「政府の動きは鈍い」自民若手グループが全業種対象の粗利補償&消費税ゼロを訴える理由 - BLOGOS編集部
※この記事は2020年04月16日にBLOGOSで公開されたものです
新型コロナウイルスの感染拡大がもたらす経済へのダメージが甚大なものになりつつある。低所得層を中心に多くの家計は逼迫し、企業も大幅な収入減を余儀なくされるなど、先行きの見えない不況が近づいている。
安倍政権は過去最大規模となる108兆円の経済対策を発表したものの、内容が不十分だと言う指摘も多い。自民党内からも批判の声が上がっており、若手議員らによる議員連盟「日本の未来を考える勉強会」は政府に対し、事業者への粗利補償と消費税減税を訴えている。勉強会の代表を務める安藤裕衆院議員に、これらの対策のねらいについて聞いた。
全業種を対象にした現金での粗利補償が必要
―改めて、安藤議員が考える今取るべき経済対策について教えてください。
感染が拡大する新型コロナウイルスによって日本全国のあらゆる業種に影響が出ています。そのため私たちは政府は今すぐに、①粗利補償、②消費税ゼロという二つの対策を取るべきだと考えています。
我々が「粗利補償」と呼んでいるのは、業種を問わず全ての事業者に対して、コロナショックが起きなかった時の利益を全額補償する施策のことです。粗利というのは、売上から仕入原価を引いた残りの金額を指しますが、企業はここから給料や家賃、あるいはリース代金などの必要経費を払っています。つまり、この粗利を補償しないと事業が継続できない。政府は融資をすると言っていますが、企業の存続を第一に考えるならば粗利を補償する必要があるのです。
―条件が良くても貸付では不十分だと。
現在のような状態がいつまで続くかわからない中では、借金がどれだけ積み上がるか、また返済できるかも不透明な状況です。先の見通しが立たなければ、堅実な経営者はこの機会に事業をやめてしまおうと廃業を選択しうる。そうなると雇用が失われ、働く人たちの間で培われてきた技術も失われます。このことは日本経済の根底を支える企業の底力が失われることを意味し、もしコロナショック後に経済を反転攻勢に持っていこうとしても、それを担う人がいなくなってしまう。
日本のGDPは約560兆円ですが、廃業や倒産が続けば事業に携わる人の数が減り、物やサービスを生産する能力も300兆円程度にまで減ってしまうかもしれない。現在の日本は経済大国ですが、この立場が脅かされることにもなりかねない。こうしたことから、まずは企業継続のための日本全国、全業種を対象にした現金での粗利補償が必要だと考えます。
党内に根強い「財源がないから補償はできない」の声
―粗利を補償することで休業補償の役割も果たします。
病気の蔓延を防ぐという意味でも、事業者にはしっかりと休業してもらわないといけない。「休業してください、でも自己責任ですよ」という形で要請しても、仕事しないと食っていけない人は従うことができない。象徴的な事例はK-1開催ですが、大臣から興行中止の要請があっても、開催しないと経済的な損害が大きいから強行した。補償がなければ、自粛しなければならないとわかっていても強行するような事例が今後も起きてしまいます。
現在、東京都内でも繁華街のほとんどの店は閉店していますが、補償がなければ、お金が必要で少しでも日銭が欲しい店は営業します。せっかく多くの人の協力のもと、コロナウイルスの抑え込みに取り組んでも、さらに感染が拡大することもおきかねません。防疫対策としても補償は重要なんです。
―こうした提言に対しては、よく「財源は確保できるのか」という声が上がります。
財源は国債を発行すれば対応できるんです。多くの方が勘違いしていますが、国債は国の借金ではなく、政府によって新しい通貨を生み出す行為です。日本は通貨発行権を持っているので、無限に通貨を生み出すことができます。
今後、経済活動が制限されてGDPも相当減ることが予想され、ある試算によると4~6月期では25%のマイナスになるといいます。この影響が1年くらい続くとして、20%GDPが毀損したら100兆円規模のマイナスになります。そのため、この規模の国債を発行して初めて事業者の粗利を補償することが可能になる。こうしたことをやる必要があるのです。
―このような考えについて、党内で賛成意見はあるのでしょうか?
私たちは党内でも幾度となくこうした考えを伝えていますが、賛成する声はまだ少ないですね。やはり多くの人は「財源がないからできない」という考え方に縛られています。「財源はあります」「国債を発行すれば作り出すことができるので、補償できます」そう言っても、理解が得られません。
低所得層に効果の大きい消費税ゼロ
―消費税については、どういった対策が必要だと考えますか?
消費税は現在10%ですが、これはゼロにすべきでしょう。消費税法を一旦凍結し、日本経済の活力を取り戻すべきだと考えます。コロナ以前から私たち「日本の未来を考える勉強会」は消費税の5%への減税を主張しています。
昨年10月の消費増税後、10~12月の日本の成長率は年率でマイナス7.1%になり、増税は失敗だったと言える。ところが今年に入ってからはコロナウイルス一色になり、この消費増税の失敗はニュースとしてかき消されてしまい、減税についての十分な議論も行われていません。
―消費税減税はコロナ対策としてどう機能するとお考えですか?
今回のコロナウイルスで一番被害を受けている生活者は所得の低い方ですから、そうした方に十分な補償をするためには現金給付プラス消費税ゼロというのは大きな効果があると考えています。例えば年収300万円の人はほぼ全額を消費に使うと考えられますが、消費税がゼロになれば30万円の現金をお返しするのと同じ効果がある。一方で年収1000万円の人は全てのお金を使わないので、100万円を返すのと同じ効果があるかと言えばそうはならない。つまり、所得の高い人ほど自ずと減税効果が小さくなります。
我々はもともと、消費税は増税する必要はなく、いっそゼロにしても良いと考えていました。日本経済の約6割を占めるメインエンジンは個人消費ですが、消費税はこの個人消費にブレーキをかける役割をしています。国民がどんどんお金を使っている時には消費税をかけても良いのですが、日本はずっとデフレが続き景気も悪かった。こんな時にメインエンジンにブレーキをかけて景気が良くなるわけがありませんよね。だから消費税は減税すべきだという考え方なんです。
―消費税の減税については、自民党内の反応はいかがですか?
消費税減税については党内でも賛成する人が多くいます。100人以上は賛成しているんじゃないでしょうか。
政府を動かすために声を上げてほしい
―コロナウイルスの影響で、今まさに損失が出ている人はどうすれば良いでしょうか。
個人については、政府が手を差し伸べないと自分の努力ではどうしようもないと思いますので、1日も早い現金給付が行われるべきです。また、一回だけでは十分でないので、毎月お金が安定的に行き渡りますというメッセージを政府が発信する必要があるでしょう。あるいは失業して困っている方は公務員で採用するといった方法も有効です。自己責任でなんとかできる範囲を超えているので、様々な面で公が取り組むべきことが多くあります。
事業を行なっている人に対しては、今は融資という制度しかないので、「なんとかそれで凌いでください」と言うことしかできない。事業を継続してさえいてくれれば、膨らみすぎた借入金については、その後に債務免除等も含めて事業継続に差し障りがないような仕組みを考えられるのではないかと思います。ただ、申し訳ないのですが、今は借入という仕組みしかないので、なんとか凌いでもらえればと。
―安藤議員の提言が実現する見通しはどの程度あるのでしょうか。
現在のところは、まだハッキリとした見通しは立っていないと言わざるを得ません。しかし、こうした対策を取らなければ日本中で倒産、廃業の嵐になることは目に見えており、政府はいつかやらなければならなくなると確信しています。コロナによって日本中が焼け野原、どこに行ってもシャッター街のようになってしまう前に、政府は動かざるをえない状況に追い込まれるでしょう。
記事を読んだ方には、政府は粗利補償ができるわけですから「絶対にやるべきだ」と声を上げてほしい。経営している方は我慢強い方が多く、お金が必要だけど欲しいと言わない方も非常に多い。国も財政が厳しいので、お金を出してほしいと言っても無理だろうとあきらめている人も多いでしょう。今、私が訴えたいのは「頑張らないでください」ということ。無理をして頑張りすぎず、国にもっと要求してほしい。そうしなければ、皆が助かりません。SNSで発信するでも、国会議員にメッセージを送るでもいい。国には、国民全員を経済的被害から救済する力があるのですから、国にもっと強い声で、お金を出すべきだと要求してほしいです。
―最後に、今私たちが取るべき行動について教えてください。
まずはコロナウイルスをこれ以上広げないよう引き続き協力してほしいと思います。経済的な損失を受けた人も多いと思いますが、この点に関しては自分で我慢しすぎず、政府に強い声を届けてもらいたい。残念ながら今はまだ動きが鈍いですが、皆さんが声を上げることによって政府はやっと動きます。皆さん一人一人の力が必要なので、遠慮せずに声を上げてほしいです。
私は今後も政府への働きかけを続け、与党の中でも賛同が大きくなるよう努力します。場合によっては野党とも協力し、政府を動かしたいと考えています。
