2019年度「駅と電車内の迷惑行為ランキング」1位は「座席の座り方」だった。最近の車両は1人ずつのスペースがはっきりするよう区分した形が増えている(撮影:山内信也)

電車内における迷惑行為の順位が大きく変わった。

全国の私鉄が加盟する日本民営鉄道協会(民鉄協)は「駅と電車内の迷惑行為ランキング」を毎年発表している。12月19日に発表した2019年度の最新ランキングによれば、1位は「座席の座り方」。2位は「乗降時のマナー」という結果だった。

昨年度に1位だった、背負いリュックなどの「荷物の持ち方・置き方」は3位に後退した。

民鉄協・総務広報部次長の日高義文氏は、荷物の置き方が1位から陥落した理由について、「1位から3位までは僅差だったので、社会状況の急激な変化があったとは思わない」としつつも、「荷物の持ち方がマナーとして認識されるようになってきたのではないか」とみる。背負ったリュックは抱きかかえるよう呼びかけるなどの鉄道会社の啓蒙活動が奏功しているしるしともいえる。

常に上位の「座り方」

1位の「座席の座り方」は、過去10年間でもつねに上位を占めている。なかでも、「座席を詰めて座らない」という行為が「もっとも迷惑だ」という割合が高い。「座りながら足を伸ばす・組む」という行為がそれに続く。

鉄道各社はロングシートの幅を少し長くして隣の乗客とぶつからないようにしたり、シートの色分け、仕切り、あるいは座面にへこみを設けるバケットシート化したりするなどの対策を講じているが、アンケートの結果を見る限りでは、思うような改善効果は出ていない。

こうした対応がされているのは最近製造された車両に多いので、古い車両から新型車両への置き換えが進まないと、座席の座り方はいつまでも上位にとどまり続けることになる。

2位の乗降時のマナーは2010〜2018年度までは3〜5位に位置していたが、今年になって順位を上げた。扉付近から動かず乗降を妨げる、奥に詰めない、降りる人を待たずに乗り込むなどの行為が「最も迷惑」とされている。

一方で、2010〜2017年度に1位、2018年度に2位だった「騒々しい会話・はしゃぎまわり」は今回5位に。

「そもそも会話をしている当人同士は自分たちの声が周囲の迷惑になっていることに気づいていないことが多い」(民鉄協)。また、「騒々しい会話」のレベルは車内の混雑状態によって変わってくるため、乗務員が注意しにくい部分もある。そのため、鉄道各社が有効な手だてを講じることができていないとされていた。

にもかかわらずの今回の順位変動。何らかの対策が施された結果かとも思ったが、そうでもないらしい。民鉄協では「分析が必要」としている。

注目したいのは、今回あらたに設問に加わった、「周囲に配慮せずせきやくしゃみをする」が6位にランクインしたことだ。風邪をひいていなくても、思わずくしゃみが出たら周囲の乗客から白い目で見られたという経験がある人は少なくないだろう。

せきやくしゃみの飛沫は最長で4m飛ぶという研究結果もあるという。満員電車でウィルスが飛散したらひとたまりもない。危ないと思ったらマスクをするといったマナーが普及するとよいのだが。

化粧やヘッドホンは年々ランクダウン

7位以下の「ヘッドホンからの音もれ」「ゴミ・空き缶等の放置」「電車の床に座る」「決められた場所以外での喫煙」などは2010〜2019年度の10年間で少しずつ順位を下げている。「周囲の乗客が不快だと思う行為は、気をつけるべきマナーとして意識されるようになっていくのだろう」と日高氏は考えている。

17位は「混雑した車内で新聞・雑誌等を読む」。過去10年間では2015年度に13位につけたこともあった。これはマナーが定着したというよりも、電車内で新聞や雑誌を読む人が減ったということだろう。遠くない将来、ランキングからこの項目がなくなる日が来ても不思議はない。

地域別ランキングも同時に発表されている。結果は次のとおりだ。

【関東】
1位 座席の座り方
2位 スマートフォン等の使い方
3位 乗降時のマナー
4位 荷物の持ち方・置き方
5位 騒々しい会話・はしゃぎまわり

【関西】
1位 座席の座り方
2位 荷物の持ち方・置き方
3位 乗降時のマナー
4位 騒々しい会話・はしゃぎまわり
5位 スマートフォン等の使い方

関東・関西とも1位が座席の座り方というのは共通しているが、関東の2位が混雑時の歩きスマホなど「スマートフォン等の使い方」、関西の2位が荷物の持ち方・置き方というのは興味深い。土地柄の違いによるものなのだろうか。機会があればその理由をぜひ分析してみたい。