子育て世代の多くが悩む「教育費」。知っておきたい上手な貯め方と制度
お金の不安は尽きないもの…。いざというときのためにコツコツと貯蓄をしておきたいけど、目の前の生活のこともあり、なかなか思うように貯められない…という人も多いのではないでしょうか?
ESSE読者にお金にまつわる不安についてアンケートを取ったところ、多く挙がってきたのが、子どもの教育費でした。
ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、そんな教育費の不安を解消するために知っておきたいことを教えてもらいました。
子どもの教育費が思うように貯まらず不安も(※写真はイメージです。以下同)
ESSE読者からもっとも多く寄せられたお金の不安が、「子どもの教育費」。読者のにお悩みに丸山さんが答えてくれました。
「幼い子どもが3人います。現在、なかなか貯金ができないため、この子たちをこれから塾に通わせたり、先々は大学まで進学させられるのかとても心配です。今からできることはありますか?」(30代・女性)
大きなお金の心配事といえば、住宅ローンや老後資金などが挙げられますが、まさに子育て中の方にとっては教育費の不安も大きいかと思います。
子ども1人につきかかる養育費、教育費はおよそ3000万円と言われています。教育費は、進路や習い事、塾に通うかどうかなどによってもかかる費用は異なります。また、子どもの人数が増えるごとにその費用も増えていきます。進路によってかかるお金を知っておくことで、上手に準備ができるはずです。
【公立と私立で金額の違い】
文部科学省「平成30年度 子供の学習費調査」の、学校教育費、給食費、学校外活動費などをすべて含めた「学習費総額」を公立と私立で比較してみます。
公立と私立の学習費総額の差は、小学校が月額約10万6000円、中学校で月額約7万円、高校(全日制)が月額約4万3000円。
小→中→高と進むにつれて、金額的な差が小さくなるのがわかります。
この「小学校月額約10万円」「中学校月額約7万5000円」というお金を毎月払うことができるかどうか。私立学校に行かせられるかどうかは、この金額が1つの目安と言えるでしょう。
ここからは、早いうちからやっておきたい積み立てや貯め方、そして知っておきたい制度についてご紹介します。
学資保険の満期は18歳で大学入学時です。下記の表は大学4年間にかかる授業料等の金額です。これらは下宿費用等が含まれないため、進学先によってはさらに費用がかかることを知っておいてください。
参考資料:文部科学省「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
」のデータ等を使用し筆者作成
子どもが18歳になる頃に600万円の貯蓄があれば大学費用は準備できると考えてよいでしょう。
月2万5000円を18年間貯めておけば、540万円貯まる計算になるので、お子さんが生まれると同時に積立てをスタートさせるのも一案です。また、これらの数字を参考にして現在の教育費用の貯蓄額と進学までの期間を計算して、不足分を追加して積み立てておくと安心です。
児童手当は中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日)支給されます。所得制限限度額内、第1子、2子がもらえる児童手当の総額は約198万円(生まれ月によっても異なる)です。これら児童手当を積み立てることで、約200万円分の貯蓄は可能になります。
教育費は確実に貯めることが大切です。毎月決まった日に定額を積み立て定期にしましょう。学資保険も教育費を準備するための保険商品ですので、別の用途に使ってしまいそうなら、学資保険を使うのもいいでしょう。学資保険を使うメリットとしては、原則満期になるまでは引き出すことができない。契約者に万が一のことがあった場合、その後の支払いが免除される点が挙げられます。デメリットとしては、返戻率があまりよくないことです。
習い事の数や子どもの人数が増えるほどその費用はかさみます。進学費用は先取り貯蓄などで積み立てながら、習い事費用としていくら予算が持てるかを計算しその中でやりくりします。子どもの人数によっても1人あたりにかけられる費用は変わりますので、習い事で家計がパンクしないように気をつけたいところです。
現状、習い事費用がかさんでおり、進学費用の貯蓄がままならないのであれば、子どもと相談して習い事を減らすことも検討しましょう。場合によっては、習い事を通じてその道のプロになることも考えられます。子どものやる気など総合的に考えて判断するようにしましょう。私立校などでは、成績優秀者やスポーツで優秀な成績を収めていると学費の一部や全額免除、給付型の奨学金を受けることができますので、状況に応じて進学先を決めるのも一案です。
もし、保護者の所得が一定額以下であれば、高等学校等就学支援金制度を利用することで、高校の授業料が実質無償になります。
算定式は、保護者の市町村税の課税標準額×6%−市町村民税の調整控除額
この算定式の計算結果が30万4200円未満(年収目安約910万円未満)となる場合は、支援金を受けることができます。
公立高校の場合は、年額11万8800円が支給され、授業料負担が実質0円になります。
私立高校等の場合は、所得額によって支給額が変わります。
両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合、年収590万円未満で、年額39万6000円が支給されます。これはあくまでも目安であり、家族の人数や年齢、働いている人の人数等で、実際に対象となる年収は変わるのでご注意ください。
同条件で、年収590万円以上910万円未満の場合、基準額の11万8800円が支給されます。
就学支援金制度を利用する場合は、入学時等に学校から案内がありますので、必ず申請をしましょう。
また、進学費用を18歳までに全額貯められなくても、奨学金を借りる方法もあります。給付型の奨学金を獲得できれば、返還する必要はありません。貸与型の奨学金は返済の義務が生じます。奨学金を利用する、しないは、家計と貯蓄の状況、お子さんの進学先によって家族で話し合って決めましょう。
ただし、あまりにも高額になるとお子さんが社会に出ると同時に数百万円の負債を抱えてのスタートとなります。新社会人のお子さんの収入でやりくりできそうか、奨学金が払い終わる年齢はいつなのか、などさまざま方向から考えましょう。
制度などは変わることがありますので、情報は学校など公的な機関から取るようにしましょう。
不安なことは多いと思いますが、着実に貯める仕組みをつくり頼れる制度を知っておくと、いざというときに困らないはずです。
●教えてくれた人
節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー。著書に『50代から知っておきたい! 年金生活の不安、解消します
』(共著、幻冬舎刊)などがある。新しい家計簿『節約家計ノート2022
』(東京新聞刊)は9月発売予定。オンラインコミュニティサロン「女性のための夢を叶える! お金の教室
」もスタート
ESSE読者にお金にまつわる不安についてアンケートを取ったところ、多く挙がってきたのが、子どもの教育費でした。
ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、そんな教育費の不安を解消するために知っておきたいことを教えてもらいました。
子どもの教育費が思うように貯まらず不安も(※写真はイメージです。以下同)
子どもの教育費用を貯められるか不安。知っておきたい金額や制度のこと
ESSE読者からもっとも多く寄せられたお金の不安が、「子どもの教育費」。読者のにお悩みに丸山さんが答えてくれました。
●お金のいちばんの不安は教育費。3人の子どもを大学まで入れられるか心配です
「幼い子どもが3人います。現在、なかなか貯金ができないため、この子たちをこれから塾に通わせたり、先々は大学まで進学させられるのかとても心配です。今からできることはありますか?」(30代・女性)
大きなお金の心配事といえば、住宅ローンや老後資金などが挙げられますが、まさに子育て中の方にとっては教育費の不安も大きいかと思います。
子ども1人につきかかる養育費、教育費はおよそ3000万円と言われています。教育費は、進路や習い事、塾に通うかどうかなどによってもかかる費用は異なります。また、子どもの人数が増えるごとにその費用も増えていきます。進路によってかかるお金を知っておくことで、上手に準備ができるはずです。
【公立と私立で金額の違い】
文部科学省「平成30年度 子供の学習費調査」の、学校教育費、給食費、学校外活動費などをすべて含めた「学習費総額」を公立と私立で比較してみます。
平成30年度 小・中・高校の学習費総額
【小学校】
公立:1年間約32万1000円(月額約2万7000円)6年間で約192万6000円
私立:1年間に約159万9000円(月額約13万3000円)6年間で約959万4000円
【中学校】
公立:1年間に約48万8000円(月額約4万700円)3年間で約146万4000円
私立:1年間に約140万6000円(月額約11万7000円)3年間で約421万8000円
【高校(全日制)】
公立:1年間に約45万7000円(月額約3万8000円)3年間で約137万1000円
私立:1年間に約97万円(月額約8万1000円)3年間で約291万円
【小学校】
公立:1年間約32万1000円(月額約2万7000円)6年間で約192万6000円
私立:1年間に約159万9000円(月額約13万3000円)6年間で約959万4000円
【中学校】
公立:1年間に約48万8000円(月額約4万700円)3年間で約146万4000円
私立:1年間に約140万6000円(月額約11万7000円)3年間で約421万8000円
【高校(全日制)】
公立:1年間に約45万7000円(月額約3万8000円)3年間で約137万1000円
私立:1年間に約97万円(月額約8万1000円)3年間で約291万円
公立と私立の学習費総額の差は、小学校が月額約10万6000円、中学校で月額約7万円、高校(全日制)が月額約4万3000円。
小→中→高と進むにつれて、金額的な差が小さくなるのがわかります。
この「小学校月額約10万円」「中学校月額約7万5000円」というお金を毎月払うことができるかどうか。私立学校に行かせられるかどうかは、この金額が1つの目安と言えるでしょう。
ここからは、早いうちからやっておきたい積み立てや貯め方、そして知っておきたい制度についてご紹介します。
●大学費用の積み立ては必至。18歳までに600万円の貯蓄が必要
学資保険の満期は18歳で大学入学時です。下記の表は大学4年間にかかる授業料等の金額です。これらは下宿費用等が含まれないため、進学先によってはさらに費用がかかることを知っておいてください。
参考資料:文部科学省「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
」のデータ等を使用し筆者作成
子どもが18歳になる頃に600万円の貯蓄があれば大学費用は準備できると考えてよいでしょう。
月2万5000円を18年間貯めておけば、540万円貯まる計算になるので、お子さんが生まれると同時に積立てをスタートさせるのも一案です。また、これらの数字を参考にして現在の教育費用の貯蓄額と進学までの期間を計算して、不足分を追加して積み立てておくと安心です。
●児童手当を積み立てしておく
児童手当は中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日)支給されます。所得制限限度額内、第1子、2子がもらえる児童手当の総額は約198万円(生まれ月によっても異なる)です。これら児童手当を積み立てることで、約200万円分の貯蓄は可能になります。
●学資保険を使って確実に貯める
教育費は確実に貯めることが大切です。毎月決まった日に定額を積み立て定期にしましょう。学資保険も教育費を準備するための保険商品ですので、別の用途に使ってしまいそうなら、学資保険を使うのもいいでしょう。学資保険を使うメリットとしては、原則満期になるまでは引き出すことができない。契約者に万が一のことがあった場合、その後の支払いが免除される点が挙げられます。デメリットとしては、返戻率があまりよくないことです。
●習い事費用を上手に見直しする
習い事の数や子どもの人数が増えるほどその費用はかさみます。進学費用は先取り貯蓄などで積み立てながら、習い事費用としていくら予算が持てるかを計算しその中でやりくりします。子どもの人数によっても1人あたりにかけられる費用は変わりますので、習い事で家計がパンクしないように気をつけたいところです。
現状、習い事費用がかさんでおり、進学費用の貯蓄がままならないのであれば、子どもと相談して習い事を減らすことも検討しましょう。場合によっては、習い事を通じてその道のプロになることも考えられます。子どものやる気など総合的に考えて判断するようにしましょう。私立校などでは、成績優秀者やスポーツで優秀な成績を収めていると学費の一部や全額免除、給付型の奨学金を受けることができますので、状況に応じて進学先を決めるのも一案です。
●高等学校等就学支援金制度を利用すれば授業料が無償に
もし、保護者の所得が一定額以下であれば、高等学校等就学支援金制度を利用することで、高校の授業料が実質無償になります。
算定式は、保護者の市町村税の課税標準額×6%−市町村民税の調整控除額
この算定式の計算結果が30万4200円未満(年収目安約910万円未満)となる場合は、支援金を受けることができます。
公立高校の場合は、年額11万8800円が支給され、授業料負担が実質0円になります。
私立高校等の場合は、所得額によって支給額が変わります。
両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合、年収590万円未満で、年額39万6000円が支給されます。これはあくまでも目安であり、家族の人数や年齢、働いている人の人数等で、実際に対象となる年収は変わるのでご注意ください。
同条件で、年収590万円以上910万円未満の場合、基準額の11万8800円が支給されます。
就学支援金制度を利用する場合は、入学時等に学校から案内がありますので、必ず申請をしましょう。
●奨学金の利用も視野に
また、進学費用を18歳までに全額貯められなくても、奨学金を借りる方法もあります。給付型の奨学金を獲得できれば、返還する必要はありません。貸与型の奨学金は返済の義務が生じます。奨学金を利用する、しないは、家計と貯蓄の状況、お子さんの進学先によって家族で話し合って決めましょう。
ただし、あまりにも高額になるとお子さんが社会に出ると同時に数百万円の負債を抱えてのスタートとなります。新社会人のお子さんの収入でやりくりできそうか、奨学金が払い終わる年齢はいつなのか、などさまざま方向から考えましょう。
制度などは変わることがありますので、情報は学校など公的な機関から取るようにしましょう。
不安なことは多いと思いますが、着実に貯める仕組みをつくり頼れる制度を知っておくと、いざというときに困らないはずです。
●教えてくれた人
【丸山晴美さん】
節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー。著書に『50代から知っておきたい! 年金生活の不安、解消します
』(共著、幻冬舎刊)などがある。新しい家計簿『節約家計ノート2022
』(東京新聞刊)は9月発売予定。オンラインコミュニティサロン「女性のための夢を叶える! お金の教室
」もスタート