勝みなみのスイングに迷いなし ノーボギー優勝の要因を辻村明志氏が語った(撮影:鈴木祥)

写真拡大

勝みなみが4日間大会ではツアー史上初となるボギーなしの優勝を遂げた「楽天スーパーレディース」。初日は稲見萌寧がトーナメントコースレコードとなる8アンダーで回り、3日目には勝も負けじと8アンダーをマークするなど、し烈なバーディ合戦の末に勝がトータル22アンダーで勝利した。この勝利を上田桃子らのコーチを務める辻村明志氏はどう見たのか?
■ボギーを打たないゴルフは難しい
4日間を通して勝が貫いたのは「スコアをひとつでも伸ばしたい。攻め続ける」という姿勢だった。攻めなければバーディは獲れない。だが、攻めた結果のボギーというのもゴルフには付きものだ。
「ボギーを打たないゴルフは難しいものです。最終日の勝さんは、大胆さに欠けるところもあったかもしれませんが、終始迷いのないゴルフを展開できていたと思います」と、辻村氏は話す。
初日7アンダー・2位タイ、2日目に6アンダーでトータル13アンダー・単独首位。そして、3日目にはトータル21アンダーまでスコアを伸ばした。2位の稲見に9打差をつけて最終日を単独首位でスタート。だが、3日目までの勢いは影を潜め、勝が最終日に奪ったバーディはひとつだけだった。
勝は「ノーボギー優勝は、ボギーを一度でも叩いたら終わり。なんとしてもパーを獲るという思いが強く出て、ショットに影響しました」と話したが、一緒に回った2位の稲見は「飛ぶし、曲がらない。セカンドでウェッジを持つことが多かったけど、そのウェッジショットがまた曲がらない。あんなゴルフをされたら、誰も勝てません」と褒め称えていた。
■オープンドローで右へのミスを消している
そんな勝の飛んで曲がらないスイングを「背中を大きく使って、ワンピースで振り抜いています。以前は出力が大きすぎて、力感にバラツキが出ていた。そのためタテ距離が合わなくなることもありましたが、今は迷いなく振り抜いています」と、辻村氏は見る。
勝はオープンスタンスでインサイドアウトに振り抜き、ドローを打っている。その「ドローめで出るいい球が安定していて、右へのミスを消している。『ミスが出ても左』とひとつに絞ることができれば、ゴルフをやりやすくなる。それが今の勝さんの強みになっています」とも話す。
そして、「下から動いて捻り戻しているので、安定してインサイドから振り下ろせています。下から徐々にため込んだトルクがほどけてゆくように、上と下のバランスがすごくいいのも特長です。力感と体の動きが連動しています」と、辻村氏は続けた。
■パッティングも一級品「フェース面の管理を徹底している」
パッティングのうまさも、勝はツアートップレベルだという。今季のパーオンホール平均パット数は、1.7494で2位。1位は西村優菜で1.7452、その差はわずかだ。
「西村さんにしろ、勝さんにしろ、入る日はとてつもなく入るんです。そういう人に限って、同じ練習をずっと続けています。勝さんは、2本のスティックをヘッドの幅に置いて、1.5メートル先のペットボトルにボールを当てるドリルを、毎日続けています。カップに入れることよりも、フェース面の管理を徹底しているのです。その結果、入るパットになる。今大会では、グリーン上でのテンポも良かったように見えました。ストロークの始動の前に、ヘッドで地面を3回くらい叩く動作が見られました。テークバックに入るまでのリズムを整えているのでしょう」
もっとも、勝のパッティングは高校時代にアマチュア優勝したときから、「一級品だった」と辻村は評価していた。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、松森彩夏、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

<ゴルフ情報ALBA.Net>