※この記事は2011年12月28日にBLOGOSで公開されたものです

熊谷史人氏(左)と小島克典氏。写真一覧
ニコニコ生放送とBLOGOSがタッグを組んでお送りしている、「ニコ生×BLOGOS」第4回は横浜ベイスターズの買収を決め、球界に新規参入を果たしたDeNA騒動から見えてくる「野球界の裏事情」について考えました。

ゲストは、ライブドアフェニックスが2004年に日本野球機構(以下、NPB)に参入の申請をしつつも加入を却下された時に、ライブドアフェニックスのGMを務めていた小島克典氏と、ライブドアベースボール元取締役の熊谷史人氏。

7年前の楽天とライブドアの球界新規参入騒動時、現場ではどのようなやりとりが行われたいたのか?なぜ楽天はプロ野球に加入できて、ライブドアはダメだったのか?

今回のDeNA騒動にも通じる「球団新規参入騒動」の裏側が明らかになりました!

【出演】
司会:大谷広太(BLOGOS編集長)
アナウンサー:小口絵理子
コメンテイター:須田慎一郎(経済ジャーナリスト)
ゲスト:小島克典(元ライブドアフェニックスGM)
    熊谷史人(株式会社ライブドア元取締役)

球団の黒字経営のモデルはある映画

小口:2004年に大阪近鉄バッファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併をきっかけ に浮上したプロ野球再編問題。この時、新規参入に名乗りを挙げた企業が楽天とライブドアだったんですよね。オーナー会議の結果、ライブドアの新規参入は認められず楽天の新規参入が決定。今の東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生したというわけなんですよね。その時にライブドアフェニックスのGMだったのが小島さん。ぜひ、小島さんと熊谷さんに伺いたいんですが、そんなに野球チームって欲しいものですか?

小島:欲しいです。

熊谷:欲しいですよ。

小口:今日番組スタッフと話していたんですけど。野球チームを持つには何十億というお金が必要ですよね。結果的に資金はどれぐらい用意していたんですか?

熊谷:当時300億円ぐらいありましたので、そのお金でできると思いました。

小口:300億あったら、野球のチームを持たなくても他のことにお金を使ってもいいような気もするんですが。

熊谷:ただ、広告の宣伝媒体としてはすごい大きい価値がありますよね。

須田:いや、ただね。あの当時のプロ野球というのは衰退の一途を辿ってましたよね。地上波でもあまり放送されなくなったし。今は色んなスポーツ、色んなコンテンツがでてきて、プロ野球の存在感というのは地盤沈下していた。もちろん、知名度はあるけれども、ライブドアという名前は野球チームを買収するかしないか以前に、かなり広まっていたんじゃないですか?

熊谷:そうじゃないと思いますよ。プロ野球の新規参入に名乗りを挙げて、初めて「ライブドア」という会社を知った方がほとんどだと思いますよ。

小口:それだけも意味はあった?

熊谷:あります。

須田:じゃあ、手を挙げただけでも、よかったんじゃないですか?

熊谷:ただ、我々は真剣に経営すれば、必ず黒字にできるという自信もあったんですよ。だから、やろうと思ったんですよ。

小口:具体的には、こうすれば何かいくというのは?

熊谷:球団経営の中で一番大きいコストが人件費、次に大きいのが球場の使用料なんですよね。そこをいくら削減できるかという問題と。売り上げの部分でいうと、当時放映権が値下がりの一途だったんですけど、プラスアルファができるんじゃないかと。それはネットでの配信であったり、球場内での飲食、物販。そこの売り上げを球団が抱えることができれば、必ず黒字経営できると思いました。

須田:実はね、プロ野球チームの運営や経営は非常にシンプルなんですよ。収入の部分と支出の部分を見ていくと、複雑なものはなくて。収入というのは、チケット販売などによる入場収入、テレビなどから入ってくる放映権料、あと細かく見ていくと、グッズ販売など色々ありますが、収入というのはそれぐらいなんですね。

その一方で支出というのは、人経費などに消えていく。そういったことを考えると、どこを圧縮して、どこを増やしていくのかということになっていく、非常にシンプルなシステムなんですよね。

大谷:人件費でいうと、選手でも年俸の高い選手を抱えても、収入がしっかりあれば、調整が可能ということですよね。

熊谷:年俸の高い選手を揃えればチームが勝てるというわけでもないですよね。巨人だって勝ててない。横浜だって今シーズン最下位でしたけど、横浜が一番人件費をかけてないかといえば、そうでもないんですよ。我々が当時考えていたのは、映画「マネーボール」をモデルとした経営をやろうと思っていたんですよ。

小口:あの映画では、選手の獲得に最も重視していたのが出塁率でしたが。

熊谷:そうなんです。選手の能力をすべて数値化して、選手の本来もっている金銭的な価値をはじきだして、それに基づく経営をやろうと思っていたんですよね。

須田:逆に考えてみると、運営、経営の仕方がシンプルだから、しかも旬の部分では放映権料がものすごく大きいんですよ。しかもジャイアンツ戦の放映権料に限って。ですから、そういった意味で言うと、なぜ読売ジャイアンツがあれだけでかい顔をしていられるのか?ナベツネがなぜあれだけ好き勝手できるのか?だから、ジャイアンツに依存する球団経営構造があるわけですよ。ですから、熊谷さんが言ったように「ジャイアンツはいいですよ」というような球団がでてくると、ジャイアンツにとっては、反乱分子みたいな状況になってしまうんですよね。

新規参入は子供の頃からの夢の具現化

小口:2004年の球界再編の時。新規参入の準備は、すごく大変なものだと伺ったのですが、詳しく聞かせてもらってもよろしいですか?

熊谷:いやー大変です。当時は1から作るという話で。今年、DeNAさんが横浜ベイスターズを買収しましたけど、あれは譲り受けただけなので、そのまま契約を引き継ぐだけじゃないですか。ところがライブドアの場合、新規参入でしたので、すべて1からのスタートなんですよね。

大谷:近鉄バッファローズとオリックスブルーウェーブの合併で11球団になったところで、プラス1を誰がどう作るかという話でライブドアがでてきたんですよね。

熊谷:我々が名乗りを挙げたのは9月だったんですけれども、11月にはドラフト会議がある、1月からは冬のキャンプが始まる、4月からはペナントレースが始まるという中で、まず選手を採用できるか。あと、フランチャイズ球場を確保できるか、2軍施設はどうしようか、寮はどうしようか、ユニホームのクリーニングをどこの業者に頼もうか。

小口:クリーニング!?そこまで決めておかないといけないんですか?

熊谷:そうじゃないと、1から球団経営はできないんですよ。

小島:そういうことをNPBから聞かれるんですよ。そういうものを書面にして提出しないといけなかったんです。

須田:そのあたりは、熊谷さんも小島さんのノウハウに頼ったんですか?

熊谷:頼った面もありましたが、新たな球団経営モデルを作ろうと思っていたので、新しい考え方ですべて組み立てようとしてました。

小島:だから、熊谷さんと意見がぶつかることもありました。例えば、公式ボールって、ファールでコンクリートにぶつかると、表面が削れちゃって使いものにならないんですよ。真っ白に見えても、傷ついてしまったら、まっすぐ投げてるつもりでも空気抵抗を受けてまっすぐ投げられないんですよね。

だけど、熊谷さん達は予算をなるべく圧縮したいから「使い回せばいいじゃないですか」「どうして、年間で2500ダースもボールがいるんだ」みたいなことを言ってくるわけですよね。それは経営に立つ側として全うな感覚であって。ですが、一方で野球人としての考え方もあるわけです。

例えば、野手が調子を上げていくためには、自分が打ちたいコースへキレイな球を投げてほしいんですよ。そういったことが技術の向上にもなるし、いいメンタルで選手が試合に臨んでいける。そういった野球界ならではの、外せないところがあるんです。そういうところをアドバイスしつつ、意見をぶつけあってましたね。

須田:そうすると、熊谷さんは野球チームの経営に普通のビジネス感覚を持ち込もうという風にそもそも考えていたんですか?

熊谷:そうです、そうです。どちらかというと、年間70試合のホームゲームにきてくれる1万人~2万人のお客さんにいくらお金を使ってもらうかということを考えてました。

例えば、いま球場行っても、席にご飯を食べられるようなテーブルがありませんよね?そういったところから手直しをしていくことによって、来場されたお客さんがお弁当を買ったり、ビールをたくさん飲んでくれるんじゃないかってところを考えていたんですよね。

須田:ちょっと、そもそも論を聞きたいんですが。ライブドアをプロ野球ビジネスへ参入
しようと考えたのは誰だったんですか?

熊谷:あれは某大手金融機関からの紹介だったんですよ。元ライブドアナンバー2の宮内さんが、元々高校球児で、プロ野球チームを持つというのは1つの夢だったんですよね。それを具現化しようというのが1つのテーマだったんですよ。

小口:堀江さんは関係ないんですか?

熊谷:堀江さんは関係ないんじゃないですか、最初は。

大谷:そこは、ビジネスとして、事業として、収入が見込めたから始めたということですか?

熊谷:宮内さんが案件を持ち込んで、堀江さんが商売として儲かるだろうし、広告宣伝効果もあるだろうということで、進めていったんですよね。

須田:また、これもそもそも論なんですが。小島さんはそれまで、元横浜ベイスターズの広報兼通訳だったり、元メジャーリーガーの新庄剛志さんの通訳だったりと、輝かしい経歴があったわけじゃないですか。プロ野球のことも熟知しているし。そういったことをある意味投げ打って、ライブドアフェニックスのGMになられたわけですが、それはどういった状況で出来ると思ったんですか?

小島:今でも覚えてるんですけど、鎌倉のほうに仕事で行ってたんですよ。車を運転して。そうしたらラジオから「当時、30歳か31歳の堀江貴文氏が近鉄バッファローズの買収に名乗りを挙げた」というニュースが聞こえてきたんです。それを聞いた時の衝撃がすごい大きかったんですね。僕とほぼ同世代の堀江がプロ野球のオーナーになるのかと。その時のワクワクドキドキ感。脳天をズド―ンと刺激されましたよね。それがあって、いつしか自分もそういう夢を追っかけてみたいなという思いに駆り立てられました。それから先輩に紹介してもらって、ライブドアに入ったんですけど。熊谷さんや堀江さんの働きぶりを傍で見ていたらこの人たちを「男にしてあげたい」と思いは湧いてきましたよね。

小口:小島さんの中では、ライブドアフェニックスの新規参入はある程度勝算があるから携わったわけですよね?

小島:今にして思うと、野球界で仕事をしていた時の先輩からは色んなことを言われたりもしましたけど、やってる時は本当に真剣にやっていたし、負けるとは微塵も思ってなかったですね。

楽天OK ライブドアNG その理由は?

須田:そんなピュアなキモチをもっていたのに、結局新規参入を果たしたのは楽天。

大谷:ライブドアがNGだった理由と、楽天がOKだった理由は?

熊谷:それは堀江さんがナベツネさんのことを「老害」っていったからじゃないですか。

小島:それはデカイと思いますよ。最後までYシャツ着なかったし、スーツ着なかったし。

小口:ズバリ、なにが一番ウンザリしたことでしたか?

熊谷:新規球団を作るっていう申請書を出して、ライブドアがプロ野球チームを持つのに相応しい企業かどうかを審査する「審査小委員会」っていうのがあったんですよね。そこに出席した時、清武元代表が紙袋から「メイドさんしぃしー」を取り出して、「ライブドアさん、これなんですか?」といわれたんです。

小口:ちょっとすいません。大谷編集長!「メイドさんしぃしー」についてご説明お願いしてもよろしいですか?

大谷:当時、ライブドアは手広く色々な事業をやっておりまして。その中の1つであるゲームビジネスで「メイドさんしぃしー」というアダルトゲームも手がけていたわけなんですね。

熊谷:我々は、審査小委員会に行って「ライブドアってどんな企業なんですか?」と聞かれると思ったら、開口一番「メイドさんしぃしー」ですよ。他にもっと聞くことあるだろって思いましたよね。
 
須田:それはライブドアを排除するための作戦ですよね。

小島:実際、公開ヒアリングの半分以上「メイドさんしぃしー」の話でしたね。1回の表からその話でしたね。

小口:それに対して、どう防戦していったんですか?

熊谷:読売グループさんもスポーツ報知にアダルト欄ありますよねって。そもそも私もそれまで、そのゲームの存在を知らなかったんですよ。よく見つけてくるなーと思いましたね。

須田:恐らく、結論ありきだったんでしょう。楽天に球界参入を認めて、ライブドアはダメですよと。その1つの理由としてアダルトゲームが使われたんでしょうけど。それは一体誰が決めたのか?どういう基準で決まったのか?これが全く不透明ですよね。まぁ、なんとなくわかりますけど。

熊谷:元々の流れをいうと、1リーグ制にしたかったんですよ。にも関わらず、ライブドアが近鉄買収に手を挙げたことが気に入らなかったんでしょうね。1リーグ制推進の方々にとってみると。で、我々が手をあげたことで、選手会も古田さんをはじめ話を盛り上げて、世論が「2リーグ制を維持だ」っていう流れが出来つつあってしょうがないから1球団入れなきゃな…っていう話になってきましたよね。

その中で、ライブドアは入れたくない。ナベツネさんを「老害」っていうような 堀江さんをオーナーにしたくないということがあったんです。だから楽天さんがでてきたんです。ライブドアよりは楽天のほうがいいだろうと。三木谷さんはスーツを着て、ネクタイもして、老害なんていわない。そこです。

小島:だからね、僕ら思うんですけど。ライブドアがブルドーザーで道を掘っていたあとに楽天さんがやってきた。確かにプロ野球の新規参入ってすごく大変なんですよ。書類も何センチ単位のもので、そういうものを3日とかで作らなきゃいけないわけですよ。しかも、作った翌々日ぐらいには、その書類に関しての裏付けとなる資料の提出を求められるんです。

小口:熊谷さんがその貴重な資料の一部を持ってきてくださいました。「日本プロフェッショナル野球組織への参加申請書」これを3日間でまとめあげたわけですね。書いてあるのは「参加を申請する会社の情報」「球団の概要」「事業の概要」「経理などの概要」ここにクリーニングの業者とかキャンプのこととか書くわけですよね。

須田:よく考えてみるとね、ファンのことを考えて、ファンにとってどちらのほうがベストなのか。そういうことを全く考慮しないわけでしょ?それの中心にいたのが清武さんなんですよ。だから、今頃「清武の乱」なんて起こしてるほうがおかしいんじゃないかと。ファン不在だとかね。だって、ライブドアはここまで作ったわけですよ。ファンのことを考えて。しかも、これまでプロ野球チームのいなかった東北地方の仙台にチームを作ろうと。そういったところまで考えついてところに対して、切り捨てにでる。全くのファン不在だと私は思いますけどね。

熊谷:プロ野球っていう組織がよくないんですよね。NPBの長はコミッショナーというですけど、天下りの人間なんですよね。

大谷:元検事総長とかそういう人たちですよね。

熊谷:組織としてはNPBとオーナー会議と実行委員会の3つがあって。オーナー会議というのは、各球団のオーナーが出席する会議。実行委員会というのは、球団の社長が集まる会議。一番力を持っているのがオーナー会議なんですけれども、オーナー会議っていうのは結局自分のことしか考えてないんですよね。


小島:新規参入してきた企業が、自分たちの企業にとって、プラスかマイナスかという
ことを考えているんです。

ライブドアのおかげで苦労せずに新規参入できた楽天

大谷:2004年はライブドアがダメで、楽天が入りましたと。それで今回は楽天がオーナー会議に出る側になって、DeNAの新規参入に反対したという報道がありましたけど。

熊谷:みなさん、楽天が新しい企業だと思っているかもしれないですけれど。結局、ライブドアが新規参入の時から、新規参入側ではなく、古い企業側についていたわけですよ。当時から向こう側だったんですよ。だから入れたというのもあるんですけどね。

須田:それは三木谷さんの経歴を考えればよくわかるんじゃないかと。日本興業銀行からですからね。そういった点から考えると、日本の資本主義の王道を歩いていた人ですよ。

熊谷:さっき紹介したNPBの申請書がありますけど、実はそれ、楽天の方と一緒に作ってるんですよ。楽天が手を挙げる前というのは、ライブドアと楽天の某お偉いさんが一緒になってプロ野球を作ろうという話の中で、事業計画をまとめていったんですね。宮城県との交渉の内容などすべて、楽天さんに伝えていましたし。宮城県との球場の契約とか、寮の契約、2軍施設の契約もすべてライブドアのほうで交渉をまとめたものをそのまま持っててますから。彼らあまり苦労してないと思いますよ。

須田:パクリどころの話じゃないですね!

小口:そこはもめようとは思わなかったわけですか?

熊谷:なかったですね。

小島:それよりもやらなきゃいけないことがたくさんあって。

熊谷:もう忙しかったんです。小島さんを入れて3人だけでしたから。

球団新規参入と球団買収 日米の違い

大谷:アメリカだと選手のデータを数値化して球団運営に生かすとか、利益をあげるための手法も確立していると思うんですが。日本だとまだまだ親会社グループの広告宣伝という側面が強い印象も持ちます。日米で比べると球団新規参入や球団買収はどう違うのでしょうか?

小島:マーケットが上手に拡大しているんですよね。あとアメリカってすごくよくできていて。メジャーリーグのフランチャイズを置くっていうのは、州にとっての誇りなんですよね。だけれども、アメリカの大都市もしくは中都市でプロ野球のチームのオーナーになりたいという街の数よりもメジャーリーグの数の方が少ないんですよね。だから、交渉が常に進めやすいんですね。今回、横浜がDeNAベイスターズになって、横浜スタジアムとの契約が難しいとか横浜から出ていくべきだという話があったりなかったりしますけど。実際、横浜から出ちゃったら、名乗りを挙げてくれる自治体があるかないかとかね。そこにポテンシャルがあるかどうかも含めると。日本という国土の中での12という数の適合性。メジャーリーグはそこをちゃんと考えてますよね。

熊谷:メジャーは野球っていう文化を広げてこう、大きくしていこうという気持ちを持ってる人間がMLBの中にいるよね。

小島:株式会社メジャーリーグベースボールの中に30個の支店がある感じなんですよね。それが東はニューヨークから西はシアトルからロスからサンフランシスコから。その30個の支店のトップたちがなんとかしてメジャーリーグベースボールってものをよくしていこうと。でないと、フットボールに負けちゃう、バスケに負けちゃう、ホッケーに負けちゃう。っていう危機感があるんですよね。一方で日本の場合は電車に乗ろう…みたいなね。

須田:また、層が厚いですよね。メジャーリーグだけじゃなくて。その下にトリプルAからシングルAまであって、それぞれがファンを開拓してるわけですよ。ですからヤンキースの下にはいくつもいくつもチームがある。あるいは独立リーグがあったりして。それがまた人材の交流をやって。マーケットを拡大していくというところで、1つのビジネスモデルがあるし、そこに対してものすごい熱心ですよね。

小島:そうですね。メジャーリーグのフランチャイズが持てないところは、トリプルAならいいじゃないかっていう、彼らは彼らなりの身の丈にあったフランチャイズの持ち方で街の誇りとか街の文化を持っているわけです。

須田:それはただ単純に2軍、3軍ではなくてね。我が町の野球チームとして本気になって応援するんです。シングルAでもトリプルAでも。

小島:メジャーリーグの球場で、メジャーリーガーにサインをもらう子供の表情と、シングルA、ダブルAで名もなき選手なんだけれども「あっ、次僕もらえるかもしれない」っていう子供の表情って一緒なんですよね。10億円、20億円のメジャーリーガーにサインもらうドキドキ感ともしかしたら来シーズンは契約していないかもしれないマイナーリーガーの選手にサインをもらう前の子供の表情ってね。そういった面では、メジャーリーグ、マイナーリーグっていう差はないんだなっていうことが、アメリカで学んだことですね。それが野球の1つの魅力だなって。人の心にスッと入ってこれますよね、スポーツって。理屈じゃなくて。

ライブドアフェニックスの監督はオマリーだった!?

小口:アメリカの球団でGMとオーナーが対立するってことあるんですか?

小島:時々ありますね。でもやっぱりオーナーのほうが強くて。

大谷:先ほど清武さんの話がでましたけれども。清武さんは元々新聞記者の方ですよね。アメリカの場合は、選手だったり野球のことを熟知した方がGMをやられるケースが多いんですよね。

小島:職業選択の中に、僕はいつかプロのチームのオーナーになりたい。経営がしたいっていう人もいれば。僕はいつかプロ野球のチームのGMになりたい。っていうのが、子供の頃から将来の夢にあるんですよね。

須田:だって、GMでMBA取得者って結構いるんですよね。

小島:いますね。あとすごくおもしろい話しが合って。僕がアメリカにいた2002年のトロント・ブルージェイズのトスカ監督は、キャッチボールできないんですよ。野球経験者じゃないの。だけども、30しかないメジャーリーグチームの監督をできるわけですよ。そこにはスター選手だから監督になれるというのではなくて。人をマネージメントする。野球を理論的に語れる。勝つための努力。負けるリスクを減らす。そういうものがちゃんと備わってると決して、キャッチボールができなくても監督ができるんですね。

須田:スターだからといって、そのまますぐに監督にはなれないし。監督になるためには、そのための訓練をやってくんですよ。だから、いきなりDeNAの中畑監督みたいなことはメジャーではありえないんですよ。

大谷:もしライブドアフェニックスが誕生してたら監督は?

熊谷:監督はオマリーさん。

小島:あの頃、オマリーさんは阪神タイガースのスカウトをやられてたんですよ。ぶっちゃけ話をすると、熊谷さんから預かっていた数10億円の予算があったんですよ。その中で、監督がいて、コーチがあって、裏方さんがいて、2軍のスタッフがいて、選手の年俸があって。みたいなところをパズリングしていかなくてはならなくて。そうすると、監督に今のように1億を越えるような人件費はさけないわけですよ。そうすると数千万。数千万の中でも5000万より下ぐらいで。だけれども、しっかりマネージングの経験があって、野球を熟知している人って誰かいないかなってリサーチすると。何人かいたんですけど、たまたま僕も英語しゃべれたので、オマリーさんにお願いしてみようかと。で、調べてみるとオマリーさんは独立リーグで監督をしてたんですよ。その独立リーグも、毎年毎年強くなかったチームをマネージングして、勝率5割に持っていった実績があったんで。しかも、ヤクルト、阪神でスーパースターで日本の野球も熟知しているんで。

日本のプロ野球再生のカギは、NPBの組織改革

小口:みなさんからたくさん質問がきていますので、ここから先、質問にドンドンお答えいただきたいと思います。

大谷:新規参入失敗のあと広島カープ買収のウワサもありました。他球団買収の考えはなかったのですか?

熊谷:ありました!広島かどうかはいえませんがありました。

小口:やっぱり欲しかった?

熊谷:欲しかったですね。

小口:ソフトバンクの孫さんのように胴上げされてみたかった?

熊谷:胴上げというより、一回たてた目標に関しては、達成できるまでがんばらないといけないじゃないですか。

小島:僕、すごく覚えているのがあって。当時六本木ヒルズのオフィスで、熊谷さんと廊下ですれ違ったんですよ。野球のプロジェクトは残念ながら結果がでずに、僕は別の仕事が始まったんですけど、その時に。「小島さん、またやるかもしれないからね」って言われたんですよ。

須田:今後、新規参入を目指すところがでてきたら、ぜひ考えてもらいたいのが。企業名を冠にするのはやめてくれと。サッカーとかシンプルですっきりしていていいじゃないですか。

小島:1つ日本の野球界の大きな特徴といいますか。どうしてもそうなってしまうというのがあって。昭和29年にできた、国税庁の通達というものがあって。プロ野球の企業に限りなんですけれども。親会社は赤字が出た時の損失の補てんを広告宣伝費でまかなってよしと。全額まかなってよしという税法上の法律が今もあるんです。それが、現行の税法でも反映されてしまってる以上。企業からすると、その法律は使わない手はないですよね。そういうものがある以上、どうしても日本のプロ野球を考えた場合、それは理想論ではね、地域名プラスニックネームですよ。でもそうすると、制度の改革というか法律も含めて変えていかないと。そういうことは1つありますよね。

熊谷:でも、球団が儲かるような仕組みにしないといけないんですよ。やっぱりプロ野球というマーケットを大きくしていこうという人間がいないんで、こうなってるんですよね。

大谷:次の質問いきましょうか。横浜DeNAベイスターズに変わったことで、何か野球界がかわると思いますか?

熊谷:変わらないと思います。それはさっきからちょっといってますけど。NPBっていう組織を変えないといけなくて。NPBよりもオーナー会議のほうが力を持っているという時点でうまくいかないんですよ。自分のことしか考えていませんから。

須田:過去の歴史もそうじゃないですか。かつて映画産業が花形だった時は、映画会社が球団をもったし、一時期は土建屋さんが球団を持った時代もあったんですよ。鉄道会社が持ったっていうのは、鉄道会社が花形だった時代に持ったわけですよ。ですから、その時代、時代によって、どの産業が脚光を浴びていて、中心になっているのか。だから今はやっぱりITの時代っていうことも言えるんじゃないかなと思いますけどね。

熊谷:文化を育てるっていう側面と球団を経営するという2つの側面があって。両方とも誰も推進していこうとしてないから歯がゆいんですよね。文化を育てるっていう意識がNPBにないんで。例えば、Jリーグは、サッカーチーム自体は儲かってないんですけど、オーナー会議ってありませんよね。サッカーはオーナーじゃなくて、サッカー協会のほうが力を持っているんですよ。

小口:サッカー全体のことを考えてくれる組織が力を持っているってことですよね。

熊谷:そうです。だから、そこを変えていかない限り、日本のプロ野球はよくならないんじゃないかなと思ってます。

小島:でもね、アマチュアほうはね、少しずつですけど、その息吹があって。東京都の高校の選抜と東都大学の1・2年生たちが試合をしたんですよ。これ今まで考えられなかったことで。これで高校生たちは「大学になったらこのレベルでやらないと試合でれないんだ」とか、色んなこと憧れるわけですよね。大学生は後輩たちに打たれるわけにはいかないって。そういう世代の差を越えたガチンコの戦いの場がなくて。でもそれがこの前行われて。少しずつ変わりつつはあるんですよね。

大谷:質問です。「当時ライブドアは球団を長期保有する意思があったのでしょうか?それともある程度保有したあと転売も考えていたのでしょうか?」ライブドアの新規参入騒動のあと、制度は変わったんでしたっけ?10年保有しないとっていうのがありましたよね。

熊谷:元々ありました。基本的には10年持たないと、最初に預けた25億円が戻ってこないんですよ。加盟する時に25億円供託しないといけないんですけども。10年以内の間に譲渡すると没収されちゃうんですよね。昔からありました。

小島:負け惜しみじゃなくて。結果的に僕ら参入は叶わなかったけれども。楽天がいま東北でプロ野球チームを作ってくれたじゃないですか。あれは非常に喜ばしいことだし。スポーツの地方拡散が起きてるわけですよ。今まで北海道にチームがなかったのにファイターズがいってくれた。九州にはホークスがある。東北にもできた。それはすごくいいことだし、僕らの仙台にフランチャイズを設けて野球チームを作ろうっていう提案自体は間違ってなかったってことですよね。

須田:いま、その流れになってますよね。かつてはジャイアンツ依存一辺倒だったのが、日本ハムファイターズが北海道行ったりね、楽天が仙台に行ったり。地方でジャイアンツ人気に頼らずに、ファンを開拓して盛り上げていこうという動きになってますよね。だから今パ・リーグのほうが元気あるじゃないですか。

熊谷:それは文化を作ろうって意思があるからだと思うんですよね。

小島:そういうチームの運営してたら、地元のファンは熱くなりますよね。

熊谷:いかに子供たちにプロ野球を直接見させるというのがすごい重要だと思うんですよね。夢を持たせるということで、文化っていうのはできていくと思うんですよ。それが特に巨人はできてないのかなと思います。

日本のプロ野球界に必要なこと「戦力の均衡」

小口:ユーザーアンケートの時間ですけれども、みなさんに今日はこのアンケートをとりたいと思います。「日本のプロ野球界に必要なこと」1戦力の均衡、2収入の平等化、31部・2部制の導入、4今のままでよい

大谷:おふた方は、プロ野球界にどんなことが必要だと思いますか?

小島:チームって企業の保有になってるじゃないですか。それが理想かもしれないけど企業の保有から地域の保有に、少しでもいいから流れていってほしいと思いますけどね。

小口:はい、結果がでました。1番が戦力の均衡ですね。

小島:戦力の均衡というのは、それだけではおもしろくなくて。リーグが一体となって、戦力の均衡をして、マネジメントをすると、売り上げ増とかマーケットの拡大につながるんですよね。だけども、今までみたいに12球団各々のチームの経営主体による戦力の均衡はあまりかわらないんですよね。ちゃんとトップがマネージメントをした上で、戦力の均衡をすれば、アメリカのプロスポーツビジネスのようなモデルになっていくと思いますね。

須田:やっぱり戦力の均衡ってことを考えるとね。ジャイアンツに対する批判って点にもつながっていきますよね。

熊谷:僕は戦力の均衡は全く必要ないと思っていて。巨人はお金を使ってドンドン強くしてもらえばいいと思ってるんですよね。逆に横浜みたいな球団は、若くて活きのいい選手を安い給料でドンドン集めて、ポスティングシステムを使って移籍をさせる。海外にも出していく。そこで収益を出していくほうが正しい道だと思うんですよね。今のプロ野球のチームって特徴がないんですよ。巨人はありますけれども。他に特徴がないっていうのがすごい大きい問題で。そこを変えてこうって球団が1 球団でもあってもいいじゃないかと思うんですよね。

小島:DeNAの方々は5年後に優勝っていってましたよね。すると目をつけなくてはいけないのが、いま21歳から28歳ぐらいの世代なんですよね。5年後に主軸になってくる選手。彼らを徹底的に鍛えて、育てて。もしそこにいい人材がいそうになかったら、そこの世代の人材を外から取ってくる。もしくはドラフトにかける。5年後に優勝するという目標があれば、今の21歳から28歳の選手にチャンスを与えて、それをものにできなかったら、なんでできなかったのか、ちゃんと理詰めでアプローチできるようなことをやってほしいですよね。

熊谷:あと僕が期待してるのは、海外からどれだけ収益をとってくるかが重要だと思うんですよね。MLBの場合、アメリカだけがマーケットじゃなくて、世界がマーケットなのでお金がとれるわけですよね。ただ、NPBってマーケットが日本だけじゃないですか。日本のプロ野球が見たいっていう人は、韓国に少しいるかもしれませんけども、世界中にいないわけですよね。その中で今後、中国であったり、台湾であったり、韓国っていう国といかに協力していって、中国、韓国、台湾からどうやってお金をとっていくかを考えていかないとマーケットは大きくならないんじゃないかと思ってます。【了】

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