「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」仕掛け人に聞く – 本当のヒーローたちは身近にいる

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新型コロナウイルス感染症で、自粛やソーシャルディスタンスを確保する生活により、日本経済は大きな打撃を受けている。とくに飲食業界は、休業や時短営業などで、売上げが激減している店舗も多い。また医療機関でも、新型コロナウイルス感染症に対応する病院は負担増による収益悪化が懸念され、通常医療を行う病院や医院でも来院者の自粛による収入減による経営危機も起きている。

「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」は、こうした状況を踏まえて吉祥寺で立ち上がったプロジェクトだ。
学びに繋がる有料イベントを実施し、参加費のほとんどで飲食店から弁当を購入して医療関係者に届ける。参加者と飲食店、医療関係者を繋ぐことで、誰もが幸せになれる取り組みだ。

今回、仕掛け人であるBeYond Labo主宰の二川佳祐氏に話を聞いた。


■三方良しのプロジェクト
「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」は、吉祥寺で生まれたプロジェクトだ。
目的は、イベントを実施して得たお金を使用して吉祥寺エリアの飲食店や医療従事者を応援するというもの。

プロジェクトの概要は、
・参加者は、参加費を支払ってオンラインイベントに参加する
・参加費から必要経費を引いたものを「募金」とする
・主催者は「募金」を使い、飲食店で弁当などを購入する
・購入した商品を医療従事者に届ける
この仕組みは、参加者、飲食店、医療従事者のいずれにもメリットがある。


「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」の仕組み。


「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」の仕掛け人は、二川佳祐(ふたかわけいすけ)氏(34歳)。公立小学校教員で、毎朝3時起きを日課とする妻と娘を愛する二児の父親でもある。

共同主催者の中西信介氏とともに、BeYond Laboという学び場も運営している。BeYond Laboのモットーは、「大人が学びを楽しめば、子供も学びを楽しむ」だ。

「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」プロジェクトを立ち上げた経緯を聞いた。

二川佳祐氏
「吉祥寺が大好きだから、その吉祥寺を守るために何ができるか? 
それから最前線で頑張っている方たちにエールを送りたい。
自分なら何ができるか? 
そう考えたときに2年半運営してきたBeYond Laboの学びとコラボしていけばいいんだと閃きました。

学ぶことが誰かを支援することになる。
そんなことをBeYond Laboの中西さんと妄想して、有料イベントを実施して、講師謝礼を抜いたお金で吉祥寺のお店でご飯を頼む。
そのご飯を医療従事者に届けるこういうサイクルを回すことができるんじゃないかという仮説が生まれました。」

吉祥寺も、ほかの地域同様に多くの飲食店が経営の危機にさらされている。
吉祥寺の商店街は、地域住民にとっての日常製品を購入する場でもあることから外出の自粛要請がされている時期でも人は集まるが、飲食店は休業や時短営業だけでなく、来客数の激減で閉店に追い込まれつつある店舗が増えつつある。
予約がとれない老舗フランス料理店としても有名な「芙葉亭」も、2020年5月をもって33年の長い歴史に幕を閉じている。

窮地にある吉祥寺の飲食店を応援する動きも起きている。
吉祥寺ファンページでは、吉祥寺エリアの「テイクアウト・デリバリー情報一覧&マップ」が公開し、テイクアウトやデリバリーの利用を支援している。
また吉祥寺テレビジョンは、吉祥寺・三鷹エリアの「お持ち帰り王決定戦」という番組を提供し、テイクアウト対応をする飲食店の周知や応援をおこなっている。

こうした活動が展開される中、「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」も立ち上がった。


二川佳祐氏へのZoomによるインタビュー。



■たくさんのHEROとの出会い
二川佳祐氏の本業は、公立小学校教員だ。
緊急事態宣言で、学校は休校となっているが、外出自粛する生徒や学習など、いままでとは異なる対応を迫られており、忙しい日々を過ごしている。

かつてない状況の中、本業をこなしつつ、どのようにしてプロジェクト運用しているのだろう。

二川佳祐氏
「本業の仕事がない土日や平日の早朝などに進めています。
プロジェクトが決まってからは実行あるのみです。
そして以前からお願いしていた宮本恵理子さんのイベントに、このチャリティーのシステムを組み込むことをお願いすると快諾をいただきました。」

イベント告知サイト「Peatix」に「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」を告知するや否や、吉祥寺エリアの人の注目を集め、TwitterやFacebookで一気に広まったという。
協力者である公立小学校教員の庄子寛之氏は、
「はじめが肝心だから」
と、1000円チケットを何枚も購入してくれたそう。

結果として35名もの人が、今回のチャリティーやイベントに賛同し、イベントも無事に開催できた。


チャリティー券を購入すると、参加費の一部が「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」の募金となる。


二川佳祐氏
「吉祥寺でご協力いただけるお店と医療の方をお繋ぎし、無事マッチングできました。
お店は吉祥寺で今、足繁く通っている『dizzle』さん。
私が心底信頼しているAkihiro Hamanakaさんと金子海洋さんの最愛コンビのお店です。
さらに長年dizzleさんがご一緒されている和風ダイニング『旅』さんもご一緒してくれ、ケータリングを作ってくださいました。

医療は、以前からBeYond Laboに関わってくださった、Megumi Watabeさん。杉並にある医療現場で働いていらっしゃる方で、こちらも快く受けてくださいました。」
Megumi Watabe氏は、夜勤前にもかかわらず、「病院まで運びます」と快諾されたという。

プロジェクトを立ち上げたことで、人と人との繋がりも新たに生まれ、多くの協力者との繋がりができたからこそ、プロジェクトが成功に向かっていった。


飲食店で購入したものを医療従事者へ届ける当日のことをお聞きした。

二川佳祐氏
「当日、お昼休みを利用してお店に行くなり、なんとも豪華な料理が並んでいました。
京出汁の卵焼き、新じゃがの塩辛和え、ローストビーフサンドなど、美味しそうなご飯の数々です。

あまりの美味しそうな様子にその場で食べたくなるのをこらえ、医療従事者の渡部さんへ届けました。

今回の35名の支援者の皆様のお名前を載せさせていただいた手紙をお渡しすると、タイミングよく店内BGMには、マライアキャリーの『Hero』が流れ、渡部さんが手紙をじっと眺め涙ぐむ様子に、私も堪えきれずに泣きそうになるのを誤魔化しました。
その後、病院に運ぶ際には、渡部さんご本人が言ってくださったのですが、それに一緒に浜中さんも一緒に運んでくださいました。その行動力にも感動し、感謝しています。

そしてこの活動を通して、渡部さんとdizzleさんや旅さんに、一緒にプロジェクトを成し遂げた繋がりが生まれたことが一番の財産だろうと思っています。それこそが一番のこれからの支援になるんじゃないかなと思っています。 
こんな瞬間に立ち会えたことに本当に感謝しています。」

二川佳祐氏は、たくさんの人の思いがこもった料理や支援を繋ぐハブとして、携われたことに喜びを感じたそう。
多くのヒーローたちのおかげで、二川佳祐氏にとっても、生きていて良かったと思える最良の1日になったという。


ファイブグループの家中慶太氏が飲食店のスタッフから弁当を受け取る様子。



■「今、自分に何ができるか?」を自分に問いかける
二川佳祐氏にとっての吉祥寺とは、どんな街なのだろうか。

二川佳祐氏
「僕の青春でもあり、今の生活圏でもあり、これからもずっと付き合っていきたい、大切にしたい、親友のような街です。」


最後に今後の展開や新しいプロジェクトについて聞いてみた。

二川佳祐氏
「『むさしのオンラインしょうがっこう』というプロジェクトをしています。
小学生を対象に100人を超えるイベントです。
オンライン学習って散々言われていますけれど、なかなか抵抗がある方もいたり、体験したことがなかったりする人が多いのです。

なので楽しみながら気軽にできるようにしたいなと思って企画しています。
今後のコロナの状況次第で何か新しい動きが出てくるかもしれないと思いますが、常に『今』の連続だと思っています。
『今』、『自分に何ができるか?』 これを大切にしていきます。」


「むさしのオンラインしょうがっこう」という新しいプロジェクト。


「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」は、
吉祥寺を愛するたくさんの人たちの善意を繋ぐことで成功をおさめた。

本当のヒーローは、我々の身近なところにいる。
「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」は、そのことを気づかせてくれたプロジェクトでもあったと言えるだろう。

二川佳祐氏が興した「学びで吉祥寺も医療も支援しよう!」プロジェクトは、新型コロナウイルス感染症で不安で苦しい日々を過ごす人々や地域にとって、人の善意の繋がりが大きな救いになることを証明したと言えるだろう。

「学びで吉祥寺も医療も支援しよう」
BeYond Labo


ITライフハック 関口哲司