※この記事は2019年05月26日にBLOGOSで公開されたものです

5月24日の東京都の定例記者会見で、小池百合子知事が暑さ対策の一環として、頭に傘を顎紐でつけるタイプの「かぶる傘」を製作していると発表した(*1)。

都の職員であろう男性が、傘をかぶって出てきた姿はなかなか衝撃的で、ネットでは「これは酷い」と盛り上がっている。

かぶる傘は市販されている製品で、庭の手入れや釣りなどのレジャー、カメラを構えての撮影など、雨や強い日差しを遮りながら両手が使えるということで、常用している人もいるらしいが、見慣れてないとやはり滑稽には見えてしまう。

僕も、最初こそネットに煽られて面白がっていたのだが、よくよく考えてみると、意外と悪くないんじゃないかなと思うようになった。

かぶる傘の紹介の中で小池都知事は、ミストを出すなどのテクノロジーを利用した対策もあるが、街路樹で木陰を作ったりするようなアナログなことが、暑さ対策として効果的であると説明している。

確かに、CO2の削減や、涼む場所を増やすような大規模な対策も必要だが、個人の対策も必要であることはいうまでもない。

ここ数年、男性の間でも日傘をさそうという試みはあるものの、やはり「なんとなく恥ずかしい」という意見が強く、なかなか広まっていない。

しかし、そうした「なんとはなしの恥ずかしさ」を変えうるシーンが存在する。それが「東京オリンピック・パラリンピック」という一大イベントである。

僕はときおり舞浜駅で降りることがある。僕の目的地はそこではないが、やはり舞浜駅といえば、東京ディズニーリゾートである。土日祝日はもちろん、平日でも多くの人達がディズニーの世界を満喫している。

そして、ディズニーをたっぷり満喫した彼らの夢は、舞浜駅でも続いている。子供はもちろん、それなりの年の大人までもが、頭にミッキーの耳やミニーのリボンが付いたカチューシャなど、いかにも「ディズニーで楽しんできました」という格好をしているのである。

普段の彼らは鉄道駅でそのような格好をしないだろう。しかし、テーマパークの浮かれた気分のままであれば、そのような格好もしてしまうものである。

日差しの照りつける暑いオリンピック・パラリンピックの会場で、人々の熱気と太陽の熱気と興奮に浮かされた感覚のまま、かぶる傘を利用する人がたくさん現れることは、十分に考えられるのである。

かぶる傘という、一見恥ずかしいグッズに慣れれば、普通の日傘など、恥ずかしくもなんともないだろう。恥ずかしさが薄れれば、男性でも日傘を使う人が急増なんてこともありえるかもしれない。

もう1つ。

オリンピック・パラリンピックを見に来るのは日本人だけではない。当然、世界中の外国人観光客が日本を訪れる。そうした中で問題にされていたのが、ここ数年の日本の夏の異常な暑さである。

高温多湿に慣れている国の人ならいいが、湿気に慣れていない外国の人たちに、日本の真夏をいかに過ごしてもらうかは懸念の1つである。

そうした人たちに、オリンピック・パラリンピックのグッズとして、かぶる傘を販売することは、外国人観光客の熱中症対策にもなるだろう。

もちろん「普通の日傘でもいいのでは?」という疑問が湧くが、普通の日傘の場合は振り回すのに十分な長さがあり、防犯上の問題が発生してしまうので、イベントで使うものなら持ち手や棒の部分がない方がいい。

外国人向けなら藁を編んだ「笠」の方が、日本的で喜ばれるかなとも思うが、量産はできなさそうだし、値段も高くなりそうだ。

あと、帰国する際にも長さのある傘は持ち帰りに面倒だが、かぶる傘であればコンパクトに畳んで持ち帰ることができる。

このようなことを考えた結果、オリンピック・パラリンピックに向けたグッズとして「かぶる傘」は、意外と悪くないなと、僕は思い返したのである。

最後に。

今回のニュースをいろいろ考えている間に、自分も日傘を買おうと思いついて、注文をした。

普段使いをするつもりなので、かぶる傘ではなく、普通のジャンプ傘タイプの日傘だ。

今年の夏は平年並みという3ヶ月予報(*2)が出ているが、それでも暑くないということはないだろう。

5月の暑さで熱中症が発生したというニュースがあった。皆様も暑さ対策はしっかりと。

*1:暑さ対策の「かぶる傘」に衝撃走る 小池都知事が発表「もう思い切ってここまでいったらいかがでしょうか」(ハフポスト)https://www.huffingtonpost.jp/entry/kaburu-kasa_jp_5ce89de0e4b00e03656e543e
*2:今年の夏 暑さは? 台風は? 3か月予報(日本気象協会)https://tenki.jp/forecaster/t_yoshida/2019/05/24/4710.html