高校3年時には「スタンレーレディス」で2位タイに入った佐藤(右)(撮影:村上航)

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プロゴルファーの原点ともいえるのが高校時代。多くの有望選手を輩出する名門高校のゴルフ部監督は、その原点を知っている。今では語られない、知られざるエピソードも数多い。高校ゴルフ部監督の回顧録をお届け。今回は水城高校(茨城県)を40年率いた後、現在は明秀学園日立高校(茨城県)ゴルフ部の総監督を務める石井貢氏。女子プロの新星も育てていた。(取材・文/山西英希)
■入学同時から男子並みのスイングとインパクト音に驚愕
片山晋呉や宮本勝昌ら多くのツアープロを輩出してきた水城高校ゴルフ部の監督を長年務めていた石井貢氏。水城高校のゴルフ部休部に伴い、16年4月から総監督として指導しているのが茨城県の明秀学園日立高校ゴルフ部。同校を卒業したプロには小滝水音、高久みなみがいるが、石井氏の印象に強く残ったのは佐藤心結だという。
佐藤が存在感を示したのは昨年の「スタンレーレディスゴルフトーナメント」。最終日を首位タイでスタートし、プレーオフに残ったものの渋野日向子に敗れて2位タイに終わった。翌月に行われたプロテストでは見事4位で合格し、その実力を改めて周囲に認めさせた。
明秀学園日立高校のゴルフ部に入部した際、総監督を務める石井氏はそのスイングに驚いたという。「インパクトの音がそれまでの選手とはまるで違いました。ダウンスイングからインパクトにかけてタメをつくり、そこから一気に振り抜くスイングは男子と一緒でしたね」。精度こそ不安定だったもののドライバーショットの飛距離は群を抜いていたという。
■ノートに記して課題を明確にして練習メニューに反映
石井氏に格の違いを見せつけた佐藤だったが、いざ試合になるとなかなか結果を残せずにいた。関東レベルの大会では上位に入るものの、全国大会ではなかなかトップテンに入ることができなかった。その原因はやはりショットの精度にあった。
「コースマネジメントや1打の重みを理解していなかったこともありますが、全国レベルになるには、アイアンショットの精度を上げて、ショートゲームを磨くことが必要でした」と石井氏。
そのために役立ったのが、ゴルフ部全員に課しているゴルフノートだ。毎日の練習で気がついたことやラウンドでのフェアウェイキープ率、パーオン率、リカバリー率、パット数を集計し、それについての所見を書いたものを石井氏がチェックする。1時間ほど個別に話し合った結果、その時点での課題を見つけ、練習メニューに反映させる日々を送った。
すると、徐々にショットの精度が上がり、ショートゲームの確率も高くなる。「相変わらず飛んでいましたし、足りなかったものを補えれば全国でもトップにいけると思っていました」という石井氏の読みどおり、昨年の日本女子アマでは3位に食い込んだ。
そこから佐藤の快進撃が続き、「スタンレーレディスゴルフトーナメント」での活躍にもつながったが、注目はその試合でのスタッツにある。ドライビングディスタンスは平均260ヤードをマークしてプロを抑えてトップ。パーオン率でも77・78%という高い数字をマークして6位タイとなった。飛距離だけでなく、ショットの精度が増した証拠でもある。昨年12月のQTでは11位に入り、今季のツアー出場権を獲得。石井氏を驚かせたポテンシャルが発揮されるのはこれからだ。

■佐藤心結
さとう・みゆ/2003年7月21日生まれ、神奈川県出身。身長161センチ。7歳でゴルフを始めるが小学3年生までサッカーに熱中。10歳で本格的にクラブを握り、三觜喜一に師事。中学校に上がると陸上を始め、10メートル80センチの記録を持つ砲丸投げの選手として活躍した経歴もある。明秀学園日立高校に進学後、3年時の日本女子アマで3位タイなどの成績を残し、国内女子ツアーの「スタンレーレディス」ではプレーオフで渋野日向子に敗れて2位タイ。昨年11月のプロテストに合格。プロ初戦の「ダイキンオーキッドレディス」は13位タイ。今後の活躍が期待される

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