あの頃のESSE。2015年頃の家事はスピードより“ゆるさ”が求められた<歴代編集長インタビュー・佐々木智子さん>
今年、ESSEは創刊40周年! それを記念して、ESSEonlineではESSEの歴代編集長にインタビューしました。
第3回目は、2014年8月号〜2018年7月号に編集長を務めた佐々木智子さんです。
佐々木智子さん
佐々木編集長は、扶桑社でファッション誌の編集長、ESSE副編集長などを経て、ESSE編集長に就任しました。
2015年3月号「暮らしを楽しむ豊かな節約術」。節約も無理せず、暮らしが楽しくなるアイデアを提案
「当時の私は、子育て真っただ中。中学生の娘のために毎朝お弁当をつくって、会社に来ていました。そのときの副編集長の女性も同じように中学生の子どもがいて、似たような境遇。主婦業も仕事も目が回るほど忙しくて、“時短”は自分たちにとってもものすごくリアルなテーマだったのです」
ESSE読者も、以前とは違い、働く女性が年々増えていました。
「3分家事、2品弁当、3素材鍋、フライパンでおせち、考えない家事、開き直りの収納など、とにかく家事をラクにする特集をたくさん組みました」
2017年6月号「ゆる収納できれいが続く」
「“疲れない”とか“ゆる”といった言葉もよく使いましたね。家族のために、ちゃんとやってあげたいという気持ちを抱えながらも、忙しくて大変という状況は切実。がんばっている人に、“そんなにがんばらなくていいよ”というメッセージを送りたかったのです。それは、自分自身へのメッセージでもあったかもしれません」
第二次安倍内閣の日本再興戦略の柱として、「すべての女性が輝く社会」というかけ声の下、女性が働きやすい社会を目指そうという動きが広がりました。
一方で、家庭を持つ女性が働く環境はなかなか整わず、男性の長時間労働の現状も浮き彫りに。ワンオペ育児、ワンオペ家事といった言葉もしきりに言われるようになった、そんな時代でした。
2014年8月号「10分で完成! フライパンひとつでスピードおかず」
「料理本では2016年に出版された土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)がベストセラーになるなど、家事も料理も、もっとシンプルでいいという動きが広がっていました。お弁当のおかずは2品、鍋の素材は3つで十分とか、全部茶色いおかずでOKとか…。それまで人気だった“時短”や“スピード”より、“ゆるさ”が求められるようになっていたと思います」
家事や暮らし方の特集では、2015年3月号にシンプルライフ研究家のマキさんが初登場。また、整理収納アドバイザーのemiさんも、繰り返し登場するように。2人の少しあとに、家事アドバイザーのおさよさんも、ESSEに初登場しました。
「3人とも子育てをしながら働くママで、家事や収納に対する考えはとてもシンプルで合理的。今まで当たり前とされてきたことも、ライフスタイルに合わなければ手放す思いきりのよさがあり、センスよく暮らす姿が、多くの読者に共感されました。彼女たちは今も引き続き、憧れのライフスタイルを実現するお手本のような存在として、人気がありますね」
2016年11月号「達人のなるほどすき間ワザ」
「一方で収納の細かなテクニックにも光をあてて、つっぱり棒やS字フックが再ブームになりました」
節約やお金の特集も、積極的にやるように。
2016年10月号「“ビンボー習慣”をやめればもっと! お金が貯まる」
「ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんに監修していただき、“ビンボー習慣”というわかりやすいネーミングにして、漫画をメインにした読みやすい特集を組んだところ、大好評。ほかにもお金がたまる収納とか、お金がたまる冷蔵庫とか、習慣やライフスタイルに結びつけたお金の企画をよく特集し、好評でした」
料理では、レシピサイトのクックパッドを活用する人が増えていました。
2016年6月号「クックパッド人気投稿者の大反響おかず」
「ESSEでも、クックパッドの人気レシピを特集したところ、すごく反響がありました。当初、ネットで見られるものを雑誌で掲載する意味があるのかしら? という迷いがあったのですが、たくさんあるレシピの中から、どのレシピを選んでいいかわからなかったという声が多くて。“ESSEが選んだレシピ”という視点が好評で、その後も何度も特集しました」
ダイエットでは、糖質オフダイエットが流行。これまで、食事制限のダイエットといえばカロリーを抑えるのが主流だったのが、カロリーより糖質を抑えることが大切だという説が注目され、ESSEでも特集を組みました。
その流れは今も続き、糖質オフレシピの特集は、ESSEの定番になっています。
「カロリーや食べる量を抑えるダイエットは、家族がいるとなかなか実行しにくいのですが、糖質オフレシピの場合は、揚げ物や肉料理など、家族が好むおかずをつくれるので、取り入れやすいという面も大きいですね」
佐々木編集長時代には、表紙にスポーツ選手もよく登場しました。また、2016年12月号には、ミニ版ESSEが初登場。
2014年8月号。荒川静香さんのスタイルとファッションを見せるため、珍しく全身カットを採用しました
「表紙はこれまで女優さんが多かったのを、もう少しバラエティ豊かにしたいと思って、編集長になった最初の号にフィギュアスケーターの荒川静香さんを起用しました」
「また、それまで表紙に出るのは結婚している人というのがESSEのルールだったのですが、離婚した人やシングルマザーなど、幅広く起用するようになりました」
2016年12月号、通常版とミニ版の大きさ比較。バッグに入ると人気でした
「ミニ版に関しては、当時ファッション誌で、ミニ版を出すのが流行していたんです。働く女性が増えて、家の中より通勤途中に電車の中で読めるようにという流れです。実際には通勤だけでなく、子どもの送り迎えの間に読んでいるといった声もあり、好評でした。ミニ版はしばらくつくって、次の尾崎編集長にも引き継がれましたが、2019年4月号で終了。時代の流れの速さを感じます」
そしてESSEは現編集長・尾崎真佐子編集長に受け継がれます。
<撮影/林紘輝 取材・文/井汲千絵>
第3回目は、2014年8月号〜2018年7月号に編集長を務めた佐々木智子さんです。
佐々木智子さん
仕事や子育てに忙しくても、家族のために手は抜きたくない!そんな女性が多かった
佐々木編集長は、扶桑社でファッション誌の編集長、ESSE副編集長などを経て、ESSE編集長に就任しました。
2015年3月号「暮らしを楽しむ豊かな節約術」。節約も無理せず、暮らしが楽しくなるアイデアを提案
「当時の私は、子育て真っただ中。中学生の娘のために毎朝お弁当をつくって、会社に来ていました。そのときの副編集長の女性も同じように中学生の子どもがいて、似たような境遇。主婦業も仕事も目が回るほど忙しくて、“時短”は自分たちにとってもものすごくリアルなテーマだったのです」
●働く女性が増え、ワンオペ育児、ワンオペ家事が問題に
ESSE読者も、以前とは違い、働く女性が年々増えていました。
「3分家事、2品弁当、3素材鍋、フライパンでおせち、考えない家事、開き直りの収納など、とにかく家事をラクにする特集をたくさん組みました」
2017年6月号「ゆる収納できれいが続く」
「“疲れない”とか“ゆる”といった言葉もよく使いましたね。家族のために、ちゃんとやってあげたいという気持ちを抱えながらも、忙しくて大変という状況は切実。がんばっている人に、“そんなにがんばらなくていいよ”というメッセージを送りたかったのです。それは、自分自身へのメッセージでもあったかもしれません」
第二次安倍内閣の日本再興戦略の柱として、「すべての女性が輝く社会」というかけ声の下、女性が働きやすい社会を目指そうという動きが広がりました。
一方で、家庭を持つ女性が働く環境はなかなか整わず、男性の長時間労働の現状も浮き彫りに。ワンオペ育児、ワンオペ家事といった言葉もしきりに言われるようになった、そんな時代でした。
2014年8月号「10分で完成! フライパンひとつでスピードおかず」
「料理本では2016年に出版された土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)がベストセラーになるなど、家事も料理も、もっとシンプルでいいという動きが広がっていました。お弁当のおかずは2品、鍋の素材は3つで十分とか、全部茶色いおかずでOKとか…。それまで人気だった“時短”や“スピード”より、“ゆるさ”が求められるようになっていたと思います」
●整理収納アドバイザーらの暮らしがあこがれになりました
家事や暮らし方の特集では、2015年3月号にシンプルライフ研究家のマキさんが初登場。また、整理収納アドバイザーのemiさんも、繰り返し登場するように。2人の少しあとに、家事アドバイザーのおさよさんも、ESSEに初登場しました。
「3人とも子育てをしながら働くママで、家事や収納に対する考えはとてもシンプルで合理的。今まで当たり前とされてきたことも、ライフスタイルに合わなければ手放す思いきりのよさがあり、センスよく暮らす姿が、多くの読者に共感されました。彼女たちは今も引き続き、憧れのライフスタイルを実現するお手本のような存在として、人気がありますね」
2016年11月号「達人のなるほどすき間ワザ」
「一方で収納の細かなテクニックにも光をあてて、つっぱり棒やS字フックが再ブームになりました」
節約やお金の特集も、積極的にやるように。
2016年10月号「“ビンボー習慣”をやめればもっと! お金が貯まる」
「ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんに監修していただき、“ビンボー習慣”というわかりやすいネーミングにして、漫画をメインにした読みやすい特集を組んだところ、大好評。ほかにもお金がたまる収納とか、お金がたまる冷蔵庫とか、習慣やライフスタイルに結びつけたお金の企画をよく特集し、好評でした」
●クックパッドや糖質オフダイエットの流行もこの頃から
料理では、レシピサイトのクックパッドを活用する人が増えていました。
2016年6月号「クックパッド人気投稿者の大反響おかず」
「ESSEでも、クックパッドの人気レシピを特集したところ、すごく反響がありました。当初、ネットで見られるものを雑誌で掲載する意味があるのかしら? という迷いがあったのですが、たくさんあるレシピの中から、どのレシピを選んでいいかわからなかったという声が多くて。“ESSEが選んだレシピ”という視点が好評で、その後も何度も特集しました」
ダイエットでは、糖質オフダイエットが流行。これまで、食事制限のダイエットといえばカロリーを抑えるのが主流だったのが、カロリーより糖質を抑えることが大切だという説が注目され、ESSEでも特集を組みました。
その流れは今も続き、糖質オフレシピの特集は、ESSEの定番になっています。
「カロリーや食べる量を抑えるダイエットは、家族がいるとなかなか実行しにくいのですが、糖質オフレシピの場合は、揚げ物や肉料理など、家族が好むおかずをつくれるので、取り入れやすいという面も大きいですね」
●表紙には離婚した人やシングルマザーも起用するように
佐々木編集長時代には、表紙にスポーツ選手もよく登場しました。また、2016年12月号には、ミニ版ESSEが初登場。
2014年8月号。荒川静香さんのスタイルとファッションを見せるため、珍しく全身カットを採用しました
「表紙はこれまで女優さんが多かったのを、もう少しバラエティ豊かにしたいと思って、編集長になった最初の号にフィギュアスケーターの荒川静香さんを起用しました」
「また、それまで表紙に出るのは結婚している人というのがESSEのルールだったのですが、離婚した人やシングルマザーなど、幅広く起用するようになりました」
2016年12月号、通常版とミニ版の大きさ比較。バッグに入ると人気でした
「ミニ版に関しては、当時ファッション誌で、ミニ版を出すのが流行していたんです。働く女性が増えて、家の中より通勤途中に電車の中で読めるようにという流れです。実際には通勤だけでなく、子どもの送り迎えの間に読んでいるといった声もあり、好評でした。ミニ版はしばらくつくって、次の尾崎編集長にも引き継がれましたが、2019年4月号で終了。時代の流れの速さを感じます」
そしてESSEは現編集長・尾崎真佐子編集長に受け継がれます。
<撮影/林紘輝 取材・文/井汲千絵>