加盟国11のCPTPPに韓国が加盟を推進することを発表。加盟による悪影響を憂慮する声も出てきた(写真・pytyczech/PIXTA)

韓国政府は世界で2番目の規模となる自由貿易協定(FTA)であるCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)への加盟を推進すると明らかにした。加盟できれば、世界のGDP(国内総生産)の13%を占める巨大市場が開くことになる。

韓国の洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政相は2021年12月13日の会議で「アジア太平洋地域内の経済秩序が活発に変化しており、CPTPPの加盟をこれ以上、政府内のみで議論するのは難しい状況だ。CPTPP加盟を本格的に推進するため、多様な利害関係者との社会的議論を行うなど関連手続きを始める」と述べた。

農業団体は「加盟阻止」を予告

CPTPPは日本やオーストラリア、メキシコなど11カ国が2018年に発足させたFTAだ。2019年基準での貿易規模は2兆9000億ドルで、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)に次ぐ2番目の規模を誇る。11カ国のGDPは11兆3000億ドルで世界の12.9%を占め、RCEPやUSMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)に次ぐ3番目の規模だ。

文在寅大統領は2020年12月に「CPTPP加盟を検討する」と初めて言及したが、その後の議論は下火だった。今回の発表で、CPTPP加盟で打撃が予想される農業団体は声明を出し、「阻止闘争に入る」と予告した。韓国総合農業団体協議会は「加盟となれば農産物の追加開放が避けられず、価格競争力が高い農産物が入ってくることで韓国の農業生産基盤が崩壊しうる」と反発している。

一方、韓国財界は「望ましい方向性を持つ政策決定」として加盟推進に好意的だが、交渉には慎重であるべきとの姿勢だ。韓国貿易協会は歓迎する立場であると同時に、業界からの意見を積極的に聞いて、具体的な交渉戦略を立案してほしいと強調する。

韓国貿易協会国際貿易通商研究院のチェ・ヒョンジョン通商支援センター室長は「原則的に考えて、韓国企業に利益をもたらす協定であれば加盟するのは妥当だ。とくにCPTPPには韓国製造業に敏感な問題となる日本との競争品目が含まれており、緻密な交渉戦略が必要だ」と言う。また「協定を締結することになれば、すでに加盟している日本の自動車と機械、化学分野の市場も開放されることになるが、日本企業の競争力が韓国と比べ優位にある市場であり、これには対策が必要だ」(チェ室長)。

大韓商工会議所も肯定的な反応を示しつつ、その「戦略的活用」を提案した。同会議所国際通商本部のカン・ソック本部長は「国際通商の秩序が急変する時期に、韓国政府がCPTPP加盟交渉と社会的な議論に着手すると発表したことは望ましい姿勢だ」という。そのうえで、「一部の業界や中小製造メーカーなどに加盟を心配する声もある。該当業界と企業の競争力などを考えて、国益に合うような方向で議論を進めるべきだ」とも述べた。

自動車、機械、化学分野で日本と競合

全国経済人連合会は2021年11月に「韓国政府はCPTPPへの加盟検討など、韓国企業の貿易領域を広げるためにさらに努力をしてほしい」との声明を出しCPTPP加盟を促してきた。

韓国にとって主要貿易国であるベトナムや日本、シンガポールなどからの農産品・食品が加盟後に輸入が増えると予想される。このため、韓国の農産・畜産業界が打撃を受ける可能性があり、これは韓国政府が解決すべき長期的課題だ。韓国総合農業団体協議会は声明で、「CPTPP加盟は韓国の農業の崩壊、さらには食料自給の放棄以外の何物でもない」と韓国政府に対して加盟協議撤回を要求した。

同協議会はまた、「相対的に価格競争力が高い輸入農産品が増えることは、長期的に農業生産の基盤を崩すことになる。このため、さらなる代価を支払うことになる事実を韓国政府と政界は肝に銘じるべきだ」と警告する。
(2021年12月14日付)