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水樹奈々が、ついに自身の音楽活動のホームというべき“ライブ”の現場に本格的に帰ってきた。実に約3年ぶりとなるライブツアー“NANA MIZUKI LIVE HOME 2022”が、この夏に開催されたのだ。兵庫を皮切りに、ワンマン初上陸となる茨城(しかもこれで47都道府県完全制覇!)、埼玉、宮城、愛知を巡った計10公演。そのうち、8月7日に行われたさいたまスーパーアリーナ公演のレポートを、ここにお届けする。

レアな楽曲も披露!一大エンタメショウが繰り広げられた前半戦



7月にリリースされたばかりのニューアルバム『DELIGHTED REVIVER』を引っ提げて行われた今回のツアー。新作には、水樹自身の「ホームグラウンドであるエンターテインメントの現場を復興させていきたい」という想いが込められていたわけだが、今回の公演ではその意志を改めて強く感じ取ることができた。水樹のステージはいつでも超一流のエンターテインメントであり、今回もまた、その例に漏れることはなかったからだ。

OP映像では、バックパッカーに扮した水樹が登場。砂漠のような荒野にどこまでも伸び続けるハイウェイ。アメリカのロードムービーに登場しそうなその道を歩く彼女の目指す先は、当然ファンが待っている会場だ。映像がフェードアウトし、水樹のバックバンドであるCherry Boysの前奏に導かれ、いよいよ水樹がステージに登壇。カウガール風の服装に身を包んだ彼女は「今夜は最高の一日にしようぜー!」と檄を飛ばし、ファンに愛され続けている名曲「New Sensation」で力強くライブの幕を開ける。ステージセットも、西部劇に登場する街並みや荒野を彷彿とさせるもので、曲の終盤、ファイヤーこと藤陵雅裕のサックスと水樹のパワフルなフェイクが絡み合う場面は、アメリカンロックな雰囲気が一層強まっていた。



そこからこれまたライブの鉄板曲「POWER GATE」を投入。水樹はいつものようにステージの端から端までダッシュしながら、“一人じゃないから”と歌いかけ、会場のみんなと力を合わせて新しい時代への扉、エンターテイメントの新時代を切り拓いていく。Cherry Boysとバックダンサーのteam YO-DAの面々が横一列に並んでパフォーマンスする姿も壮観のひと言。さらに最新アルバム『DELIGHTED REVIVER』のリードトラック「Go Live!」に繋げ、カラフルな照明演出も相まって一大エンターテイメントショウといった趣きに。

出だしからパワフルな3曲を立て続けたが、これはまだまだ序の口に過ぎない。水樹もMCで「夏なので容赦しないセットリストになっていますけど、皆さん、最後までついてきてくれますか?」と呼びかけ、上松範康(Elements Garden)のペンによるパッション溢れるメロディも印象的な「ROMANCERS’ NEO」、そしてスマートフォンゲーム「鋼の錬金術師 MOBILE」主題歌となる神秘的な雰囲気を纏ったロックチューン「スパイラル」と、対照的なアップナンバーを連続で畳みかけてオーディエンスを揺さぶる。

ここで水樹のライブでは恒例のCherry Boysコーナーを挿み(今回はカントリー風のオリジナルソングが披露され、イタルビッチことギターの渡辺 格はバンジョーも弾いていた)、ブルーとピンクを基調とした華麗なワンピース衣装に着替えた水樹がステージ上段に登場。ニューアルバム収録の新曲「HOLY TALE」を、美しい映像を背にしながら、包容力たっぷりの歌声で届ける。さらにライブで歌われるのは珍しい「LOOKING ON THE MOON」を、花道を練り歩きながら披露。歌詞の“明日はきっと晴れるよ”というフレーズが、やけに胸に響く。



そのまま花道で恒例の「回って」タイムを設け、新衣装をバッチリとアピールした水樹は、続いて本ツアーのためのお楽しみ企画「水樹奈々 初めての○○」について説明する。元々は歌手デビュー20周年に合わせて開催予定だったツアー“NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020”に向けて用意していたというこの企画。水樹にとっての「初めての○○」をテーマにしたレアな楽曲を各公演ごとに披露するというもので、前日の8月6日のさいたまスーパーアリーナ公演では、「初めてのカバーソング」というお題で森川美穂の名曲「おんなになあれ」を歌唱した(5thシングル「POWER GATE」のカップリングに収録)。



そしてこの日のお題は「初めての作詞曲」。今や自分の作品で多くの楽曲の作詞を行っている水樹だが、初めて作詞したのは一体どの曲なのか?最初期の本人作詞曲といえば「恋してる…」(2003年)が思い浮かぶが、実はキングレコードからデビューする以前の時代、彼女がまだ10代の頃に自ら作詞したオリジナル曲があったのだという。それがこの日に披露された「つばさをひろげて」。WEBラジオ「ななチャンネル」のために制作された楽曲だ(作詞:水樹奈々 作曲・編曲:廣樹輝一)。これからの未来への希望を感じさせる歌詞はフレッシュそのもので、Cherry Boysの演奏による爽やかなアレンジ、水樹の晴れやかな歌声が清涼剤のように心を解きほぐしてくれる。「初めての○○」企画ならではのマニアックな選曲に、コアなファンも唸らされたのではないだろうか。

懐かしい楽曲に続いては最新の水樹奈々を、ということで、続いてはTVアニメ『トモダチゲーム』のOPテーマでもあるジャジーなナンバー「ダブルシャッフル」。2番から曲調がガラリと変化する構成を含め、水樹の新たな一面が感じられる楽曲で、特に後半のラテン要素が強まるアレンジはライブだとさらに映えるものになっていた。そこからゴージャスなジャズファンク「MARIA&JOKER」に繋げるセトリの流れも絶妙。艶味の効いた歌声ばかりでなく、レーザーライトが飛び交う盛大な照明も見もので、アメリカンなステージセットやトランプをモチーフにした映像演出も相まって、ラスベガスでショウを見ているような感覚に陥る。

アメ車でステージに!?ダンス曲からバラードまで多彩に魅せた後半戦



そこからteam YO-DAの各メンバー紹介が、Cherry Boysによる刑事ドラマの劇伴っぽいジャジーな演奏をバックに行われると、スクリーンに映像が映し出され、仮面をつけた怪盗風の水樹が登場。「あなたのハートをいただきます」と予告状で宣言した彼女は、ガラスケースで護られた宝石を見事に奪ってみせる。そんなインパクトある映像に続いて、今度は本物の水樹が白いアメ車風の乗り物に乗ってステージに!新作『DELIGHTED REVIVER』からファンキーな「Reboot!」を、team YO-DAとともにダンスしながらパフォーマンスする。



チェック柄の新しい衣装に着替え、ヘッドセットマイクを付けた水樹は、ここからダンス曲パートに突入する。妖しくも艶めかしい雰囲気が充満した「GUILTY」に続いて、世界的にブームとなっているラテンポップ〜レゲトンの要素を取り入れた「DNA -Dance‘n’Amuse-」では、ベリーダンスのようなエキゾチック感溢れるステージングで魅了。炎が上がる演出も含め、その熱気と情熱が会場を支配していく。



その後のMCで水樹はアメ車風の乗り物について改めて説明。何でも今回のステージコンセプトに合わせて大道具に手作りしてもらったとのことで、キャデラックを模していることから「Nanallac(ナナラック)」と命名したそうだ。これまでにも飛行機からロボットまで、ライブであらゆる乗り物に乗ってきた水樹の歴史に、また新たな1ページが加わった。

続いて「このライブで唯一のバラード曲」と前置きして歌われたのが、アルバム『DELIGHTED REVIVER』に収録の「Stand by you」。いつもは聴き手の背中を押すような応援ソングを多く歌っている水樹が、この2年半の間で感じたことを踏まえ、優しく寄り添うような温度感を目指して制作したという楽曲だ。歌い出しの“親愛なる友よ”という言葉から距離を感じさせない温かな想いが伝わってくるし、水樹の生命力に溢れた歌声は、会場の優しい空気感と合わさって、心により深く浸透していく。それはライブの現場以外では得難い感覚であり、これこそが生の歌声の力だと実感できる。今の彼女だからこそ歌える絶品の1曲だったように思う。

アメリカンホームコメディ風の映像に水樹と杉田智和がアフレコしたショートムービーを挿み(水樹のパートナーとなる声優は会場ごとに異なり、埼玉公演では埼玉出身の杉田が務めた)、ライブはいよいよ後半戦に突入。新たな衣装に着替えた水樹は、「FIRE SCREAM」「WHAT YOU WANT」とヘビーなロックチューンを続けざまに披露し、会場の熱気を一気に高める。坂本竜太(ベース)、北島健二(ギター)、佐々木“コジロー”貴之(ギター)、門脇大輔(バイオリン)らとステージを縦横無尽に駆け巡りながら歌うその姿からは無限のエネルギーが感じられる。



そして水樹のエンターテイメント復興にかける想いがひしひしと伝わってきたのが、アルバム『DELIGHTED REVIVER』の冒頭を飾っていた「MY ENTERTAINMENT」。声優であり歌手である彼女にとって大切な“声”の力を信じ、その声が“明日-あした-を生きる理由になるなら”と歌う彼女。その迫真に満ちたパフォーマンスは、不死鳥をモチーフにしたと思しき映像と重なって、強烈なインパクトを残した。

続く和装メタル「アパッショナート」ではバンドメンバーとともに花道まで前進し、ときにマイクスタンドを振り回しながら熱唱。そして「ETERNAL BLAZE」のイントロのピアノフレーズが奏でられた瞬間、客席のペンライトは一斉にオレンジ色に変わる。水樹のライブで欠かすことなく歌われる「ETERNAL BLAZE」は、絶えることなく燃え続ける情熱の炎。ファンは声を出せずとも、ペンライトやジャンプといったアクションで、彼女と一緒に最高のライブを作り上げていく。この炎は、今やエンターテイメントの未来を照らす灯りでもあるのだ。



怒涛の如く駆け抜けてきたライブもついに最後の1曲に。この2年半で、ステージに立てることの奇跡を一層強く感じるようになったという水樹は、「いつかみんなで絶唱できる日がくるといいな、そんな願いを込めて(次の曲を)届けたいと思います。これからもみんなで最高の夢を追いかけていきましょう!」と呼びかけ、ニューアルバムから自身が作詞した楽曲「全力DREAMER」を歌う。夢に向かって真っ直ぐな眼差しで全力ダッシュするような、水樹らしさ全開のこの曲は、ライブを締めるに相応しい楽曲といえるだろう。どこまでもポジティブで活力漲るその姿に、我々は元気や勇気をもらっているのだから。水樹は晴れやかな歌声をさいたまスーパーアリーナの会場いっぱいに響かせて、ステージを終えた。

「HOME」の象徴である“青い海”が広がったアンコール



そしてアンコール、水樹はトロッコに乗ってアリーナに登場。近年、彼女の楽曲を多く手がけるヨシダタクミ(saji)との出会いの曲でもある「レイジーシンドローム」、さらにこの日のアメリカンなライブコンセプトにもマッチした「RODEO COWGIRL」を、ファンと最も近い場所で歌い上げる。一人ひとりと目を合わせながら楽しそうに歌う姿に、こちらも思わず嬉しくなってしまう。



続くMCにて、恒例の「シャッス!!」コールでひとしきり盛り上がったあとは、水樹がライブへの想いを込めて作詞・作曲したという『DELIGHTED REVIVER』収録曲「HOME」を歌唱。今年1月にさいたまスーパーアリーナで行った841日ぶりの有観客ライブ“NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020 → 2022”で感じた気持ちを元に作り上げたというこの楽曲。歌詞にある“地球(そら)より熱く青い海”というフレーズは、会場一面が水樹のイメージカラーであるブルーのペンライトで染まった景色のことを描いている。この日も客席には“青い海”の美しい光景が広がり、水樹の動きに合わせて揺れるペンライトは、本当に波打っているかのよう。さらに“NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020 → 2022”のライブ映像がスクリーンに映し出され、水樹から見た“青い海”の景色も実感することができた。



「最高に幸せでーす!」と喜びを爆発させる水樹。最後は「みんなの心を1つにして、行くぜ!」と奮い立たせて、TVアニメ『DOG DAYS”』のOPテーマ「No Limit」を歌唱。水樹自身の作詞によるこの楽曲で描かれているのは、無限の可能性。自分自身を信じ続けることで、逆境を打破して希望ある未来を創ることができるというメッセージは、今まさに心に響くものとなっている。彼女が一貫して歌い続けてきたテーマは、この時代にこそ必要とされているものなのかもしれない。それを強く感じさせてくれたのが、この日の「No Limit」であり、やはり彼女にとって「ライブ」と「HOME」は等しいものであることが、改めて感じられた瞬間だった。



TEXT BY北野 創(リスアニ!)

PHOTOGRAPHY BY kamiiisaka

<セットリスト>

01. New Sensation

02. POWER GATE

03. Go Live!

04. ROMANCERS’ NEO

05. スパイラル

06. HOLY TALE

07. LOOKING ON THE MOON

08. つばさをひろげて

09. ダブルシャッフル

10. MARIA&JOKER

11. Reboot!

12. GUILTY

13. DNA -Dance‘n’Amuse-

14. Stand by you

15. FIRE SCREAM

16. WHAT YOU WANT

17. MY ENTERTAINMENT

18. アパッショナート

19. ETERNAL BLAZE

20. 全力DREAMER

―ENCORE―

21. レイジーシンドローム

22. RODEO COWGIRL

23. HOME

24. No Limit

●リリース情報

『DELIGHTED REVIVER』

発売中

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:KICS-94071

価格:¥4,400 (税込)

初回限定盤特典:特製BOX+スペシャルフォトブック+シトラスライムデジパック仕様

【通常盤(CD)】

品番:KICS-4071

価格:定価¥3,080 (税込)

<CD>

01. MY ENTERTAINMENT

作詞・作曲:ヨシダタクミ(saji) 編曲:藤永龍太郎(Elements Garden)

02. Red Breeze (新世代リッチアニメRPG「COUNTER: SIDE」(カウンターサイド)主題歌)

作詞:藤林聖子 作曲:上松範康(Elements Garden) 編曲:藤永龍太郎(Elements Garden)

03. スパイラル(スマートフォンゲーム『鋼の錬金術師 MOBILE』主題歌)

作詞:ヨシダタクミ(saji) 作曲・編曲:山下洋介

04. Reboot!

作詞:藤林聖子 作曲:岡澤知輝 編曲:小山 寿

05. HOLY TALE (TOKYO FM「水樹奈々のMの世界」EDテーマ)

作詞:岩里祐穂 作曲:h-wonder 編曲:h-wonder 弦編曲:山下洋介

06. ダブルシャッフル (TVアニメ「トモダチゲーム」OPテーマ)

作詞:しほり 作曲:サカノウエヨースケ 編曲:渡辺 徹×日比野裕史

07. Get up! Shout! (TVアニメ「SHAMAN KING」第2弾OPテーマ)

作詞:水樹奈々 作曲:山本玲史 編曲:加藤裕介

08. ストラトスフィア

作詞:松井五郎 作曲:BOUNCEBACK 編曲:ats-

09. Link or Chains (TVアニメ「Levius レビウス」OPテーマ)

作詞:しほり 作曲・編曲:南田健吾

10. DNA -Dance‘n’Amuse-

作詞:しほり 作曲:平間 光 編曲:藤間 仁(Elements Garden)

11. FIRE SCREAM (スマートフォンゲーム「戦姫絶唱シンフォギア XD UNLIMITED」新主題歌)

作詞:水樹奈々 作曲:上松範康(Elements Garden) 編曲:菊田大介(Elements Garden)

12. Stand by you

作詞:岩里祐穂 作曲:Toshikazu.K 編曲:藤間 仁(Elements Garden)

13. 全力DREAMER (NHK松山「ひめDON!」テーマソング)

作詞:水樹奈々 作曲・編曲:南田健吾

14. HOME

作詞・作曲:水樹奈々 編曲:藤間 仁(Elements Garden)

15. Go Live!

作詞:ヨシダタクミ(saji) 作曲・編曲:加藤裕介

<Blu-ray>

NANA REVIVER FESTA 2022 特別編

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・残光のガイア

・Don’t be long

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・NEXT ARCADIA

・Crystal Letter

・恋想花火

「DELIGHTED REVIVER」 MAKING MOVIE

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