100点満点のサンデーバックナインだった(撮影:佐々木啓)

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最強女子プロゴルファー決定戦の「日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯」は、昨年11月にプロテストに合格し、今年の3月に高校を卒業したばかりの19歳・川崎春花が最終日に「64」をマーク。大会史上最年少での記録的勝利となった。最終日の4打差逆転勝利を、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が振り返る。
川崎春花のスイングはワンピースで安定感抜群【連続写真】
■鮮烈優勝を成し遂げたバックナインでの強さ
今大会は、残暑厳しいなかで行われた。さらにはアップダウンも激しく、砲台グリーンが多かった。「イメージとしては、ひたすら登り続けた感じでした」と、吉田優利のキャディも務めた辻村氏が振り返る。
打ち上げのホールで、ピンの半分も見えないようなロケーションが多かったため、距離感をつかむのも難しいとは多くの選手の声。そのなかで4日間を1イーグル・16バーディ・2ボギーのトータル16アンダーにまとめた川崎。特に圧巻だったのは、4日間を通じて一度もバックナインでボギーを叩いていないことだ。
「例えば17番のパー4は、打ち下ろして左ドッグレッグするホールですが、落としどころが難しいんです」。かなりの打ち下ろしで、左を狙えばショートカットはできるが、ラフにつかまることもあれば、意外にも左OBに打ち込む選手も多かった。といって、右に逃げれば傾斜で右ラフまで転がってしまう。そんな局面で川崎が見せたショットは完ぺきだった。
「ティショットでどこに落とせばいいかのイメージがしっかりできていたと思います」。最終日は左のラフとフェアウェイのギリギリにティショットを放ち、狭いフェアウェイをヒット。そこからピン左1.5メートルにつけてバーディ。混戦を抜け出して、勝利をグッと引き寄せた。「ピンも手前でしたが、しっかりスピンを入れることもできていました。そういう面も含めて、特にバックナインの攻め方が川崎選手に合っていたのかもしれません。イメージが出ていたのでしょう」(辻村氏)
ここをバーディとし、最終ホールでも8メートルの下りのパットをど真ん中から沈めて快挙を成し遂げた。昨年の最終プロテストの会場にもなっていた今回のコース。そこで緊張感のあるラウンドを続けていたことも、イメージが出やすかった一因かもしれない。
■意外と“重い”グリーンでパッティングのスピードはピカイチ
上がり2ホールを含め、最終日のバックナインは6バーディ。12番からの4連続バーディも見事だった。
その12番パー5では3打目を1メートル以内に寄せてバーディ。13番は2.5メートル、14番は1.5メートル、そして15番では5メートルを沈めてみせた。これについて辻村氏が気づいた点がある。「カップに入っていくスピードが他の選手とは違いました。雨などの天気によるコンディションもあったと思いますが、グリーンは9フィートくらいの重さでした。“感じ”を出すと手前で切れるか、わずかに届かない。かといって強く打つとカップを抜けてしまう。意外にも重いグリーンにしっかりと対応していました」。
グリーンが速いイメージのメジャー大会だが、スピードはあまり出ていなかった。それにしても、ブレないストロークは圧巻。「優勝をどこまで意識していたかわかりませんが、バックナインでもスムースにヘッドが動いていました。ラインとスピードを合わせるのが難しいグリーンでしたが、それができていました」と舌を巻く。
最終日のパット数は「24」で、4日間通しても全体6番目の平均パット数。多くの選手がライン読みとタッチを合わせられずに苦しんだグリーン上のプレーは「100点です」と辻村氏。満点のラウンドが勝利を呼び込んだ。
■最後まで崩れなかったスイングとマネジメント
「無欲の勝利というのはあったのかもしれませんが、それにしてもあれだけ淡々とプレーできるのはすばらしいです。スイング面でも、しっかりと振れていますし、エネルギーが伝わっています。ワンピースに振れているのが強みです」(辻村氏)。
優勝争いの中でもニコニコとホールをこなしながら、ひとたびプレーに入ると、一気に振り抜くスタイル。スイングでは「体の回転と腕のスピードが合っているから、どっちかが先にいって大きく曲がるということがないんです。それが緊張する場面でもできていました」と辻村氏。小柄な川崎だが、しっかりと飛距離を出すこともできていた。
「たとえラフに行っても、行ってはいけないラフではなかった。順目のラフならそこまでケガをしないんです」。崩れないパッティング、スイングの安定感、そしてマネジメント。すべてがかみ合った100点満点のサンデーバックナインだった。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、松森彩夏、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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