【▲ 画像の左下に見えているガスと塵からなる峰のような構造がオリオンバーです。右上方に見えている若く巨大な恒星の集団トラペジウムが放つ紫外線によって形成されています(Credit: SCIENCE: NASA, ESA, Massimo Robberto (STScI, ESA), Hubble Space Telescope Orion Treasury Project Team IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI))】


NASAは5月19日、今年10月に予定されているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げに合わせて、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測対象の1つであるオリオンバーについての記事をアップしました。


■オリオンバーとは?

【▲ オリオンバーには4つのゾーンが含まれています(Credit: NASA, ESA, CSA, Pam Jeffries (STScI), PDRs4ALL ERS Team)】


オリオン座に位置するオリオン大星雲は地球から1300光年と少し離れたところにあります。若く巨大な恒星が活発に生まれていることでしられています。


オリオンバーはこのようなオリオン大星雲にあります。オリオン大星雲の中心にあるトラペジウムと呼ばれる若く巨大な恒星の集団が発する紫外線によってつくられています。


このようなオリオンバーには4つのゾーンが含まれています。


まず、トラペジウムから離れたところから、分子ゾーンです。ここでは水素を主成分とする星間ガスが分子の状態で存在しています。


次に、解離フロントです。ここでは、温度が上昇するにしたがって、星間ガスの分子が原子に分解されていきます。


続いて、電離フロントです。ここでは、温度が劇的に上昇するために、分解された原子が、さらに電子を剥ぎ取られて、電離していきます。


最後は、完全に電離した原子が電離水素領域に流れ込むゾーンです。


このようなオリオンバーは光解離領域と呼ばれています。


■なぜジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はオリオンバーを観測するの?

まず、絶好の位置(太陽と地球のラグランジュ点の1つ、L2)から、優れた感度と高い解像度で赤外線を観測できるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使って、比較的に近くにあるオリオンバーを観測することで、光解離領域に関する詳しいデータを蓄積し、より遠くにある銀河の光解離領域の観測を解釈するのに役立てることができます。


また、隕石の研究から私達の太陽系はオリオン大星雲によく似た場所で形成されたことが示唆されています。そのため、オリオンバーを詳しく調べることは、私達の太陽系形成のごく初期の段階についての理解を深めることにつながると考えられています。


ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、他にも、ファーストスターの探索や系外惑星の調査などもおこなう予定です。


今年、10月に予定されている打ち上げがとても楽しみですね。


 


Image Credit: SCIENCE: NASA, ESA, Massimo Robberto (STScI, ESA), Hubble Space Telescope Orion Treasury Project Team IMAGE PROCESSING: Alyssa Pagan (STScI)/NASA, ESA, CSA, Pam Jeffries (STScI), PDRs4ALL ERS Team
Source:NASA
文/飯銅重幸