小規模事業者が大ピンチ。 コロナ後、働き方をどう変れればいいのか?/猪口 真
コロナによるビジネスへの影響が止まらない。
そして、多くの小規模事業者が大ピンチだ。特に、飲食や小売り、商業施設などにかかわる人たち、さらには観光や農業、建築とありとあらゆる業種で、すさまじいことが起きている。
もともと、小規模事業者は、減少傾向にある。
2019年度の小規模企業白書によれば、2016年の企業数としては、全国で約305万者(企業数全体の84.9%)、人数でいえば、約1044万人(労働者全体の22.3%)いる(1事業者約3人というところか)。
2016年現在の数値なので、おそらく現状はそこから10%ぐらい減少しているかもしれない。
どのくらい減少しているかといえば、2001年には、400万者数を超えていた(100万者以上減少!)。特にリーマンショック後の減少が半端なく、今回のコロナショックは、リーマンショックをはるかに超えると言われてもおり、信じられないほどの企業数の減少となる可能性が高い。
中規模企業が事業者数で半数近く占めていることを思えば、従業員数で見ても小規模事業者はやはりマイナーな存在だ。さらに、小規模企業は非正規労働者を抱えるところが多い。商工総合研究所の資料を見ると、100人以下の中小企業、小規模企業のほうが、非正規労働者の割合も高い。間違いなく、今回のコロナショックで、もっとも大きな被害を受ける。
さらに、小規模事業者は、今回、多くの自粛対象となっているような、現場で活躍する事業者が多い。産業別の比率を見ても、「卸売業,小売業」が21.9%を占めているのを始め、「宿泊業,飲食サービス業」が14.3%、「生活関連サービス業,娯楽業」が10.9%、となっており、これらだけでも6割になる。
自粛要請はないといえ、「製造業」が11.0%、「不動産業,物品賃貸業」が9.6%、「建設業」が13.4%、「医療・福祉」が4.5%、これらの事業者もほとんど仕事にはならないだろう。
大企業のオフィスワーカーのように、在宅勤務やテレワークで、定額の給料をもらえる人たちは、これ以外のわずかばかりの人たちしかいない。
コロナの影響による支援もないことはないが、持続化給付金にしても最大200万、雇用調整助成金にしても6月までの限定処置であり、また、いずれも仕事の補償ではなく、仕事がなくなったことへの補償でしかない。
これまで培ってきた実績やノウハウに対して、今回の仕打ちはあまりにも大きい。
小規模事業者として起業した人たちは、大きな組織に隷属しない生き方・働き方を選択した人たちが立ち上がった結果ではあるものの、コロナショックで、自分自身の働き方、ひいては生き方までを見つめなおす機会になった人は多いだろう。今日のような危機的状況に陥ると、やはり最初にしわ寄せがいくのは、例外なく弱者だ。
体力のある企業に属していれば、多少の賞与などの減少はあったとしても、大半の企業では身は保証される。
バブルのころは、小規模事業者の「社長さん」はうらやましがられたものだ。組織に縛られず、仕事も選べて、しかも高収入を得ていて、誰もが憧れた存在だった。
その状況が一変しようとしている。
まともな就職活動ができない就活生の意識にも変化が出ているという。昨今、大企業志向が強くなったと言われていたが、その傾向はさらに高まっているという。
こうしたことが起こると、この先、あえて大きな組織に隷属しない働き方・生き方を選択する人は出てくるのだろうか。
現時点では、在宅勤務を続けながら、なんとか踏ん張っているナレッジワーカーにしても、厳しい状況は続く。小規模事業者の強みは、臨機応変に立ち回れる身軽さと、フットワークの軽さ、スピードといったところだが、実は、現状、大半のナレッジワーカーがリモートワークを行っている状況では、意外にそのスピード感が発揮されにくいと感じる人は多いだろう。
身軽に臨機応変に、現場に近いところで仕事ができることを武器に、的確に現場のニーズをつかみ、仕事にしてきた人は多い。それが、現場に行くことがままならないのだ。
むしろ、大企業においては仕事ができる人とできない人が明確になり、「無駄な会議が減り、やるべきことに集中できる」「リモートワークでは難しいと思ったが意外に仕事できる」といった前向きな発言をする人も多い。リモートワークによって、大企業に多かった無駄な仕事が削減されているという側面もあるのだろう。
何もなかったかのような日常が戻るのは、間違いなく、相当先だろう。小規模事業者にとって厳しい道のりは続く。しかし、小規模事業者の個性によって、街や社会は成り立っているのも間違いないことだ。
この先を憂いてばかりでは何も始まらない。改めて自分の強みはどのように生かすべきなのか。どう変化させなければならないのか。大手企業が中心となっている枠組みのなかで、自分のポジションをどうつくっていくのか、改めて考え、すぐに判断しなければならない局面にきている。