振付師として第一線で活躍する、元NMB48日下このみ

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NMB48の3期生として活躍し、2019年に卒業したあとは振付師として活動の幅を広げている日下このみ。NMB48在籍時からグループ楽曲はもちろん、他のアイドルユニットの振付を任されていた日下だが、表舞台のアイドルから裏方の振付師に。転身のきっかけから、今後のビジョンなど話を聞いた。

【写真】NMB48卒業後、振付師として数々のアイドルを担当する日下このみが今、思うこと

■NMB48を卒業後はダンスで生きていこうと決めていました

――NMB48に加入したときから、将来的に振付師になりたいという思いを持っていたんでしょうか。

【日下このみ】当時はダンスが好き、という気持ちだけでしたね。オーディションも、もともと緊張しぃだったからオーディション慣れするために受けたというか。アイドルならステージで踊れるやん!という気持ちが大きかったように思います。活動をするなかで、自分だったらこの曲、こんな風に振付したいなとだんだんと思うようになりました。

でも、最初は自分よりダンスのうまい子がたくさんいて、自分は何が出来るんだろうってすごく悩んだんですよ。いろいろ考えた結果、ダンスも表現力を磨けば、もっと見てもらえるんじゃないかと、それを追求したくてめちゃくちゃ勉強しました。

――卒業を決めたときは、もうダンスで生きていこうと?

【日下このみ】そうですね。ダンスの仕事で食べていく、というのは私のなかで絶対でした。NMB48のメンバーという状況を一度手放して、その経験を武器に新しい人生に挑戦したいと思いました。現役のときからグループの楽曲の振付をしていたので、活動の後半は振付をやっているメンバー、というような感じになっていて。そういう目で見ていた人たちに「今後の私を見てたらいいよ、絶対びっくりするから!」みたいな感覚もありましたね。卒業後引きこもっていた期間もあったんですけど、なぜか自分は絶対うまくいく、みたいな自信があったんです。絶対大丈夫!みたいな感じでした。

――そんな日下さんに人生の転機が訪れたのは、2021年。芸能事務所・ゼロイチファミリアさんとの出会いだったとお聞きしました。アイドルグループ「#2i2(ニーニ)」の振付を担当することになったんですよね。

【日下このみ】知人からお話をいただいたときは、まだ大阪にいたんですけど、とりあえず東京に行こうと決めていたタイミングだったんです。仕事もないのに(笑)。上京して、バイトとかしたらいいかなって。そんなときにご紹介をいただいたので、最初のチャンスだから絶対掴みたいと思いました。

現役時代にもLove Cocchi(ラストアイドル)というNMB48ではないアイドルグループの振付を担当したことがあったんですけど、そのときとはまた違う緊張感。絶対に結果を出さないといけない状況だったので、メモに絶対伝えることを箇条書きにしたりとか、1回のレッスンで100出せるように自分をコントロールして。もう出し切りましたね。

――その後は、ゼロイチファミリアさんの3組目となるアイドルグループ#よーよーよー(#YOYOYO)のパフォーマンス指導にも携わるように。

【日下このみ】現役でやってきたからこそ、振付だけじゃなくて表情とか細かいところまで指摘しちゃうんですけど、それを認めてくださったみたいで、次に出来るグループの指導もお願いしたいと言ってくださって。#よーよーよー(#YOYOYO)は、今年の1月にお披露目ライブを行ったんですけど、すごくいいクオリティでお披露目が出来たと喜んでくださいました。

もちろん、それは私の力だけでなくてメンバーみんなの努力があってこそなんですけど、みんな吸収力がすごく高くて。私もすごく報われた気持ちになりました。今度、10月に行われる#ババババンビの中野サンプラザ公演の演出にも携わることになっています。振付だけじゃなくて、演出もやりたいとずっと思っていたので、めちゃくちゃ嬉しいです!

■STU48の振付は上品さと奥行きを意識して作っていきました

――活躍の場が広がるなかでは、今年4月に発売されたSTU48のシングル『花は誰のもの?』のカップリング曲の振付も担当。48グループの振付は卒業後初ですよね。

【日下このみ】いつか48グループの曲の振付をする、というのが自分のなかで大きな目標だったんです。本当に大きな目標だったから、こんなにすぐに達成出来るなんて驚きもありましたけど、そこまで自分が進めている気がして、すごく嬉しかったです。

振付をした曲『ポニーテールをほどいた君を見た』は、昭和レトロな感じだったんですけど、STU48のメンバーが踊ると考えたときに激しいものよりはちょっと一呼吸置いたイメージの振付の方がいいのかなと。でも、実際に踊るとめっちゃハードになってしまったんですけど(笑)。パッと見はハードに見えない振付で上品さを入れつつ、奥行きのある感じをイメージして作りました。

――STU48のメンバーとは、どんな風にコミュニケーションを取っていきましたか。

【日下このみ】すごくタイトな中でスピーディーに進めていかなきゃいけなかったんですけど、レッスンが終わったあとに私の振付がすごく好きですって声をかけてくれて。当時は、淡々と自分がやらなきゃいけないことをやっていたような感覚だったけど、あとあとこんなに嬉しい反応をもらえるんだと思って、めっちゃテンションが上がりました。NMB48とSTU48でグループは違うんですけど、どこかアットホームというか。48ってこういう感じだよねっていう雰囲気も感じましたね。ホーム感がありました。

――今年は8月にTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)でステージデビューした「高嶺のなでしこ」も振付を担当。これもお披露目まで指導されたんですよね。

【日下このみ】そうですね。10人メンバーがいて、3人は元ラストアイドルで経験者、7人はオーディションの合格者なので、どうしても実力の差が出てしまっていたんですけど、その経験の有無で分けたくはなかったので、新しい1つのグループとして私が伝えられることを精一杯伝えました。それぞれのレベルを冷静に見ながら、ベストに出来る状態のものを作るというのが一番難しかったです。振付師としては、そのバランスに難しさを感じることが多いです。

■アイドル経験を活かした振付は自分の強みになっています

――アイドルから振付師への転身、というのはかなり稀有な経歴だと思いますが、そのなかで自分の強みはどこだと思っていらっしゃいますか。

【日下このみ】強みだなと思うのは、元アイドルとしてステージでの見せ方が分かっていること。ただ踊るだけじゃなくて、どういう風に目線を残したら印象的になるのか。どうやったら自分を見てもらえるのか。そういう部分はアイドルとしての経験から分かっているので、それは武器になっているなと思います。

例えば、フォーメーションで移動するときに、ここで客席の方見られるよね、ここでウィンクできるよねって、と伝えることが出来る。それは、ちょっと大きなところかなと感じています。

――有名な振付師の方だと、振付を見ただけで誰の振付か分かるような特徴があることも多いですが、日下さんの振付にもそういったところがあるのでしょうか。

【日下このみ】自分では分からなかったんですけど、立ち位置表を見るだけで私の振付だと分かるってメンバーに言われますね。自分のなかで意識しているのは、曲にあわせて振付にもストーリー性を入れるようにしていることと、一人ひとりの個性を目立たせるようにしていること。

自分がアイドルのときに悲しい思いをしたからこそ、後ろにいる子も引き立ててあげたい。もちろん、序列はありますけど歌割が短い分、ここではちょっと前に出すフォーメーションにしようとか。普通の振付だとやっぱり表現の世界を重視するので、顔が隠れちゃったりすることが多くなっちゃうんですけど、なるべく均等に見せてあげたいなと。メンバーの気持ちに寄り添える部分も自分の特徴だと思います。

――逆に師匠がいない分、弱みになっている部分はありますか。

【日下このみ】やっぱり技術面。7年半、アイドルのダンスをやってきたので、どうしても正面ばかり見てしまうんですよね。ダンサーさんに比べると平面的な踊りになっちゃうというか。今は本当にいろいろなグループの振付を任せていただいているので、さらに良いものを作るためにもっと勉強が必要だなと思っています。それを学ぶためにも、今年はLAに短期留学する予定です。

■同期だった太田夢莉とはお互いに褒め合っています

――NMB48を卒業後、まさか振付師としてこんなに活躍するとは同期のメンバーもびっくりしてるのではないでしょうか。

【日下このみ】そうですね。(太田)夢莉(元NMB48)とはよく話すんですけど、お互いに頑張ってるよね、すごいよねって褒め合ってます(笑)。夢莉は私にとってすごく刺激をもらえる貴重な存在。この間「現役のときからダンスを追求していたけど、ずっと同じ目標に向かって進んでいって、それを実現させているのがすごい」って言ってくれたんですよ。情熱が変わらないって褒めてくれたのが嬉しかったです。

――日下さんがアイドルのセカンドキャリアとして、振付師という道を切り開いた、といったようなところもありますね。

【日下このみ】アイドル以外のことも出来るかもしれない、という希望になれたらカッコいいですよね。私の場合はダンスが好きなことだったので、好きなことを追求していった結果、形になったという恵まれた部分はあるんですけど、好きなことは迷わずに自分がやりたいと思ったら、自信を持ってやり続けることが大事なのかなと思います。私が出来たから、みんなもきっと出来るよ、大丈夫って伝えたいです。

今も変わらず応援してくださっている方の言葉は、自分にとって大きなエネルギーだし、アイドルとは違う形になるとは思うけど、良い姿を皆さんに見せられるように。もっともっと実力を付けていきたいです!

撮影・取材=野木原晃一 文=yoshimi ヘアメイク=小田愛永