昨年5月に「心あたたまる幸福感に包まれる世界」をコンセプトに大規模なリニューアルをした「西武園ゆうえんち」。昭和の世界観を見事に再現した商店街やアトラクションやグルメはSNSでも“映える”と話題で、どれも気になるものばかり。今回はそんな「西武園ゆうえんち」の人気の理由を徹底リポートします!

「西武園ゆうえんち」はなぜ“昭和”の世界観になった?

今回はESSE編集部のZ世代(1990年代半ばから2010年代初頭に生まれた世代)を代表して編集Y永が「西武園ゆうえんち」を徹底取材。広報担当者に聞いた、リニューアルの裏話やより楽しむ方法などご紹介します。

<「西武園ゆうえんち」ってどんなところ?>

埼玉県の所沢市にある「西武園ゆうえんち」は、多くの人に愛され続けて今年で72年目。昨年のリニューアルで新設された「夕日の丘商店街」や「ゴジラ・ザ・ライド」は、昭和の雰囲気を味わえると大好評で、大人から子どもまで楽しめる、SNS映え必至な人気の遊園地です!

●「西武園ゆうえんち」の気になることを聞いてみた!

リニューアルによってチケット売上が13倍(※)なったという西武園ゆうえんち。その理由と魅力を深堀りすべく、広報担当 西澤一輝さんに詳しく答えてもらいました。

2019年〜2021年5/19〜7/20のチケット売上(開業から2か月〜埼玉県まん延防止再発令まで)

 

●なぜ大規模なリニューアルを?

リニューアル前の「西武園ゆうえんち」といえば、地元民に愛された、どこか懐かしい遊園地というイメージが。なぜ今回大規模リニューアルに至ったのでしょうか?

「現在、西武グループは所沢地域を盛り上げることに力を入れていて、、『暮らす』『働く』『学ぶ』『遊ぶ』がすべて揃った街づくりを目指しています。しかし、全盛期は年間194万人の来場者数を記録していた『西武園ゆうえんち』も、近年は全盛期の1/4ほどに減少…。そこで、この課題をクリアすべく、大規模なリニューアルをすることになりました」

●コンセプトは「昭和レトロ」ではない?

リニューアルのコンセプトはなぜ「昭和」になったのでしょうか。その質問をぶつけると意外な答えが。

「じつは『昭和レトロ』がコンセプトだと思われがちなんですけど、正しくは『心あたたまる幸福感に包まれる世界』がコンセプトになっています。というのも、お客さまが遊園地・レジャーに求めているものは『幸福感』と『スリル』と言われているのですが、西武園ゆうえんちは前者の『幸福感』をお届けしております。

ただ、『幸福感』というものはとても概念的なものですので、お客さまが受け取りやすく、これまでの西武園ゆうえんちが持っていた『古い』『懐かしい』といったイメージを逆手に取って活かせるパッケージに適していたのが『昭和』だったんです」

あくまで「昭和」はパッケージであって、本質は「幸福感」だと語る西澤さん。そして、その「幸福感」を追求すべく、社内でとことん話し合ったのだそう。

「『昭和』はあくまでパッケージなので、このパッケージ自体が変わることもあります。今年の夏のイベントでは『大火祭り』と呼ばれるノッて、踊って、はしゃげるナイトフェスを開催していまして、和テイストではあるものの昭和ではございません。こちらのイベントでは『フェスならではの一体感』『家族や仲間と過ごす夏』といった面で『幸福感』を感じていただけるようなイベントとしておりますので、『幸福感』は重要なテーマですね」

●リニューアルのカギは…「古さ」!?

「今回のリニューアルの予算は100億円。金額だけ聞くと高額に思われるかもしれませんが、これはレジャー業界の中ではかなり少ない金額なんです。そんな予算内で最大限にできることを会社全体で模索しました」

そこで、まずは西武園ゆうえんちの『古い』という既存のイメージを逆手に取ることに。

「元々は3つあった入園口を、あえて夕日の丘商店街に繋がる1つにまとめました。これにより、お客さまにはまず『夕日の丘商店街』の昭和の世界観に浸っていただけるので、“古い”園内のアトラクションを『価値のあるアンティークなアトラクション』として捉えてもらうことが目的なんです」

●緻密な計算の上のリニューアル。でも、予想外の反響も…

そうした策が功を奏し、来場者数はリニューアル直後からぐっと増えました。

「以前は家族連れのお客さまが全体の約8割を占めていましたが、現在は半分ほどがZ世代のお客さまに。とくに平成以降に生まれたお客さまは、アニメや映画で描かれるような人情味あふれる昭和のイメージが強いので、その世界観にどっぷりハマれるんです」

こうして練りに練ったリニューアルは大成功。しかし、西澤さんたちにも予想外のうれしい反響もあったとか。

「まさに今日のY永さんのように、昭和風のファッションで来場してくださるお客さまの多さには驚きました。日本人は控えめな国民性だと思っていたので、自分から入り込んで遊びにきていただけたことはうれしかったです」

●昭和の街並み再現ではなく昭和の“熱気”を再現

「じつは、夕日の丘商店街は1960年代の昭和の街並みを完全再現しているわけではなく、お客さま、とくにメインターゲットであるZ世代方々の頭の中にある1960年代の昭和の街並みを再現しています。さらに昭和の街並み再現が今回のリニューアルの肝ではございません。そこに息づく人々の熱気や活気を再現することこそが西武園ゆうえんちが持つ唯一無二の体験に繋がっています」

“再現”といっても、その方法はさまざま。しかし、しっかりとお客さんのニーズを捉えているからこそ、来園者数が伸び続けているわけです。では、その世界観をより楽しむためには、どうすればいいのでしょうか…?

「住人たちは気さくなので、ご近所さんのように接していただけるとより楽しめると思います。仲良くなると、ニックネームを付けてくれたり、覚えてくれたりするんですよ。住人に会うために、週に何度も遊びに来てくださるお客さまもいます。この人と人とのやり取りこそが、『心あたたまる幸福感に包まれる世界』に繋がっているんです。ショーも夕日の丘商店街の住人になった気持ちで参加していただけるとうれしいですね」