「有名人の薬物事案は吊るし上げ」田口容疑者逮捕を受け高樹沙耶氏がマスコミ報道に問題提起 - BLOGOS編集部

写真拡大

※この記事は2019年05月24日にBLOGOSで公開されたものです

「KAT-TUN」の元メンバー田口淳之介容疑者と女優の小嶺麗奈容疑者が22日、厚労省麻薬取締部に大麻取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕された。報道を受け同日、大麻合法化を訴えて続けている元女優の高樹沙耶さんがTwitterに「日本では大麻取締法とメディアの報道が人権を侵害している」などと投稿。波紋を呼んでいる。

高樹さんは2016年、医療大麻の国内解禁を訴え、参院選に出馬するも落選。翌17年4月には沖縄・石垣島の自宅に大麻を隠し持っていたとして、大麻取締法違反(所持)で懲役1年、執行猶予3年の判決を受けた。

BLOGOS編集部は高樹さんにインタビューを敢行。「大麻をめぐる日本の報道や法律」について話を聞いた。

マスコミ報道が「日本を悪くしている」

-KAT-TUNの元メンバー、田口容疑者が逮捕されたという一報を受けて、感じたことを教えてください。

率直に「またか。この国はいつまでこんなことを続ける気だろう…」「いつまで、大麻草で罪人を作り続ける気だろう」とうんざりした感情を抱きました。

私はずっと世界の大麻の状況などを調べ続けています。昨年はカナダも娯楽用大麻を合法化しましたが、日本には正しい情報が伝わってない。それが問題だと思います。そうした海外の情報を知らない人が、ルールを守らないという一点でバッシングする流れがあって、特に大麻とか薬物はひと際、厳しい吊るし上げが起きるように思います。

世界では「使わせない」ではなく、ダメージを減らす「ハームリダクション」という考え方も広がりつつあり、犯罪化するよりも薬物に対する正しい情報を与えるのがスタンダードになっています。こんなことを思わずツイートしたら、当事者でも関係者でもない人からのリプライでちょっとした炎上になって、ビックリしているところです。

一番多かったのは「ルールを犯した人間には説得力がない」「そんなに吸いたいなら海外へ行け」という声ですね。今回もツイートがスポーツ紙で記事になって、コメントが多く寄せられたようですが、裏を返せばそれだけ多くの人が興味を持つトピックなのかなと思います。

-メディアの報道が人権を侵害している、というのはどういうことでしょうか。

テレビ、特にワイドショーが世の中のムードを作り、多くの人がそれを中心に語ります。建設的な議論をリードしないといけないマスメディアが今回のような報道をしていることに驚いたし、そういう報道こそが日本を悪くしているのではと。

有名人が大麻を使用した、ということでこれほど吊るし上げられるなら、大麻について今は言うべきじゃない、言っても何の得にもならないと萎縮してしまいますよね。

入手経路は厳しく取り調べを受ける

-伝えられている報道内容からわかる範囲のことがあれば教えてください。

産経新聞のネットニュースに田口さんは自身の芸能事務所の代表を務めながら、熊本地震の支援活動もしていて、毎日、早朝からハードスケジュールの仕事をこなしていたと書かれていました。ジャニーズ事務所のような大きな後ろ盾を捨てて、個人でやって行くというとても大きな重圧の中、これまで頑張って来たんだと思います。

記事では「自宅に無造作に数グラムが置かれていた」と報じられていました。詳しい事情は本人でも捜査担当者でもないのでわかりませんが、忙しい仕事の中、自宅でリラックスしたり、気分転換のために嗜んだりする程度の量だったんだと思います。

-大麻取締法違反の疑いで逮捕された際は、どのような取り調べを受けるのでしょうか。

その時の係官や個人個人の案件でも違うので詳しくはお答えしかねます。特に私の場合は選挙にまで出て「医療大麻解禁‼」なんて訴えていたので、今回のケースとは事情は違うと思います。

それを踏まえて、私が取り調べを受けていた時に関して言えるなら、捜査員、係官、どの方にも共通して感じたのは丁寧過ぎるほど丁寧だったということです。マニュアル通りに捜査を進めていく感じです。何を言っても結局は「法律は法律ですから」という対応を皆がしていたように感じました。

-「法律は法律」という対応ですか。

それぞれの仕事の立場もあるのでしょう。世界の大麻草の事情や医療大麻のことを薄々は知りつつも「法律は法律ですから」と個人の考えを見せずに役に徹しているように感じたこともあります。

-報じられているように、入手経路や使用の実態については詳しく質問を受けましたか。

「どこ(誰から)で入手した」「いつから使っている(吸ってる)」「どんな風に使っている(使い方や使用頻度)」といったことなどを何度も聞かれている感じですね。一度、捕まってしまえば何もできませんし、取り調べの時間はいくらでもありますから。

-今回のケースでは同棲していた相手も同じ容疑で逮捕されています。一般的には、パートナー同士でどちらかが吸っていて、後に両者ともに使うようになるケースもあるのでしょうか。

これはケースバイケースで男性側だけが使っている場合もあるでしょうし、2人で使う場合もあると思います。使用する量も頻度も男性の方が多いというケースはよく聞きます。これはお酒のケースにもよく似ているような感じがしていて、毎晩、競うように量を飲むのも男性の方が多いようなイメージでしょうか。

ただ今回の件はニュースを見る限り、女性のものだったという供述も見られます。解禁された国のニュースや記事を見ていると、大麻草の効能に気がついた女性からの情報発信も多いですよね。ハリウッド女優のウーピー・ゴールドバーグさんがマリファナ製品の販売会社を設立したり、歌手のレディー・ガガさんが「大麻が人生を一変させた」と語ったりしていたこともありました。

推測になりますが、今回のケースも大麻草の良さを世界のニュースや自身の体験から知った女性が先に利用していたのかもしれませんね。

発売・上映禁止の対応は「行きすぎ」

-少し前の話ですが、ピエール瀧被告の件についてはどう思いましたか。

大麻以外の薬物について私は興味がないし、ニュースで見るなどの一般的な知識以上は持っていないけど、大麻草はこれまでこの国に自生していた植物の一つで、神道やこの国の精神性に関わるほどの重要な農業資源でした。世界中で医療利用され数多くの病気に対して効果があるという研究もあり、決して麻薬として他の物質とひと括りにしてはいけないと思います。

その上で、コカイン使用の逮捕で何億円もの賠償額というニュースを見た時に「こんなことをして、誰が得をするのだろう?」「メディアを含めた、映像の制作者や作品に関わる人たちはこのやり方(制裁)が正しくて、これからもこの方法で運営していくのが正しいと思っているのか?」と強く感じました。

-そこまでの対応は必要ない、と。

そこまでする必要はないというか、そうした対応には首を傾げたくなります。彼の関わる作品を上映禁止や販売差し止めにして、損害を一方的に個人に押し付けるやり方を、今後も続けていけばエンターテイメント業界も疲弊するだけで、決して多くの人の利益にはならないと思います。他の国のケースなども参考にしながら真剣に対応のあり方を考える時に来ていると思います。

金銭的にもすごく大きいですよね。麻薬を吸った本人を戒めるだけでなく、周りまで大きな損害を受けることになります。もっと自分たちが豊かになる、幸せになることを考えるべきなのではと思います。ひと昔前は芸能人が薬物で捕まっても「やんちゃな人物」として大目に見られる空気もありましたよね。「パンツの中に大麻が…」とかね。

-大麻をめぐる法律のあり方について、改めてお考えを教えてください。

何度も言っているように、医療大麻を病で必要とされる方に1日でも早く有効利用できるように法のあり方や対応を改めなければいけないと強く思っています。

大麻草だけでも2018年は3,000人以上が検挙され、厚生労働省は多くの予算を割いていると報じたニュースを目にしたことがあります。それぞれの逮捕者の勾留の経費、その後、彼らが同じように納税ができなくなる社会的な損失を考えるとそれ以上のお金が、ただ大麻草を手にした人間を罰して、社会から制裁されるためにだけ使われています。果たしてそれが本当に必要なのか、費用対効果で真剣に考えなければいけない時に来ていると思います。そのやり方を続けて誰が得をして、どんな社会に国になってきたか。

それを止めた国や地域がどうなっているかも今では多くのサンプルや科学、学術的な証拠も沢山あるので、『ダメ、ゼッタイ‼』と思考停止せず、科学的な視点で検討してほしいと思います。また、こうした報道を見て、何か変だなと思った人は、気になった情報を自分で翻訳ツールとかを使って調べてみてもいいのかもしれません。表立って大麻のことを発言しにくい人もいると思いますので、そういう時は私に便乗してでも。

-高樹さん自身が今でも大麻に関することで、疑いの目を向けられることについてはどう思いますか。

私は法的には順を追って正しい措置を経ています。執行猶予中には法律を守っていて、もちろん大麻に触れることなく生きています。それでも、大麻で逮捕されたことがあるだけで人をリンチのような形で攻撃するのが正当化されるように思っている人がいて、日本社会が歪んでいるなとは思っています。