2020年7月から9月にかけて行われる東京五輪・パラリンピック(以下、東京五輪)では、開催都市である東京だけにとどまらず、全国への経済波及効果が期待されている。加えて、さらなるスポーツ振興や世界に先駆けた新エネルギー活用に向けた取り組みなど、さまざまな好影響をもたらすと言われている。一方、大会期間中は輸送障害の発生やサイバーテロの増加など、企業にとって弊害となる事象も想定される。

そこで、帝国データバンクは、東京五輪に関する企業の見解について調査を実施した。なお、東京五輪に関する調査は、2013年10月、2016年5月に続いて、今回で3回目である。

企業の15.0%が業績に「プラスの影響」、東京都では21.4%

東京五輪開催が自社の業績へ与える影響について、「プラスの影響」が15.0%、「マイナスの影響」が10.5%となった。他方、半数を超える企業で「影響はない」と認識していた。

「プラスの影響」を地域別にみると、『南関東』が19.9%で最も高く、また、開催都市である「東京」は21.4%となった。

従業員数別では、「1000人超」は企業の37.9%で「プラスの影響」があると認識している一方、「5人以下」では11.0%と、従業員規模が小さいほど割合が低い結果となった。

業界別では、旅館などの『サービス』が17.5%でトップ。『金融』(16.8%)、『運輸・倉庫』(15.8%)が続いた。『運輸・倉庫』においては、「マイナスの影響」が「プラスの影響」を5.1ポイント上回った。「都内の交通規制や混雑のため通常配送ができない。そのため、時間外労働の増加や配送荷物の遅延が想定される」(一般貨物自動車運送)といった声が聞かれた。

五輪期間中の働き方、「通常どおり」が半数超え

東京五輪期間中の働き方について、企業の半数以上(51.9%)が「通常どおりの勤務」と考えていることがわかった(複数回答、以下同)。また、「現時点で検討していない」は25.9%となった。五輪期間中に通常と異なる働き方を検討している企業は少なく、多くの企業で五輪期間中も通常どおりの働き方を継続する様子がうかがえる。

一方「東京」では、「通常どおりの勤務」は35.2%で3分の1程度となり、また1割を超える企業で「五輪期間中の休暇を設定」や、時差通勤など「出社時間の変更」を検討していた。

半数近くが日本の持続的成長に有効と認識する一方、開催後の景気後退を危惧する声も

本の持続的な経済成長に対する東京五輪の有効性については、「(有効だと)思う」とした企業が半数近くの46.8%、「(有効だと)思わない」は27.0%となった。

「スポーツクラブにとっては、東京五輪をきっかけに会員数の増加が期待できる」(フィットネスクラブ)など恩恵を受けるなどの声があがった。一方で、「最近、多くの経営層との会話では五輪開催後のマイナス景気が話題となる」(文房具・事務用品卸売)といった五輪開催後の景気後退を危惧する声や、「一時的な成長は当然あるが、前回のようなインフラ整備等のレガシーはそれほど見込めない」(一般電気工事)など、持続的な経済成長に懐疑的な意見もみられた。

レガシーを生かして日本経済の持続的成長へ

回の調査では、業績へのプラスの影響があると認識している企業は15.0%にとどまった。しかし、開催決定後の2013年から2019年までの7年間で東京五輪関連の売上額は平均4億1981万円となっており、「東京」を中心として全国各地に経済的な効果が表れている。

日本経済の持続的な成長のためにも関連施設などが負の遺産とならないよう、レガシーを生かしていく必要があろう。また、政府には、東京五輪後における景気浮揚策が期待される。

調査概要
調査対象企業:2万3731社
有効回答企業:1万113社(回答率42.6%)
調査期間:2019年10月17日〜31日
調査方法:インターネット調査