収納を語るときに「デッドスペースを有効活用することが大切」とよく言われます。
「もちろん1つでも多くのものを収納するためにはデッドスペースはないほうがいいのですが、たくさん収納できる=使いやすい収納とは限りません」というのは、ライフオーガナイザーの下村志保美さん。詳しく伺いました。

映える収納=使いやすい収納ではありません!




美しい収納。でもこれは整えられすぎた偽の姿なんです

こちらはわが家の文具や工具を入れている収納です。無印良品の収納用品でそろえていて扉をあけてもすっきりと美しい収納。

ですがじつはこれ、普段よりも美しく見えるようにボックスの置き方を変えて写真を撮っています。
これからこの写真をもとに、段々と使いやすい収納にする実験を行います。

●ファイルボックスの前後を逆にします



じつは普段は、上の画像とファイルボックスの前後を逆にしています。

指を引っ掛けて取り出しやすいように、ファイルボックスの穴の部分を前にして置いてみましょう。


また、同じ形の収納グッズが並んでいるので、中になにが入っているか分かるようラベリングしています。
1枚目に比べるとごちゃついて見えますが、俄然使いやすくなりました。

●あえてすき間をつくったら、使い勝手バツグンに



そしてもうひとつ、きれいに見える写真ではなるべくすき間をあけないよう、じつは棚板の間隔を詰めるように配置していました。


すき間がないのでボックスの中が見えず見た目もすっきり。
もちろんデッドスペースと呼ばれるムダな空間もありません。

こちらは見た目もいいしムダもないようでパーフェクトのように思えますが、デメリットもあります。

ラベリングをしないと中になにが入っているかわかりませんし、棚板とボックスの間の隙間が狭すぎて指が入らず取り出しにくい。

そこでこのように、棚板とボックスの間に余白をつくります。


ちょっとしたことですが、すき間から中が見えますので、ラベリングをしていなくても中になにがあるのかわかります。


しかし中のものを取り出すときは、ファイルボックスを少し引き出す必要があります。

●すき間がもったいない?だけど使いやすいデッドスペース



次にもっとすき間をあけてみます。


例としてわかりやすくするために、一段分外してみました。

上にぽっかりあいた空間がもったいない! そう感じるかもしれませんが、さらにボックスの中がよく見えてなにが入っているのかパッとわかります。


なにより大きな大人の手でも、ボックスを引き出すことなく中のものを取り出すことができてラク。

ということは、使ったものを戻すときのアクションもラクだということなんです。

●すき間のない収納は、散らかりのもとでした!



すき間を埋めすぎて、「ボックスを引き出す」というたったひとつの簡単な動作が「面倒だなぁ」と感じたら、次第にものをその辺に出しっぱなしにしたり、適当なすき間に突っ込みがち。

わが家も私だけでしたら「ラベリングを見ながらお目当てのボックスを探す」「ボックスを引き出す」というこの2つの動作が苦になりませんが、夫や娘はそれすら面倒くさいと感じるようです。

またどのボックスになにを入れるか、必要なものをどこから出すかという問題。
この収納をつくった私なら「だいたいこのあたりだな」と目星をつけて探すことができるけれど、夫や娘にとってはたくさん並んだ白いボックスから必要なものを探すのは大変なようです。

だから夫や娘が使うものに関してはラベリングの文字を少し大きめにしたり、棚板の間隔を少し広めにしたりと、なるべく「パッと見てわかる」工夫をしています。

●きれいなだけではなく、取り出しやすい、片づけやすい収納に



真っ白なボックスが並んだ収納はすっきり見えるから片づけの正解のように思えるけれど、見た目が美しい収納が必ずしも使いやすいとは限らない。

きれいな収納をつくっても探せない、戻せない…では結局散らかってしまいます。

もし自分の中では完璧な収納なのに、家族がいつも探し物をしている、出しっぱなしにするという状況であれば、まずはわかりやすい収納を!

そしてそれが無理なくできたら、その次に見た目を整える…というように、ベビーステップで仕組みを整えてみてはいかがでしょうか?

●教えてくれた人
【下村志保美さん】



ライフオーガナイザー、ファイナンシャルプランナー、家計アドバイザー。「空間・お金・心」の3つを整えることで、忙しい女性をサポートする「PRECIOUS DAYS
」を主宰。著書に『片づけのプロが教える心地いい暮らしの整え方
』(三笠書房刊)がある