春花、「住友生命Vitalityレディス 東海クラシック」で尾関彩美悠がツアー初優勝を遂げた。川崎は8月のステップ「山陰ご縁むす美レディース」で優勝し、その直後にメジャー大会を制覇した。ともに19歳。ニューカマーのプレーから目が離せない状況だ。
そして先週のステップでは櫻井心那が今季2勝目を挙げた。獲得賞金も1300万円を超えて、女王戴冠へ独走態勢。来季のレギュラーツアー前半戦の出場権が与えられる同ランキング上位2名の枠に大きく近づいた。櫻井も川崎、尾関と同期でまだ18歳。ツアーメンバーではもっとも若い選手ながら存在感を発揮している。
この3人に加えて活躍を見せている同じく19歳の佐藤心結らにも注目が集まるが、下村が今回注目選手に挙げたのが、同期生の星野杏奈だ。1999年2月生まれ。そう、あの黄金世代と同じ学年となる。
「昨年末のファイナルQTで47位に入った選手ですが、星野さんは今季前半はウェイティングも覚悟でレギュラーツアーに主軸を置きました。そこで12試合に出場することができましたが、苦戦したようです」(下村)
予選通過は3回で最高成績は「楽天スーパーレディース」の51位タイ。そして、後半戦の出場権を得られるリランキングで下位となってしまい、ここからはステップが主戦場となっていく。「前戦の山陽新聞レディースでは初日を2位タイで滑り出しました。最終日は天候の影響もあってか崩れてしまいましたが、レギュラーでやってきた経験が生きてくるのではないでしょうか」と期待を寄せる。
■アイアンショットの“入り”がうまい
下村が星野を始めて見たのは6月のこと。「アイアンショットのクラブの入りがすごくいいと思ったんです。精度が高い選手です」。身長は154センチと小柄な部類だが、全身を使って安定したスイングをしているという。星野自身も「パーオン率を上げていきたい」と話していたようで、ステップ3試合とレギュラー12試合のパーオン率では18%ほどの開きがあり、ここが今後の課題ともなりそう。
シーズン当初からステップに出続ける選択肢もあったが、星野はまずはレギュラーで腕を磨くことを選択した。「悩んだようですが、レギュラーに出たい気持ちが強かったようです。練習環境なども含めて技術を高めることができたそうです」。足りないものを知った上で、ここからはそれらをステップの実践でさらに磨いていくことになる。
「練習量を増やさないといけないと感じたようです。そのための体力強化としてランニングなども始めたと言っていました。練習をするための体力をつける。これがこれから生きてくるはずです」。ステップは残り7試合あるが、ここから賞金ランキングを上げていくための下地はできたといっていい。
プレースタイルについては、「耐えることが得意と話していました。プロテストの4日間もビッグスコアはなく、耐えての合格。マネジメントをしていくのが得意。ボギーを打たないゴルフができるぶん、バーディを獲らないといけないと自覚しているようです」。レギュラー挑戦をした前半戦をムダにしないためにも、ここから一気に上昇気流に乗っていきたい。

■コーチが語る星野は「気まぐれ」
星野は大学進学を前に、プロコーチの石井忍氏の門を叩いた。星野は日大出身で、石井は大学の先輩。石井と言えば数多くのトッププロを教える業界屈指のコーチだ。大学の関係で師事するようになったのか。石井に聞いてみると意外な答えが返ってきた。「普通にウェブサイトで予約してきました」。石井の運営するスクールに申し込みがあったという。
5年近く石井の教えを受ける星野だが、常に一緒というわけではない。「気まぐれな性格でしょうか。とても性格は明るいし、人なつっこい。猫みたい。ぜんぜん来ないと思ったらいきなり来たり(笑)」。昨年の春に行われたプロテストでは2次で敗退した星野だが、石井によると「そのときは『次は受けない』と言って就職もしたんです。それが今の所属先で、他のプロのサポートをしていたら『受けていい』ということになって、秋も受けたら合格したんです」と、紆余曲折あってのプロ入りだったという逸話もある。
「彼女はゴルフ力が高いんです。調子云々に左右されず、いざフィールドに出たときのうまさがあります。合格したプロテストのときも、有力選手が落ちていますが、彼女はその中で合格しました。やる気をギンギンに出すタイプではないんです(笑)。でも回るとうまい。プロ適性は高いと思いますし、はまればいきそうな感じはあります」とは石井の分析だ。
同学年はすでにツアーの中核として活躍しているが、下村のいうマネジメントのうまさ、そして石井がいう「はまればいきそう」の2つの要素がかみ合ったとき、ステップの台風の目となりそうな気配がプンプンする。
解説・下村樹美(しもむら・じゅみ)
1988年5月13日生まれ、愛知県出身。2011年にプロテストに合格。ケガなどもあり一線からは身を引いたが、16年からはスカイAでラウンド解説をしている。プロ目線での解説が好評。今年もステップ・アップ・ツアーから選手のプレーの模様や声を届ける。
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