日本人の4人に1人が罹患している花粉症。今回はそんな花粉症との付き合い方を改めてお伝えしていきます(写真:GrandJete/PIXTA)

花粉症は、現在日本人の4人に1人が罹患(りかん)している国民病のひとつです。この時期は少し買い物に出かけただけで1日中涙や鼻水が止まらない、またはずっと鼻や目がかゆく仕事に集中できずに、つらい思いをされている方も多いのではないでしょうか? 今回はそんな花粉症との付き合い方を改めてお伝えできればと思っています。

花粉症の原因・症状は?

花粉症はアレルギー性鼻炎のひとつであり、スギなら春、ブタクサなら秋と発症の季節が限定されるため、ダニ・ハウスダストなど通年性のものと比較して「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれます。


この連載の一覧はこちら

原因は親のアレルギー体質を受け継ぐことや長期間にわたって花粉を吸い込むこと、つまり遺伝と環境の両方が関わっていると言われていますが、まだ解明はされていません。

症状はくしゃみ、鼻詰まり、鼻水に加え、目や鼻のかゆみが特徴的です。症状が重いと頭痛や不眠のほか、耳や喉のかゆみを引き起こす場合もあります。くしゃみや鼻水は風邪の症状とも似ていますが、風邪では粘り気のある黄色・黄緑がかった鼻水が、花粉症ではサラサラした透明で水のような鼻水が出ることが区別のポイントです。

これらの症状は、吸い込んだ花粉を異物(=抗原)と認識した体内の免疫が過剰に反応し、アレルギー誘発物質が体内に放出された結果として起こります。従って、花粉症の治療には、身体にとっての異物である花粉と接する時間を極力短くすること、または薬などで体内の免疫を落ち着かせることが重要となります。

花粉症であれば花粉と接する機会を避ける、というのはごく当たり前のようですが、これは「抗原回避」と呼ばれ、さまざまなアレルギー性疾患の治療に用いられる用語です。

近年は新型コロナウイルス予防のために手洗いうがい、こまめな衣服の洗濯、帰宅してすぐの入浴をしていらっしゃる方も多いかと思います。これらはウイルスや細菌だけでなく、身体や衣服についた花粉を落とすうえでも大変有効です。もちろん外出時のマスク着用も花粉予防に効果があります。

また、花粉の飛びやすい日は極力外出を控えましょう。風の強い日や湿度が低い日のほか、雨の降った翌日はとくに花粉の飛散量が多い傾向にあります。ニュースのお天気コーナーでも地域ごとの飛散情報を取り上げていますので、翌日の花粉情報をチェックすることも大切です。室内では、洗濯物の部屋干しを心がけ、こまめに空気清浄機を使うと効果的です。花粉は湿度が高いと飛散しにくくなるため、加湿機能がついている空気清浄機があれば部屋の乾燥対策もかねてぜひ活用してください。

薬を飲み始める時期は?

体内の免疫を落ち着かせる方法としては花粉症の薬、すなわち抗アレルギー薬の内服が代表的です。薬を飲み始める時期は、体内の免疫がまだ活発でないとき、すなわち花粉が飛散し始める時期より少し前から飲むとよいとされています。

抗アレルギー薬としては、アレルギー反応によって放出され、花粉症の症状の原因となるヒスタミンという物質を抑える「抗ヒスタミン薬」が最もよく使われています。

花粉症の薬って眠くなるんでしょ?という声もよく聞かれますが、これは半分正しく、半分間違っているといえます。ヒスタミンは鼻では鼻水やくしゃみを、脳では覚醒・集中力を保つはたらきがあります。抗ヒスタミン薬はこれらの作用をブロックするため、確かに花粉症の症状を抑えると同時に、脳の覚醒を妨げ、強い眠気も引き起こしてしまいます。

しかし近年では、鼻には効くが脳内に薬の成分が行かないような改良をされています。このため、アレグラやクラリチンなど「第2世代抗ヒスタミン薬」と呼ばれるグループの薬は、眠気の心配も少なく、安心して使用することができます。

とはいえ、花粉症の重症度によって、すべての人に抗ヒスタミン薬が効くわけではありません。市販薬で効果がない場合は、一度耳鼻科医師の診察を受けて自分に合った薬を処方してもらうことが大切です。

なお、妊娠中の方はとくに薬に気を使っているかと思いますが、妊婦でも使える花粉症の薬は意外とあります。ただし、インターネットなどで使用OKと書かれていても必ず医師の許可をもらってから使用しましょう。内服薬が不安な方は、点眼薬や点鼻薬にすると副作用が少ないためより安心です。

花粉症を治す」舌下免疫療法

また、興味深いことに、近年では「花粉症を治す」治療が広まりつつあります。これは舌下免疫療法と呼ばれ、アレルギーの原因物質を少しずつ投与することで身体の免疫を慣らし、アレルギー反応を抑えるという治療です。

注射によって同様の治療を行う皮下免疫療法もありますが、舌下免疫療法は自宅で舌の裏に治療薬を貼り付ける方法なので、通院の回数が少ないことがメリットです。デメリットは、この治療法には即効性がなく、効果が出るまでに3〜5年かかる場合もある点です。

ただ一生花粉症と付き合っていくことを考えれば、数年頑張って治療する選択肢も十分にアリだと思います。スギ花粉に対する舌下免疫療法は、飛散以外の時期(6〜12月頃)に保険診療で行うことができるため、来シーズン以降に向けて検討してみてはいかがでしょうか。

毎年のことでつらい花粉症ですが、季節のおでかけを楽しむためにも予防や治療を正しく知り、上手に付き合っていきましょう。