大宮の南はGK最多J通算661試合出場を達成。偉大な記録の背景にある若手時代との考え方の変化とは? (C)SOCCER DIGEST

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 柏レイソル、ロアッソ熊本、横浜FC、大宮アルディージャでプレー。25年のプロキャリアで培ったモノが偉大な記録につながった。

 大宮の南雄太が5月4日に行なわれたJ2リーグ第14節・大分トリニータ戦で、楢崎正剛氏(元名古屋ほか)の持つJ通算660試合の出場記録を更新。GKで歴代最多となる661試合出場を達成した。

 プロとして長く続けられる理由を南は「1日1日、1試合1試合の積み重ね」と、こともなげに話すが、10代、20代、30代、そして40代にはそれぞれ心の移ろいがあった。

「10代、20代の頃は、先の目標、例えば、日本代表に入るといった目標を立てていた」と南。1998年の柏でのプロ1年目は、高卒ルーキーながらレギュラー格。勝気かつ生意気盛りで、試合中、失点を味方のせいにし、ときにチームメイトとケンカすることもあった。

「いまでは信じられない」と振り返るように、若手時代は練習開始30分前にクラブハウスに訪れ、終わればすぐに帰宅。準備もケアもしなかった。また先発を外れそうになると、むくれる始末。「俺が一番」とまさに自信と誇りの塊だった。
 
 その南に変化が訪れたのは30歳を迎えた2009年、柏から契約満了を言い渡されたときだ。「もうサッカーができなくなるかもしれない」。初めて味わった身に迫る恐怖。その後、縁あって熊本に移籍したことで考え方が変わった。

「先のことをイメージするより目の前のことを、1日1日頑張らないとサッカーが続けられない。パフォーマンスなど維持しなければならないし……とにかく考え方がものすごく変わって、1日1日、大事にするようになった。いつサッカー選手でなくなるか、そうした瀬戸際を感じていた」

 この南の変化を語るのは、チームメイトやコーチとして長く関わった大宮の北嶋秀朗コーチだ。北嶋氏は、「熊本のとき、『現役が終わるその日まで成長できる。だからお互いアイデアや知識をもらってやっていこう』。そう話し合った」と話す。その約束はいまも続く。

「一番リスペクトしているのは、あの年齢でまだ成長できると思ってトレーニングしていること。30歳に差し掛かると、いままでやってきたことから逃げがちになる。でも、こうしたら伸びるんじゃないかって好奇心を持って取り組みながら、成長できている。成長する欲求……大宮にいる30代に届く選手には、わかってくれよって。見習ってほしい」(北嶋コーチ)
 
 成長への欲求は、まだまだ伸びるという自分への期待の大きさの表われ。そのなかで、「引退を覚悟した」という怪我を負い、出場わずか1試合のみに終わった2017年を経て、いまに至っている。

 艱難辛苦を乗り越えた南に形容されるベテランという言葉。30歳を迎えた頃、ベテランと言われることに違和感はあったが、いまはまったくなくなった。
 
「40歳を越えてからはもう何にも思わなくなった。もうベテランなんですから」と笑う南。大木のような太もも。岩のようにゴツゴツした膝。ギュンと張り出たふくはらぎ。「ひとりでやりたい」と朝早くクラブハウスを訪れ、汗を流す。

 1秒でも長く、1試合でも多く、ピッチに。42歳となった現在も、たゆまぬ、その跡、その気概が見て取れた。

取材・文●佐藤亮太(フリーライター)

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