夫が「FIREで早期リタイアしたい」と言ったら要注意?その意味と落とし穴
日々の節約や仕事、将来の資産形成など、お金に関する意識は人それぞれ。
みなさんは「FIRE(ファイア)」という言葉を耳にしたことはありますか?「早期リタイア」を目指すというこのキーワードが昨今話題です。今回は、そんなFIREについて、ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんが解説してくれました。
夫が夢を語るようにFIREを提案してきたらどうしますか?(※写真はイメージです。以下同)
突然ですが質問します。
パートナーが突然「FIREしたい!」と言ってきたら、あなたはどう反応しますか。諸手を挙げて賛成しますか、反対しますか。それとも「それおいしいの?」と聞きますか。若いご夫婦の中には「FIRE目指して頑張っています!」と、節約&貯蓄&投資をしている家計簿を見ることがあります。夫婦で共通の目標を持つと強いということがとてもよくわかります。ではそもそもFIREとはなんでしょうか?
FIREとは、Financial Independence Retire Early(経済的に自立し、早くリタイアする)の頭文字をつなげたアメリカ発祥の言葉で、日本でも徐々に話題になっています。
一般的な早期リタイアのイメージは、60歳定年を5年早く退職するといったイメージですが、このFIREは、30代、40代などそれよりも早いリタイアを目指すものです。リタイア後は自分の時間を大切にして自分らしい生活することを目標としています。
とても魅力的に思えるFIREですが、これは宝くじが当たったら早期リタイアするといったことでもありませんし、退職前よりも生活水準を上げるリッチなFIRE(Fat FIRE)でもありません。今、話題のFIERのポイントと注意点などを解説します。
FIREを目指すためには、節約生活を継続させることが必須条件です。これはFIREを達成させた後でも継続させます。その理由は、手取りの収入から生活費と貯蓄・投資分を分けて、限られた生活費でやりくりする必要があるからです。できるだけ生活費を抑えることで、貯蓄・投資に回すことができるのです。
人生に大きなお金の貯めどきは3回あり、「独身時代」「夫婦共働きDINKS時代」「子どもが独立をして老後を迎えるまで」です。FIREを達成させるためには、この独身時代と夫婦共働き子どもなしのDINKS時代にどれだけ支出を減らし、資産を増やすかがカギとなります。
例えば、独身実家暮らしであれば収入の半分以上は貯蓄や投資に回すといったイメージです。
FIREの目標金額は、年間の生活費の25倍の資産を築くことが望ましいとされています。年間の生活費が300万円なら7500万円が目標額になるでしょう。そして、この7500万円を資産運用しながら運用益と元本を引き出しながら生活します。7500万円を貯めるには、単純計算で年間300万円なら25年、500万円なら15年で達成することができるでしょう。
ただ貯蓄に回すだけではなく、お金にも働いてもらわなければいけません。貯蓄も必要ですが、メインは株や債券などに投資をする必要があります。しかし、投資には大なり小なりリスクが伴います。相場の状況によっては資産が目減りするリスクも考える必要があるでしょう。
また、30代や40代前半でFIREを達成させるためには、25倍以上の資産が必要となるでしょう。そして、それらの年代のライフイベントとして高額な出費が予定される住宅、教育費の問題もあります。その際、住宅ローンは完済もしくは相続した住宅や資産がある、子どもの教育費は貯め終わっている、もしくは子どもは持たないといった選択をして、固定費や教育費などがかからないといった条件が揃うとFIREの実現度も高くなるでしょう。
早期リタイアと矛盾しますが、退職後は好きな仕事(ライクワーク)をしながら収入を得て、自分の時間を優先しつつ空いた時間をパートタイム等で働きつつ、できるだけ元本を減らさないようにして生活をするセミリタイアもFIREの一つの形と言えます。完全リタイアで働かず、海や山など自然に囲まれた場所で自給自足に近い生活をして、できるだけ生活費を掛けないFIREの形もあるでしょう。
FIREの形はひとつではなく、柔軟性が必要であると考えます。この金額を貯めたから大丈夫ではなく、最低限のお金でも楽しく生活できる柔軟性と、お金が減ってきても悲観的にならずに何かしらの対策が打てる生活力や生命力の強さも求められます。
早期リタイアと聞けば、ただ生活費を稼ぐために働くライスワーカーにとっては魅力的な言葉かも知れませんし、早期リタイアを目指して日々の生活を頑張ることができるなら、それも一つの考え方でしょう。しかし焦るがあまりに、ハイリスクな投資に手を出して大やけどをしないように気をつけなければいけません。
そもそもFIREは一攫千金の夢物語ではなく、地道に家計の見直しをして無駄な出費はできるだけ減らし、浮いたお金を運用に回すなど、急がば回れのような生活です。自分が理解できない投資先や借金をしないとできない投資は避けるべきですし、自分でしっかりと勉強することも大切です。そして怪しげな情報商材やサロンへ足を踏み入れるのもおすすめしません。自分どころか先方のFIRE資金になるだけでしょう。
パートナーにFIREを目指そうと言われて、実際に共感できるかできないかはそれぞれの価値観によります。節約も投資運用もバッチリ! というカップルなら、ともにFIREを目標として一緒に頑張れるかと思います。
もし、懐疑的な場合は、パートナーが変な方向へ行かないか目を光らせる必要があるかも知れません。
●教えてくれた人
節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー。著書に『50代から知っておきたい! 年金生活の不安、解消します
』(共著、幻冬舎刊)などがある。新しい家計簿『節約家計ノート2022
』(東京新聞刊)は9月発売予定。オンラインコミュニティサロン「女性のための夢を叶える! お金の教室
」もスタート
みなさんは「FIRE(ファイア)」という言葉を耳にしたことはありますか?「早期リタイア」を目指すというこのキーワードが昨今話題です。今回は、そんなFIREについて、ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんが解説してくれました。
夫が夢を語るようにFIREを提案してきたらどうしますか?(※写真はイメージです。以下同)
早期リタイアを目指すFIREって何?実現に必要なことやリスクを解説
突然ですが質問します。
パートナーが突然「FIREしたい!」と言ってきたら、あなたはどう反応しますか。諸手を挙げて賛成しますか、反対しますか。それとも「それおいしいの?」と聞きますか。若いご夫婦の中には「FIRE目指して頑張っています!」と、節約&貯蓄&投資をしている家計簿を見ることがあります。夫婦で共通の目標を持つと強いということがとてもよくわかります。ではそもそもFIREとはなんでしょうか?
●早期退職を目指す人たちが口にする「FIRE」の語源
FIREとは、Financial Independence Retire Early(経済的に自立し、早くリタイアする)の頭文字をつなげたアメリカ発祥の言葉で、日本でも徐々に話題になっています。
一般的な早期リタイアのイメージは、60歳定年を5年早く退職するといったイメージですが、このFIREは、30代、40代などそれよりも早いリタイアを目指すものです。リタイア後は自分の時間を大切にして自分らしい生活することを目標としています。
とても魅力的に思えるFIREですが、これは宝くじが当たったら早期リタイアするといったことでもありませんし、退職前よりも生活水準を上げるリッチなFIRE(Fat FIRE)でもありません。今、話題のFIERのポイントと注意点などを解説します。
●FIREにとって節約生活は必須条件
FIREを目指すためには、節約生活を継続させることが必須条件です。これはFIREを達成させた後でも継続させます。その理由は、手取りの収入から生活費と貯蓄・投資分を分けて、限られた生活費でやりくりする必要があるからです。できるだけ生活費を抑えることで、貯蓄・投資に回すことができるのです。
人生に大きなお金の貯めどきは3回あり、「独身時代」「夫婦共働きDINKS時代」「子どもが独立をして老後を迎えるまで」です。FIREを達成させるためには、この独身時代と夫婦共働き子どもなしのDINKS時代にどれだけ支出を減らし、資産を増やすかがカギとなります。
例えば、独身実家暮らしであれば収入の半分以上は貯蓄や投資に回すといったイメージです。
●FIREに必要な資産づくりは
FIREの目標金額は、年間の生活費の25倍の資産を築くことが望ましいとされています。年間の生活費が300万円なら7500万円が目標額になるでしょう。そして、この7500万円を資産運用しながら運用益と元本を引き出しながら生活します。7500万円を貯めるには、単純計算で年間300万円なら25年、500万円なら15年で達成することができるでしょう。
ただ貯蓄に回すだけではなく、お金にも働いてもらわなければいけません。貯蓄も必要ですが、メインは株や債券などに投資をする必要があります。しかし、投資には大なり小なりリスクが伴います。相場の状況によっては資産が目減りするリスクも考える必要があるでしょう。
また、30代や40代前半でFIREを達成させるためには、25倍以上の資産が必要となるでしょう。そして、それらの年代のライフイベントとして高額な出費が予定される住宅、教育費の問題もあります。その際、住宅ローンは完済もしくは相続した住宅や資産がある、子どもの教育費は貯め終わっている、もしくは子どもは持たないといった選択をして、固定費や教育費などがかからないといった条件が揃うとFIREの実現度も高くなるでしょう。
●好きな仕事をしながらFIREする人も
早期リタイアと矛盾しますが、退職後は好きな仕事(ライクワーク)をしながら収入を得て、自分の時間を優先しつつ空いた時間をパートタイム等で働きつつ、できるだけ元本を減らさないようにして生活をするセミリタイアもFIREの一つの形と言えます。完全リタイアで働かず、海や山など自然に囲まれた場所で自給自足に近い生活をして、できるだけ生活費を掛けないFIREの形もあるでしょう。
FIREの形はひとつではなく、柔軟性が必要であると考えます。この金額を貯めたから大丈夫ではなく、最低限のお金でも楽しく生活できる柔軟性と、お金が減ってきても悲観的にならずに何かしらの対策が打てる生活力や生命力の強さも求められます。
●FIREの意外な落とし穴
早期リタイアと聞けば、ただ生活費を稼ぐために働くライスワーカーにとっては魅力的な言葉かも知れませんし、早期リタイアを目指して日々の生活を頑張ることができるなら、それも一つの考え方でしょう。しかし焦るがあまりに、ハイリスクな投資に手を出して大やけどをしないように気をつけなければいけません。
そもそもFIREは一攫千金の夢物語ではなく、地道に家計の見直しをして無駄な出費はできるだけ減らし、浮いたお金を運用に回すなど、急がば回れのような生活です。自分が理解できない投資先や借金をしないとできない投資は避けるべきですし、自分でしっかりと勉強することも大切です。そして怪しげな情報商材やサロンへ足を踏み入れるのもおすすめしません。自分どころか先方のFIRE資金になるだけでしょう。
パートナーにFIREを目指そうと言われて、実際に共感できるかできないかはそれぞれの価値観によります。節約も投資運用もバッチリ! というカップルなら、ともにFIREを目標として一緒に頑張れるかと思います。
もし、懐疑的な場合は、パートナーが変な方向へ行かないか目を光らせる必要があるかも知れません。
●教えてくれた人
【丸山晴美さん】
節約アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザー。著書に『50代から知っておきたい! 年金生活の不安、解消します
』(共著、幻冬舎刊)などがある。新しい家計簿『節約家計ノート2022
』(東京新聞刊)は9月発売予定。オンラインコミュニティサロン「女性のための夢を叶える! お金の教室
」もスタート