“アベノマスク”をつける安倍晋三首相

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《御社のネットでも、布マスクを3300円で販売しておられたということを承知しています。そのような需要が十分にあるなかで、我々も2枚の配布をさせていただいたということでございます》

【写真】朝日新聞が販売した2枚3300円の“アサヒノマスク”

 4月17日の記者会見で、466億円が投じられる「全世帯への布マスク2枚の配布」についての質問に対し、「待ってました」とばかりに皮肉を込めて言い放った安倍晋三首相。この質問をした記者が所属する“御社”は、朝日新聞だ。

「安倍内閣に対して、一貫して“反安倍”の姿勢をとっているのが朝日新聞やテレビ朝日系の朝日グループです。特に朝日新聞は記者会見でも安倍首相と“対峙”することも多く見受けられます。首相も反撃のチャンスをうかがっていた矢先で見つけたのが、“3300円の布マスク”だったのでは?」(ワイドショースタッフ)

“アベノマスク”に対して“アサヒノマスク”

 この首相が言う「3300円の布マスク」というのが、

朝日新聞が運営する通販ショップで、2枚で3300円の布マスクを販売していたのです。これに対してネットでは、安倍首相の“アベノマスク”に対抗させるように“アサヒノマスク”と揶揄し始めました」(ネトニュース編集者)

 その『朝日新聞SHOP』は、現在は閉鎖されていて、問題の“アサヒノマスク”を購入することはできない。

「一見、高額に思える“アサヒノマスク”は朝日新聞が製造したものではなく、販売する場を提供していただけですね。製造企業が販売する、もともとの正規価格が2枚で3300円(税込み)なのです」(前出・ネットユース編集者)

 “アサヒノマスク”の製造元は、大阪府泉大津市で繊維製品の製造と販売を事業とする、創業103年の『大津毛織』。普段は毛布やタオルケット、敷きパッドなどの寝具を主に扱っている。

「泉大津市は同様の繊維製品を扱う企業が多い“繊維のまち”。新型コロナウイルスの影響でマスクが品薄になっている今、市と商工会が立ち上げたのが『泉大津マスクプロジェクト』なのです。市内の繊維に関わる7つの企業がそれぞれ、独自のマスクを開発、製造しているのです。大津毛織さんもその一つということです」(地方局ディレクター

 3月20日付の朝日新聞大阪版では、《マスク生産 繊維のまち結束》として同プロジェクトを掲載している。取材した製品を広く紹介したいのは、マスコミの“性”。通販サイトに採用したのもうなづけよう。

マスクの製造元に直撃すると

 では、安倍首相に“名指し”された大津毛織に話を聞いてみると、

「非常に驚いた、というのが一番です(苦笑)。(発言の影響で消費者から)そっぽを向かれるかもしれないですし、それはわかりません」

 首相“発言”に困惑するとともに、今後の影響を多少なり危惧しているようだ。2枚で3300円という価格に関しては、

「一部で“ぼったくり”などと言われていることも承知しています。見方は様々ですし、それは消費者様それそれが感じるところだと思います」(大津毛織担当者)

 それでも製品自体に対しては、

「クオリティ的にマスク相応のレベルに達している。そう自負しています。

 通常、日本で流通しているガーゼはほぼ、中国から輸入した生地から作られています。弊社の場合は、日本で生産したガーゼのみを使用し、毛羽立ちにくい特別な加工も施しています。ガーゼを長年取り扱ってきた経験上、ガーゼというのは柔らかいものの、毛羽立つという部分で懸念されがちです。が、その毛羽立ちを抑える加工を施し、またガーゼ素材は耐久性が劣っているという印象を解消する技術も取り入れています」(前出・担当者)

 同社では、マスク以外の製品にも、素材には日本製のガーゼや綿を使用し、製造を行っている。まさに、日本のまち企業が誇る“ものづくり”技術が詰まった「ジャパン・ブランド」なのだ。

「みなさんがどう考えられるかわかりませんが(笑)、私たちはこういう形でこだわって作ってはいます」(前出・担当者)

 通販ショップの商品紹介では、4層構造ながらも息苦しさも少なく、口紅の付着もしにくいという大津毛織製マスク。何よりも、洗濯が可能で150回も繰り返して使用できるというのだ。

「自社試験ではクリアしましたが公的機関による試験ではなく、数値を出している最中です。すでに弊社の社員数名が、毎日洗って繰り返し使用しての検証も行っています」(前出・担当者)

 例えば、1枚1650円のマスクを150回使ったとしたら、1回あたりの価格は11円の計算になる。

「マスク1枚の相場が70円〜90円とも言われていますから経済的と言えるでしょう。一方の配送が始まっている“アベノマスク”ですが、先駆けて14日から妊婦さんらに送られた布マスクに“不良品”があったことを厚生労働省が明らかにしました。清潔が第一であるはずのマスクに、次々と黄ばみなどの変色、髪の毛や虫の混入が報告されているのです。

 実はアベノマスクは、メーカーこそ国内でも製造はアジア地域で行われているものもある、という話もあります。特に全世帯への配布に合わせて急ピッチで作られたのでしょうし、不良品が混じったとしてもおかしくはないと思います。

 安倍首相は先の会見で、朝日新聞に一矢報いた気分なのでしょうが、もっと詳細に調べて、3300円のマスクは日本を支える“ものづくり企業の技術の結晶”だ、それこそ“地方創生の象徴”だ、ということを知っていれば指摘することはなかったでしょうね。発言は軽率だったのでは?」(全国紙記者)

現在もマスク製造が続けられて

 『朝日新聞SHOP』は閉鎖された現在も、大津毛織はマスクを製造し続けている。というのも、

「実は朝日新聞さんの通販サイトは、受注が多過ぎて閉めさせていただくことにしたのです。4月アタマごろの時点で受注が目一杯になってしまい、今はその受注分を納品するために昼夜問わず、土日も稼働して作っているという状況です。

 次の受注については、納品分が終わり次第考えたいと思っていますが、まだまだ製造が終わりません。ご注文されたお客様にはお待ちいただいている状況で、本当に申し訳なく思っております」(前出・担当者)

 安倍発言の“風評被害”も何のその、“本物”はしっかりと評価されているのだ。