Facebookは11月14日、今年で2回目となる「Facebook Video Summit」をニューヨークで開催した。同社にとっては、2年前の2017年にローンチし、2018年に世界展開を開始した動画プラットフォームFacebook Watch(ウォッチ)向けに番組を制作しているクリエイターと交流を深める機会だ。

Facebookのクリエイターならびにパブリッシャーエクスペリエンス部門を率いるジェフ・バークランド氏は、会場に集まった200人を超すクリエイターとパブリッシャーを前に、同社はこれからFacebook Watchをますますオーディエンスに人気の動画プラットフォームに育て、同時にクリエイターがFacebookと仕事をしやすい環境を整え、配信とマネタイズを向上させることに優先的に取り組むと語った。

「我々がFacebookで構築しようとしているのは、ほかとは明確に異なる動画プラットフォームだ」とバークランド氏は述べた。「Facebook上に動画をまき散らすだけの動画ライブラリーではない。ほかと違っていて、活気があって、特性がある」。バークランド氏によると、Facebook Watchの動画に対するアプローチは「アクティブ」であり、Facebookは同プラットフォームを「体験の共有と帰属意識を通じて人々をつなぐ」手段と見なしているという。そして会場にいるクリエイターに向かって、同氏は呼びかけた。「我々はスペシャルなものを構築しようとしていて、それはみなさんの助けなしには実現できない」。

「行動が伴っていない」

Facebookはこれまで、Watchを信頼できる収入源と位置付けることで、クリエイターを獲得しようとしてきた。同社は今年に入り、インフルエンサー主演のパブリッシャー番組に出資するプログラムも立ち上げている。

しかし、こうした努力にもかかわらず、一部のクリエイターからは、技術的なトラブルやFacebookからのコミュニケーション不足に不満の声も聞かれる。また非常に気がかりな点として、FacebookがWatchを動画プラットフォームとして十分に成長させておらず、YouTubeその他のプラットフォームに留まっていられる自分たちに、あえてWatchでビジネスを構築しようという気にさせる要素が足りないことを指摘する声もある。

「彼らがFacebook Watchについて話すことには、行動が伴っていないように感じる」と、アイプロスペクト(iProspect)のバイスプレジデントで、ソーシャルメディア部門のトップも務めるジョーダン・ジェイコブソン氏はいう。「彼らはWatchをスケーラブルな、同じ分野の競合たちに匹敵するプラットフォームにする気があるのだろうか」。

Facebookによると、2019年6月時点で、Watchを1分以上視聴する人の数は月間で7億2000万人、1日に1億4000万人にのぼる。1日の平均視聴時間は26分を超えるという。なお、インスタグラム(Instagram)やワッツアップ(WhatsApp)を含めたFacebookの全ブランドを合計したグローバルユーザー数は28億人にのぼる。

ゲームチェンジャーの可能性

米DIGIDAYは、今回のサミットに出席したクリエイター4人に、Facebook Watchでコンテンツをパブリッシュすることについて、それぞれの感想を聞いた。彼らによると、「クリエイター・スタジオ(Creator Studio)」のツールが強化されたおかげで、誰が自分たちのコンテンツを視聴しているかを把握しやすくなり、コンテンツを修正または開発してエンゲージメントの向上を図れるようになっているという。なかでもトラフィックソースの効果は大きかった。

「画期的なツールだ。自分たちのオーディエンスを知るという面からだけでなく、我々がそれをどのように使ってラーニングしはじめるか、さまざまなトラフィックソースがどのように機能するのか、Facebookの理解を助けることができる」と、FBEのプレジデント兼共同創業者のラフィ・ファイン氏は話す。

これまで3本の番組をFacebook Watchにライセンスして販売した別のパブリッシャーは、次のように語った。「以前は彼らが教えてくれる内容はあまり役に立たなかった。どちらかというと中身のないものだった。しかしいまでは、クリエイター・スタジオのおかげで実のあるインサイトをツールから得ることができ、コンテンツや配信に関する決定を下すうえで実際に役立っている」。

得られたデータで最適化

主にFacebook、YouTube、インスタグラム(Instagram)、Twitterで動画コンテンツをパブリッシュしているコメディアンのトレイ・ケネディ氏は、オーディエンスリテンションなどのアナリティクスを見ることが、コンテンツ制作に影響を与えたという。

「米国の内陸部、特に南部の地域にたくさんのオーディエンスがいることに気づいた」と、ケネディ氏は話す。この情報に基づき、「Southern Sayings」(南部のことわざ)動画を制作したところ、「非常に良いパフォーマンスを得られた」という。

ブログ「I Am Baker」のアマンダ・レトキ氏は、以前はコンテンツのシェア数にばかり注目していたが、Facebookアナリティクスのおかげで、コンテンツがどこでどのようにシェアされているかという情報も、特にエンゲージメントの面で重要であることがわかったという。たとえばコンテンツがフォロワー数の多いグループにシェアされると、エンゲージメントに向上効果がみられた。

Watch向けに再編集

Facebook Watchが進化し成熟していくのにつれて、クリエイターやパブリッシャーの側も、コンテンツの制作手法をWatchに合わせて変えつつある。

ケネディ氏は、以前は主にIGTVに1分の動画を投稿していたが、Watchにコンテンツを配信し始めた際、最低3分の動画を制作しなくてはならなくなった。以前より時間とリソースはかかるが、それでも収入面ではペイするという。

「最初は及び腰だったが、20時間あまりを動画制作に費やすだけの価値はある。より手間をかけているだけあってコンテンツの質は上がったし、前より良いブランド契約を得られている」と、ケネディ氏は話す。「おかげで状況が大きく一変した」。

レトキ氏によれば、IGTVなどほかのプラットフォームでも、より長尺の動画コンテンツが可能になってきており、たとえばIGTV向けには1分バージョン、インスタグラムのフィード向けには10秒、Watch向けにはノーカット版というように、以前ほど多くの編集作業をしなくて済むようになったという。レトキ氏は主に、ピンタレスト(Pinterest)、Facebook、インスタグラム向けに動画を投稿している。

マネタイズ面でも好印象

前出のパブリッシャーは、2020年にはWatch向けコンテンツの適切な場所に広告を挿入することに、これまで以上のリソースを投じる計画だという。

Watchにおけるマネタイズ面に関して、話を聞いたクリエイターたちは、まったく問題ないと答えた。

「私の場合は、収入面で状況が一変した」と、ケネディ氏は述べている。

ファイン氏は、自分を含めたパブリッシャーやクリエイターは、動画コンテンツのマネタイズに関して、ほんの数年前とはすでに異なるアプローチをとっていると話す。動画のなかで広告を流すだけではもう不十分なのだ。

「それはもはや我々が追い求める大きな目標ではない」と、ファイン氏はいう。「オーディエンスが本当に何を求めているのか、いかにして優れたコミュニティ向けに優れたコンテンツを構築し、また、優れたコマース要素を備えることで、それを持続可能なビジネスモデルとし、コンテンツを作り続けられるようにするかが重要だ」。

十分な情報を提供も

もうひとつ、クリエイターやパブリッシャーのコミュニティが常に十分な情報を提供されることも非常に重要だと、今回話を聞いたクリエイターたちは述べている。

ケネディ氏は、サービス終了したVine(ヴァイン)で人気クリエイターの1人であったにもかかわらず、同プラットフォームのスタッフからメールで連絡が来ることはほとんどなかったという。

レトキ氏は、Facebook Watchは自身にとって間違いなく最大のプラットフォームだが、何らかの変更、特に、人々が自身のコンテンツにアクセスする方法に影響を与えるアルゴリズムの変更について、Facebookは常に十分な情報を提供してくれると話す。

「それに私の場合、長期戦のつもりで取り組んでいるというのもある」と、レトキ氏はいう。「たしかに、アルゴリズムにちょっとした変更はあるが、でもそれは結局のところFacebookが、人々のコンテンツの消費方法が変化していることを見極めているということだ。それについて理解を深めれば、そこからより良質なコンテンツを作り出すことが可能になる」。

いまはまだ認知の段階

FacebookがWatchをさらなる人気プラットフォームに押し上げ、ユーザー認知を高めようとしていると思うか尋ねると、クリエイターたちは、Facebookはまさにそれを目指していると思うが、実際にそうなるかどうかはわからないと答えた。

「彼らの戦略は、FacebookをYouTubeやさらにはHBOなどとも競合する、優れた動画番組のプラットフォームにすることだと私には見えるが、それを考えたとき、はたして実現するのだろうか、という疑問はある」と、レトキ氏は述べた。「当のFacebookにもまだわかっていないのだろうが、それでも私は正しい試みだと思うし、少なくとも来年はもっと彼らと仕事をするつもりなので楽しみにしている」。

Facebookの北米ニュースパートナーシップ担当ディレクターのジェイソン・ホワイト氏は、FacebookがWatchで取り組んでいることは、「小規模クリエイターがオーディエンスとビジネスの構築を始められる場所」になると同時に、「パブリッシャーがオーディエンスとコミュニティを発見できる」場所になることだと話す。その両方にアピールすることを意図しているが、それでもWatchは「大規模で予算をかけた制作物やサブスクリプションモデル」を目指しているわけではなく、ストリーミング戦争に直接参戦するつもりはないと、ホワイト氏は述べている。

「少し時間が必要だ」

それでも、Watchの認知度を高め、定番の動画プラットフォームに育てることは、「Facebookにとって最大の難関だ」と、ファイン氏は指摘する。

「現在のFacebookのやり方なら、多くの人の目に触れさせることはできるだろうが、それでも、人々が特定の番組、特定の種類のコンテンツを目当てにたびたび訪れるような動画プラットフォームにするためには、その方法を見つけ出さなくてはならない」と、ファイン氏は述べた。「それをものにするまで、彼らはあきらめないだろう。ただ少し時間が必要だ」。

Deanna Ting(原文 / 訳:ガリレオ)