確定申告が必要なのにしなかった場合どうなるのでしょうか。そもそも自分が確定申告をする必要があるのか、あるいは、いくらまでなら確定申告しなくていいのか把握していない人もいるかもしれません。今回は、確定申告をしないとどうなるのか、確定申告が不要なケースや確定申告しなくていい金額(所得額)などについて解説します。

確定申告しないとどうなる?

所得税法では、確定申告の対象となる所得がある場合、決められた期限までに申告を行い、納税しなければなりません。期限までに申告手続きができないときは、追加で税金を課される可能性があります。実際にどのような税金が追加されるのか解説します。

無申告加算税を課される場合がある

確定申告の対象者でありながら期限内の申告を怠った場合は、無申告加算税が課されます。無申告加算税とは、確定申告の期限内に手続きをしなかった場合に本来納める税金以外に課される税金のことです。無申告加算税は、納付すべき税額に対し50万円までが15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算されます。

仮に、本来納付すべき税額が60万円だった場合、「50万円×15%+10万円×20%」で9万5,000円の税金が追加で課されることになるのです。

ただし、確定申告の定められた期間内に申告ができなくても、法定申告期限後1ヶ月以内に自主的に申告をして、法定納期限までに全額を納税し、過去5年間に無申告加算税か重加算税などを受けたことがなければ、無申告加算税は課されません。また、期限後に自主申告して無申告加算税の課税を免除されたことが、過去5年間に1度もないことも条件です。

納税が遅れた日数分の延滞税がかかる

確定申告を期限内にしなかった場合は、無申告加算税のほかに延滞税も課せられます。延滞税は法定納期限を過ぎた日数に応じて加算される仕組みです。

延滞税の割合は最高で年14.6%となっています。延滞税は延滞の日数に応じて計算方法が異なるため、複雑です。国税庁のホームページでは、期限後申告書を提出した年月日、納付する年月日、申告した納税額を入力すれば簡単に延滞税の計算ができるようになっています。

期限後に納付する場合の納期限は確定申告書を提出した日です。ちなみに、期限内に確定申告をした場合でも、法定納期限である3月15日までに税金を納付しないと延滞税が課せられます。納税が遅れるほど延滞税がかかるため、できるだけ早く納税を済ませることが大切です。

出典:延滞税の計算方法|国税庁

住民税にも延滞税がかかる

税務署に確定申告をしないと、自治体の住民税にも影響するため気をつけなければなりません。

確定申告を済ませれば自治体に連携してデータが送られ、あらためて自治体で住民税の申告をする必要はありません。ところが、確定申告を行う必要があるのにしていない場合、自治体への住民税の申告もしていないことになります。

そうなると本来納めるべき住民税が未納の状態になってしまいます。そのため、期限後に確定申告をすると、タイミングによっては住民税にも最大14.6%の延滞税がかかるかもしれないのです。

確定申告しないことで生じる不都合

確定申告をしないと、無申告加算税や延滞税がかかること以外にも、あとになってさまざまな面で不都合が生じるときがあります。ここでは、確定申告しないとどのような不都合が生じるのか具体的に解説します。

収入を証明できない

会社員なら、会社から源泉徴収票が発行されるため、収入の証明書としてあらゆる手続きに使えます。

一方、個人事業主やフリーランスは、確定申告書の控えが収入の証明書となるため、そもそも確定申告をしていなければ収入の証明ができません。住宅ローンや教育ローンなど、金融機関でまとまったお金を借りたくても、収入証明がないと申し込みすら受け付けてもらえません。

同様に、賃貸住宅の入居を希望しても、必要な書類が提出できないので契約もできません。そのほかにも、事業に必要な資金が用意できなかったり、国民健康保険料の減額や行政の支援が受けられなかったりなどのことが起こります。

青色申告の特典が受けられない

青色申告の承認申請手続きを行い、青色申告適用者として承認を受けたにもかかわらず申告が遅れたり申告をしなかったりすると、通常よりも税負担が重くなる可能性があるため気をつけましょう。

確定申告の期限までに正しく申告すれば、青色申告では55万円(e-Taxで申告した場合は65万円)の特別控除が受けられるので節税になります。しかし、期限内に申告しないと、控除額が10万円に減額されます。

さらに、2期連続で申告期限までに申告しなかった場合、青色申告の承認が取り消されてしまいます。青色申告の特別控除や損失繰越といった特典が、今後受けられなくなってしまうのです。

確定申告しなくていい金額はいくらまで?

そもそも、確定申告が必要なのかどうかわからない人もいるかもしれません。ここでは、確定申告しなくていい金額(所得額)はいくらまでなのか解説します。

個人事業主やフリーランスの場合

個人事業主やフリーランスで、1月1日から12月31日までの合計収入(売上)よりも経費のほうが上回り赤字になった場合は確定申告が不要です。

また、所得が所得控除の合計額を下回る場合も所得税が発生しないため、確定申告は必要ありません。所得控除には、基礎控除や配偶者控除、扶養控除などがあり、納税者それぞれの事情に応じて税負担を調整します。収入から経費と所得控除額を差し引いた金額が、所得税の課税対象になります。つまり、課税対象金額がマイナスになる場合は所得税が発生しないため、確定申告の義務はありません。

ただし、前述のとおり個人事業主やフリーランスは収入証明として確定申告書が必要になることがあるため、所得税が非課税であっても確定申告をしたほうがよいケースもあるのです。さらに、青色申告の場合、損失を翌年以降3年間繰り越せるため、翌年以降の利益から損失を控除することができます。

そのため、制度上は確定申告の義務がなくても、確定申告をするメリットがある場合には、手続きをしたほうがよいでしょう。

会社員で副業をしている場合

会社員で副業をしている場合、副業による所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。たとえば、原稿料や講演料などで臨時の報酬を得た場合も、年間の給与所得以外の所得の合計が20万円以下なら確定申告は必要ありません。

この場合の所得とは、収入から経費を引いた金額を指します。仮に、30万円の収入を得るのに、資料代、交通費、取材費、調査費などの経費に12万円かかった場合は、所得が18万円となるため確定申告は不要です。

ただし、副業の収入を源泉徴収された金額で受け取っているときは、確定申告をすれば納め過ぎた税金が還付される可能性があります。

また、確定申告は不要でも、市区町村の住民税がかかる場合があるため、自治体で住民税の申告をしなければなりません。

確定申告を忘れたらどうすればいい?

確定申告は原則として、1月1日から12月31日までの1年分の所得を、翌年の2月16日から3月15日の期間に申告する必要があります。過去に災害のあった地域や新型コロナウイルス感染症が流行した2020~2021年など、特別措置として期限が延長された年もありました。期限を過ぎても確定申告は可能なので、できるだけ速やかに手続きをすることをおすすめします。

ただし、医療費控除や所得控除の申告漏れなど、納め過ぎた税金の還付申告に限っては、翌年の1月1日から5年前の分までさかのぼって還付請求ができます。

まとめ

確定申告をする必要があるのに、確定申告をしないまま放置しておくことは避けましょう。放置する期間が長いほど、追加で課される税金が高くなる可能性があります。自分は確定申告が必要かどうかを見極め、必要であれば忘れずに期限内に手続きを済ませましょう。うっかり期限を過ぎてしまったら、できるだけ早めに手続きをすることが大切です。