西郷真央と稲見萌寧の2トップ体制が続く!?(撮影:鈴木祥)

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国内ゴルフの幕開けとなった「ダイキンオーキッドレディス」は、西郷真央が念願の初優勝を果たした。勝てそうで勝てなかった、そんな経験で得た悔しさを見事に初戦で晴らした。20歳の西郷が勝てた理由を、上田桃子らを指導する辻村明志コーチが分析する。
■勝つ準備をしてきた西郷真央が見せた2つの強さ
昨シーズンは2位が7回、トップ10も21回と強さを発揮した西郷。ルーキーシーズンながらフル回転の大活躍だったが、未勝利に終わった。だからこそ心の中では燃えるものがあったのだろう。2022年初戦でいきなり栄冠をつかんだ。これに対して辻村氏は「開幕戦は準備ができている人しか勝てないものです」と称える。
昨シーズン終了から3カ月。誰もが新シーズンを見据え準備をするが、やってきたことを結果に結びつけるのは簡単なことではない。「きっと、“こんちくしょう”、“くっそー”という精神も強かったでしょうし、そういう気持ちがあったからオフに頑張れたのだと思います」と、まずは気持ちの面が西郷の初優勝につながったと辻村氏は分析する。
もちろんこれは技術あってのことだが、「素晴らしい選手からさらにバージョンアップしたと感じました。成長が見て取れたシーンの一つが最終日の18番の3打目です」(辻村氏)と振り返る。パー5の2打目をグリーン左のバンカーに入れたのだが、アゴが近くピンは狙えない状況。そこで下した決断は安全策で、一度横のラフに出すと、そこから40センチにつけパーセーブ。初優勝をたぐり寄せた。
「あそこであの決断をサッとできる。勝つか負けるかというときにあの決断ができたのはこれまでの経験を生かしている証拠です」と辻村氏。さらに「16番も17番もそうですが、パッティングのタッチが今までのジャストタッチより少し強い。勝負どころでこれができたのが強さ、成長の証です」と続ける。
■稲見萌寧の進化、対抗馬は西郷真央
「間違いなく稲見萌寧選手の対抗馬は西郷選手です」と辻村氏。昨季9勝を挙げ、圧倒的な勝率を誇った女王を脅かす存在が西郷だとした。ところで、その稲見は辻村氏の目にどう映ったのか。「スイングが大きく変わったわけではないけど、地面の踏み込み方、地面の捉え方、噛みしめる感じが20%増えました」と力強さの部分を強調した。
元々精度には定評のある稲見だが、「精度のいいダウンスイングに“重たい”が加わった。動きそのものというより、腰が重くなった、体重以上に重さを感じるスイングになりました」と分析する。稲見自身も周囲から「体が大きくなった」と指摘されるようだが、実際はそれほどでもない。スイング時でも、この見た目の重みが強さへと変換されているということだ。
「稲見選手はつまり、バージョンアップの仕方がいい。腕など外の動きが変化したのではなく、重みを使った下方向へと変化が向かった。変化の方向性がすごくいいんです」と賞賛。最終日にはやや失速したが、「今年もいくぞというアピールは十分だったのではないでしょうか」(辻村氏)。1戦目を獲った西郷、重みが増した稲見。春先はこの2人が主役争いの中心となりそうだ。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、松森彩夏、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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