Jリーグは現在、スタジアムで観戦可能な観客の数を1試合最大5000人に制限している。当初は8月1日からスタジアムの定員の半分まで拡大する方針でいたが、コロナ禍を取り巻く現況を踏まえ撤回。8月末までこのまま様子を見るとのことだが、見通しは明るくない。観客増より無観客試合に戻る可能性の方が高そうに見える。

 サッカーファンがスタンドで観戦しにくい状況は、まだしばらく続くわけだ。特効薬が世の中に行き渡るまでとすれば、少なくとも今シーズンは難しいだろう。こう言ってはなんだが、加入者が伸び悩んでいるとされるDAZNに、加入者を増やすチャンスが訪れている状態だ。

 Jリーグの観戦手段は現在、DAZNかNHKBSにほぼ限られている。サッカーファンはいつにも増して熱い視線を、それぞれの画面に傾けることになる。早い話が視聴者から期待されている状態にある。

 というわけで、この際、サッカー中継のあり方を見直してみてはどうだろうか。いまはそのいい機会だと思う。

 これまでサッカー中継は、90分とその前後何分間かを実況アナウンサーと解説者の2人のやりとりを軸に行われてきた。サッカーだけではない。他の競技もほぼ同じだ。野球のスタイルに倣っていると言うべきだろう。しかし、それぞれの競技にはそれぞれのコンセプトがある。サッカーと野球に至っては、本質がまったく違う。肝心要の守備と攻撃の概念に決定的な差がある。テレビ中継もそれぞれの競技の実情にあったスタイルを追究すべきだと言いたくなる。

 日本には、様々な競技を決まった視点で語ろうとする傾向がある。野球のコンセプトで、サッカーを語ろうとしたり、ラグビーのコンセプトでサッカーを語ろうとする。それぞれの競技の本質に迫ろうとせず、サッカーならサッカーを一般的なスポーツ論に置き換えて語ろうとする。テレビのワイドショーやスポーツニュースにありがちな話だが、競技毎で異なる個性に目が行き届かない状態にある。2度目の東京五輪を前にしても、だ。

 観戦法もしかり。それぞれの競技には、それぞれに相応しい観戦法がある。どのように目を傾ければ、その競技の魅力、サッカーの魅力は浮き彫りになるか。実況と解説の報じ方に、追究の甘さを垣間見ることができる。

 サッカー中継のスタイルは各国で違っている。それは海外に行けば即、理解できる。日本式の中継を省みるきっかけになる。サッカーの魅力はどちらの方があぶり出しやすいか。

 試合の前と後、プレビューとレビューに割く時間にも大きな違いがある。試合前が長く、試合後が短いのが日本だとすれば、試合前が短く、試合後が長いのが外国だ。検証に割く時間に大きな差がある。

 日本テレビのクラブW杯の中継がいい例だ。試合前、芸能人が登場し盛り上げ役を果たすのはいいが、それでいて終わりは異常に早い。番組は試合が終わるや即、終了。話す材料はいくらでもあるハズなのに。サッカーらしさに欠ける番組の作りになっている。

 DAZNは、テレビと違い、その後に別の番組が控えていることはない。お尻はたっぷりあるはずだ。だが女性リポーターが選手のインタビューを型通り終えると、番組は終了する。検証に時間を割いている様子はない。ハーフタイムも8割方、試合とは関係のない映像が流れている。前半の戦いの検証に時間を割いている様子はない。

 惜しいシーンを映像で紹介するほかは、両軍選手のアクチュアルフォーメーション(実際の布陣図)が、紹介される程度だ。そのアクチュアルフォーメーションにしても、試合終了後、どういうわけか、前後半を通したものは紹介されない。もちろんそれに基づく分析もない。審判の判定について検証する番組が存在するのはいいが、肝心の試合を分析する番組はない。