2021年卒の就職人気ランキング。初めて伊藤忠商事が1位に。

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2021年卒生を対象に実施した「就職人気ランキング」。伊藤忠商事が初めてトップとなった (撮影:梅谷秀司)

就活どころではない」。新型コロナウイルスの感染拡大が急速に進むにつれて、学生からはそんな声が聞かれるようになっている。

一方、企業側も、採用活動をいったん中止し、スケジュールを見直しているところが多い。Webでの会社説明会や面接では限界があるし、そもそも社内の感染拡大防止対策やBCP(事業継続計画)を優先させる必要がある。4月入社の新入社員を当面、自宅待機させているところもあり、正直「新卒採用どころではない」というのが本音だろう。


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新型コロナウイルスの影響がいつまで続くかにもよるが、就職活動の長期化は避けられないだろう。2020年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される前提で、採用スケジュールの前倒しが見られたが、1年間延期になったことで、その後の予定にも余裕が生じていることも大きい。また、景気後退が確実視される中、企業が採用計画を見直す可能性がある。就職環境は一転して学生に有利な売り手市場から、買い手市場になるかもしれない。

不透明感漂う就活環境

就活が混迷する中、学生はどういった企業に注目しているのか? 文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所では毎年、就活生に興味を持っている企業を尋ねる「就職ブランドランキング調査」を実施し、定期的に発表している。その結果からも、新型コロナウイルスの影響が垣間見られる。

調査対象者は、就職サイト「ブンナビ!」に登録する現在就活中(2021年春卒業予定)の大学生や大学院生で、登録者のうち、大学名を問わず2万4000人以上が回答している。調査期間は2019年10月1日から2020年3月15日まで。「前半」とあるのは、同調査が年に2回実施されているからで、調査をあこがれやイメージが強い就活の「前半」と、実際の説明会や面接を経た「後半」とをわけて傾向の違いを分析している。

結果を見ていこう。1位は大手総合商社の一角、伊藤忠商事が入った。前回(2020年卒生・前半)のランキングでは6位だったが、一気に首位に輝いた。このランキングでトップになるのは初めてだ。男子学生のランキングでは前回に引き続きトップになったが、女子学生のランキングでも2位に入り、男女問わず人気が浸透する結果になっている。

伊藤忠商事で働く人に焦点をあてたコーポレート広告やテレビCMを多く流しており、その効果などで就活生の注目度も高まっている。また、2020年は入社式を行えなかったものの、社長自ら新入社員を玄関で出迎えるというイベントを実施した。そこからも新卒をはじめ社員を大事にする姿勢が伺える。

2位は全日本空輸(ANA)となった。前回と前々回(2019年卒・前半)でトップ、2019年の6〜9月に実施した2021年卒の速報版のランキングでも1位をキープしていたが、今回は首位から陥落した。投票期間は3月半ばまでだったが、新型コロナウイルスの流行拡大に伴う業績の急減速懸念が影響したと思われる。なお、女子のランキングでは引き続き1位をキープしている。

同様に、運輸業界のランキングの落ち込みが大きかった。同じエアライン大手の日本航空(JAL)は、10位と前回の3位から後退。鉄道も東日本旅客鉄道(JR東日本)が19位から28位、東海旅客鉄道(JR東海)が28位から92位と大きく落ち込んでいる。

銀行以外の金融の人気は顕著

3位は日本生命保険。前回の4位からワンランク順位をあげた。銀行以外の金融の人気は堅調で、トップ10内には4位大和証券グループ、9位損害保険ジャパンと3社が入っている。

一方、採用数の削減によって人気がダウンしていたメガバンクは、みずほフィナンシャルグループが前回の7位から15位にダウン、三菱UFJ銀行も12位から33位、三井住友銀行も30位から42位にそれぞれ順位を下げている。ただ、26位の三井住友信託銀行など順位を大きく上げている銀行もあり、今後は採用姿勢などによって銀行間で人気が二極化する可能性もあるかもしれない。

5位は明治グループ(明治・Meiji Seika ファルマ)。前回の2位からはダウンしているが、引き続き理系のトップを維持するなど、高い人気を誇っている。6位は博報堂/博報堂DYメディアパートナーズで、久々に広告代理店がトップ10圏内に入ってきている。7位丸紅、8位大日本印刷と続く。

11位以下を見ると、金融が多く上位ランクインしているほか、商社や広告代理店などの存在が目立つ。AIやビッグデータが注目される中、17位Sky(前回21位)、34位NTTデータ(前回79位)などシステム系の会社の人気がじわりと上がっている。







■調査について
調査主体:文化放送キャリアパートナーズ 就職情報研究所
調査対象:2021年春入社希望の「ブンナビ!」会員(現大学4年生、現大学院2年生)
調査方法:文化放送キャリアパートナーズ運営の就職サイト「ブンナビ!」上でのWebアンケート、文化放送キャリアパートナーズ主催の就職イベント会場での紙アンケート、文化放送キャリアパートナーズ就職雑誌同送ハガキアンケート
*投票者1名が最大5票を有し、志望企業を1位から5位まで選択する形式

調査期間:2019年10月1日〜2020年3月15日
回答数:24742(うち男子9578・女子15164/文系21131・理系3611)
総得票数:69599票
「就職」を重視する学生は「企業イメージ(企業価値)」よりも「仕事イメージ(仕事価値)」に重点を置くとの仮説の下で、ランキングを算出。
就職者誘引度は、学生が企業イメージと仕事イメージのどちらを企業選択時に重視したかという回答によって算出。企業イメージのみで投票した場合は就職者誘引度0、仕事イメージのみで投票した場合は100とし、得票平均値を就職者誘引度としている。
総得票数×就職者誘引度=就職ブランド力とし、就職ブランド力を基にランクを計算。

社名はアンケート上の名称で、1採用窓口=1社名を基準にしている。社名変更等で調査時の社名と異なる場合がある。グループで採用が一本化されている場合は「○○グループ」等で表記。