画面が曲がるノートPCが相次いで登場! スマホとは真逆の進化の方向とは?

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画面を曲げられるスマートフォンの最新モデル「Galaxy Z Fold4」「Galaxy Z Flip4」が日本でも発売される。

一方、海外では、「画面を折り曲げられる」ノートPCが話題になっている。
レノボとASUSが画面を折り曲げられるノートPCを相次いで発表したのだ。

レノボ 「ThinkPad X1 Fold(2022年モデル)」
ASUS 「Zenbook 17 Fold OLED」

この2モデルは、どちらも開けば大型ディスプレイのタブレットPCとして使えるが、本体を折り曲げてキーボードを乗せることで小型のノートPCスタイルにもなるのだ。


レノボ「ThinkPad X1 Fold(2022年モデル)」


画面が曲げられるノートPCは、2020年1月にレノボが「ThinkPad X1 Fold」を発表。
その後日本でも発売された。
開くと13.3インチ、2048×1536ドットの大画面となり、閉じれば半分のサイズでバッグにもすっぽりと入る。また本体を半開きにして使うことも可能で、半開きの片側のディスプレイ上に付属のキーボードを乗せれば約10インチサイズの小型ノートPCとして使うこともできた。


2020年に発売された初代「ThinkPad X1 FOLD」


初代ThinkPad X1 FOLDは、大画面を手軽に持ち運ぶことができる製品だった。
しかしLGが1キログラム以下のノートPC「gram」シリーズを展開しており、今や重量は増したが17インチで約1.4キログラムのモデルもラインナップしている。すでにノートPCの軽量化は進んでおり、14インチや15インチクラスの大きい画面のノートPCを毎日持ち運んでいる人もいる。

一方初代のThink pad X1 FOLDは、たためば小さくなるモデルだ。
ただしキーボードを入れると約1.1キログラムと軽量ではなくなるため、あえて折りたたみ型ノートPCを購入する必要性を高められなかった。

ところが今回の新製品 ThinkPad X1 FOLD(2022年モデル)は、ディスプレイサイズが16.3インチと一気に大きくなった。
一般的なノートPCよりも大きい画面を持ち運びできるようになったのだ。
これだけ大きな画面サイズであれば縦に2つのウィンドウを並べて表示しても楽に作業ができるため、ビジネスシーンでの実用性も非常に高くなった。

また半開きにたたみ、付属のキーボードを乗せると12インチの小型ノートPCとなるスタイルも実用的だ。
初代モデルはたたむと10インチの画面サイズであったため、ノートPCとしてはビジネス利用するには小さすぎた。しかし新型のThinkPad X1 FOLDならキーボードを乗せた状態でも十分に実用性を確保でき、ビジネス用途でも使い勝手を損なわない。


ThinkPad X1 FOLD(2022年モデル)にキーボードを搭載、12インチノートPCとして使える


本体を立てるためのスタンドも付属するが、重量は本体のみが1.3キログラム、スタンドとキーボードを加えると1.92キログラムとなる。重量は増したものの使い勝手はむしろ高くなっており、折りたたみノートPCのあるべき姿がようやく出てきたとも感じられる。

なおスライラスペンも利用できるので手書き入力も可能だ。スタイラスペンは本体の強力なマグネットでしっかりと固定できる。
また5G通信対応モデルも販売予定で、単体でどこからでもデータ通信が可能だ。

このThinkPad X1 FOLD(2022年モデル)は折り曲げられるディスプレイを搭載するという、話題性を狙っただけの製品ではない。実用的な製品であると感じられるのは、ASUSからも類似の製品が出てきたことからわかる。

ASUSは2022年1月に折り曲げディスプレイを搭載したノートPC、Zenbook 17 Fold OLEDを発表し、この9月にようやく実機を発表した。
Zenbook 17 Fold OLEDのディスプレイサイズはさらに大きい17.3インチだ。
半開きにしてキーボードを乗せると12.5インチとなる。
ThikPad X1 Fold(2022年モデル)より一回り大きく、ノートPCとしての実用性はこちらの方が高そうだ。


ASUS Zenbook 17 Fold OLED


折りたたみスマートフォンは閉じたときも片手で持てるようにと、本体サイズはスリムで小さくする傾向にある。

一方折りたたみ型のノートPCは今回出てきた2製品を見ると、
「大きい画面をいつでも持ち運べる」
ことを目的としている。

そのため本体サイズ、特に重量を軽減することよりも、開いたときの画面サイズを優先して設計している。薄型軽量ノートPCに比べると厚みも重量もあるが、移動先で大きな画面を開いて作業できる快適さは既存のモバイルノートPCでは味わえない。

この約2年間でリモートワークやリモート学習が当たり前となり、どんな場所でもノートPCさえあれば仕事や勉強ができる環境になった。
ノートPCは移動する際には小さく軽いほうがよいが、いざ作業するときは画面サイズが大きい方がいい。

つまり折りたたみノートPCはこれからの時代の流れに乗った、だれもが選択肢の一つとして考える製品となっていくだろう。

ただし折りたたみノートPCの普及も価格が大きな障害になりそうだ。
ThikPad X1 Fold(2022年モデル)の価格は2499ドル(約36万円)から。
Zenbook 17 Fold OLEDの価格は3499ドル(約50万円)から。

いまや10万円台でも高速で大画面なノートPCが購入でき、またブラウザや簡単なオフィス作業ができればいいのならChromebookが5万円以下で買える。

折りたたみPCの価格を考えれば、どんな場所でも大画面を必要とするクリエーターなど、利用者は限られる。
今回の2つの新製品は、まだまだ一般的な消費者が手にするという製品にはならないだろう。

とはいえ折りたたみスマートフォンも新規参入メーカーの登場で年々価格は下がりつつある。折りたたみノートPCもいずれ複数のメーカーから様々なサイズの製品が出てくれば、より買いやすい値段の製品も増えるはずだ。

数年後には「画面をたためるノートPC」が各社から当たり前のように発売されているかもしれない。




執筆 山根康宏