「6人家族なら」「民度が…」麻生太郎氏コロナ禍“暴言”振り返る

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「会食だけ気を付けても話になりませんな。はい? 会食のやり方? 家族が多いところはどうするんです? 6人家族だったら。飯は一緒に食うなということ? あなたの意見ですか?」

12月18日の記者会見で、財務大臣兼副総理の麻生太郎氏(80)はこう言い放った。8人による“ステーキ忘年会”に菅義偉首相(71)も参加していたことを記者に問われての返答だ。

12月11日には政府の新型コロナ対策分科会が、会食は「なるべく普段から一緒にいる人と少人数で」「大人数、例えば5人以上の飲食は感染リスクが高まる」と注意を促していたばかり。

副総理でありながら政府の呼びかけを真っ向から否定し、“他人との会食”と“家族での食事”を同一視する詭弁に世の人は大いに呆れた。ツイッター上ではこんな指摘が。

《同居する家族6人でご飯を食べるのと、それぞれ家族を持っている6人の他人が集まって会食するのとで、感染拡大のリスクが同じわけないだろう》
《政府が呼び掛けてる「5人以上の会食は控えて下さいは」最初から他人同士の話なんだよ! 総理・政府要人がそれを侵した途端、言い訳に大家族を引っ張りだすとは呆れ返るほどの幼稚さ!》

「Go Toイート」では、一部の自治体で“原則4人以下”という利用制限を設けていたが、やはり同居家族は制限の対象外だった。結局、麻生氏は誰も同一視してこなかったものを無理矢理一緒にした挙句、菅首相の愚行を強引に相対化しようとしただけ。だが、そんな麻生氏の妄言に、記者会見に出席した記者からはツッコミが入ることはなかった――。

7年8カ月の長きにわたった安倍政権が幕を閉じ、菅政権が新たに始まった2020年。閣僚たちの顔ぶれも変わりゆくなか、一向に変わらなかったものもある。麻生氏の“暴言”“妄言”だ。コロナ禍での氏の発言を振り返る。

■「つまんないことを聞くねえ」

「つまんないこと聞くねえ。言われて聞くのかね? 上から言われてるわけ? かわいそうだねえ」(2月28日記者会見)

2月27日に突然決まった「休校要請」。子育て世帯から不安の声があがるなか、保育費用などにかかる臨時の出費を国が負担することが決まった。

だが、記者から「具体的なスキーム(仕組み)はこれから?」と問われた麻生氏は「こちらが最初においくらですよって決めているわけないでしょう」と答えた上で、「つまんないこと……」と言い放ったのだ。

「全額補償されるのか?」「補償範囲はどこまでなのか?」などの不安を抱えた親たちの神経を逆なでするような発言。「いや、休校要請を出す前にスキームくらい決めておけよ」と思った親も多いのではないか。

■「おたくの国とは民度が違う」

「『おたくとうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』と言って、みんな絶句して黙るんですけれども」(6月4日参議員財政金融委員会)

新型コロナによる死者数が欧米諸国より少ないことについて海外から問い合わせがあるとこう対応していると国会で明かした麻生氏。本当だったとしたら、“あなたの国の民度は日本より低い”と答えているに等しく、とても非礼な発言だ。相手が絶句するのも無理はない。

ちなみに人口あたりのコロナ死者数は、はっきりとわかっていない北朝鮮を除けば、日本が東アジアで最悪。麻生氏理論では東アジアで日本はもっとも民度が低い国ということになりそうだ。

■「お金に困っている方の数は少ない」

「お金に困っている方の数は少ない。ゼロではないですよ。困っておられる方もいらっしゃる。だが、現実問題として(10万円の特別定額給付金で)預金、貯金は増えた」(10月24日自身の政治資金パーティー)

コロナ禍で困窮する国民が多く、緊急性もあったために決まった一律10万円の給付。これで窮地を脱した人も少なくない。おそらく麻生氏は、日本銀行が9月18日に発表した4月〜6月期に家計貯蓄が増加したという統計を念頭に発言していたと思われる。確かにこの時点では、給与への影響がなく今後に備えて給付金を貯蓄に回したり、外出自粛で支出が減ったことで貯蓄が増えたりした人も一定数いたのだろう。

だが、多くの企業で給与やボーナスのカット、雇止めや解雇、早期退職の募集が行われていると伝えられているなか、日本の財政をつかさどる財務大臣として、あまりに現実を無視した発言だ。

今年はコロナと関係ないところでもこんな発言が……。1月には「2000年の長きにわたって、1つの民族、1つの王朝が続いているなんていう国は、ここしかない」と日本に住んできたマイノリティを完全に無視する発言をして、謝罪に追い込まれた。

さらに8月にはテレビ朝日の記者に、安倍晋三首相(当時)の健康不安説を問われて、「あの画像の映りの悪いテレビ朝日でも、(安倍首相は)顔色よく映ってたもんね。あれだろ? 無理して顔色よくして流したわけじゃないだろ? そんな技術もないだろうし」と発言して顰蹙を買った。その後、安倍首相は健康を理由に辞職している。衆議院議員の元秘書はこう語る。

「一部では、暴言を繰り返す理由を麻生氏が高齢であることに帰するむきもありますが、麻生さんが40代前半だったころにも『婦人に参政権を与えたのが最大の失敗』といって批判を受けていていますし、自分の政治家生命をかけた2008年の総裁選の最中に、前月に起きていた大豪雨について『安城や岡崎だったからいいけど』と発言して、謝罪に追い込まれてます。暴言癖は昔からですよ」

2019年には「(少子高齢化は)子どもを産まなかった方が問題なんだから」と語ったり、質問する記者に対して高圧的に「返事は?」「大きな声で!」「聞いてんだよ、俺が!」と詰め寄って批判を受けた。

一昨年には、財務事務次官のセクハラ問題について、「セクハラ罪っていう罪はないですよね」や「(被害女性にはめられたという)そういう可能性は否定できない」と発言している。麻生氏の“暴言”“妄言”は近年増えているような印象があるが……。

「党内はもちろん、テレビや新聞が厳しく批判しなくなったからでしょうね。記者クラブの記者へのパワハラ系の暴言が増えているのがその証拠です。そして暴言を“強さの表れ”と勘違いして、支持してくれる層が一定数いることも麻生さんはわかっているから、よっぽどのことでないと謝罪もしなくなりました。本人にも直すつもりもないし、周囲も厳しく言わないから、ますます増長するんでしょう」

今後も続きそうな麻生氏の“暴言”と“妄言”。有権者が許さなくさえなれば、止まるはずなのだが……。