この記事をまとめると

■新型車の発売時に公表される販売目標には車種によってかなりの幅がある

■トヨタ・センチュリーなど極端に少ないモデルもある

■なぜ販売目標が少ない車種が商売として成り立つのかについて解説する

販売目標が少ない車種の大半は海外を中心に売られている

 新型車の発売時に公表される1カ月の販売目標はさまざまだ。トヨタのアクアは1カ月に9800台だが、ハイラックスは1年間に2000台だから、1カ月平均では167台に留まる。レクサスLSとグランエースも1カ月当たり600台で、センチュリーは50台と極端に少ない。

 ホンダでは、シビックは1000台で、先ごろ販売を終えたNSXは1年間に100台だ。1カ月当たりわずか8台になる。

 このように販売目標が少ない車種の大半は、海外を中心に売られる。たとえばNSXは、日本の販売目標は1カ月に8台でも、海外まで含めた生産規模は1年間に1500台、1カ月平均なら125台とされていた。つまり海外を中心に販売すれば、日本の販売台数が少なくても成り立つわけだ。

 ちなみに今の乗用車メーカーの販売状況を見ると、生産総数の80%以上を海外で販売している(ダイハツを除く)。日本はいわばオマケの市場だから、軽自動車、ミニバン、そのほかの一部車種以外は、海外市場を重視して商品開発を行うようになった。

 たとえばホンダの場合、軽自動車+フィット+フリード+ヴェゼルの販売台数を合計すると、国内で新車として売られるホンダ車の80%以上に達する。シビックやNSXだけでなく、ステップワゴンやオデッセイなどのミニバンも含めて「その他の20%以下」に片付けられてしまう。

 日産も軽自動車+ノート(オーラを含む)+セレナの販売台数を合計すると、国内で販売された新車の60〜70%になる。同じメーカーの商品でも、車種ごとの販売格差が拡大した。

 見方を変えるとホンダや日産では、軽自動車と一部の売れ筋車種があれば、国内の主要な需要はカバーできる。この台数をさらに上乗せしたり、上級移行するユーザーに対応するため、いわば脇役として海外向けの車種を導入している。

国内向けに少量を生産する場合は価格を高めなければならない

 例外として、国内向けの商品でありながら、販売目標台数の少ない車種もある。それが月販目標50台のセンチュリーだ。特殊なVIP向けの車両だから少なく抑えた。

 その代わり現行型の価格は2008万円に達する。先代センチュリーは1カ月の販売目標を200台に設定したから、価格は1253万8286円だった。それが50台に減ったことで、現行型の価格は発売時点で1960万円、現在は2000万円を超えている。先代センチュリーは専用のV型12気筒エンジンを搭載したが、現行型のパワーユニットとプラットフォームは、先代レクサスLS600hと共通でコスト負担を抑えた。それでも生産台数が少ないと、700万円以上の値上げになるのだ。

 以上のように販売目標が少ない車種は、大半が海外向けだから成立している。センチュリーのように国内向けに少量を生産すれば、価格を大幅に高めなければならない。

 なお海外向けの車種を少数ながら日本へ導入する背景には、イメージリーダーの役割もある。NSXやシビックは、ホンダのダウンサイジングしたブランドイメージを是正するのには最適だ。それなのに販売方法や宣伝の仕方が悪く、十分に訴求できていない。ホンダに限らず、販売台数の少ない趣味性の強い車種は、ブランド確立の側面からもっと有効に活用すべきだ。