2018年10月から自動車の「地方版図柄入りナンバープレート」が導入されていますが、その源流となるのが原付のナンバープレート。市区町村ごとに絵柄も形も個性的なものが生まれていますが、そこには法律も関係しています。

全市区町村の3分の1が導入

 自動車用の「地域版図柄入りナンバー」が2018年10月に41地域で導入され、2020年には新たに17地域が加わる予定です。このような特別デザインのナンバープレートは、排気量125cc以下の原付用では2000年代から存在。日本経済研究所(東京都千代田区)によると、交付を終了した自治体を含む導入済みの市区町村は、2019年10月現在で600弱を数え、全市区町村のおよそ3分の1に上っています。


東京都府中市が2014年から2015年にかけ交付した原付ナンバープレート。板垣恵介さんの漫画『刃牙道』のキャラクターが描かれる(画像:府中市)。

 原付用のデザインナンバープレートは、プレートの形なども市区町村ごとに異なり、基本的にプレートの形や記載事項の配置などを変えない自動車用と比べて、個性的なものが数多く見られます。

 その始まりは2006(平成18)年、通常のナンバープレートに「NARITA」の文字を追加した千葉県成田市のものでした。これに続いて2007(平成19)年に導入された愛媛県松山市のものは、司馬遼太郎さんの小説『坂の上の雲』の舞台であることにちなんで、雲形のプレートが採用されています。

 図柄の多くは、自治体のキャラクターやランドマーク、特産物などをあしらったものですが、なかには奇抜なものも。たとえば、漫画家の板垣恵介さんによるデザインで、漫画『刃牙道』(『グラップラー刃牙』シリーズ)の登場キャラクターを大きくあしらった、東京都府中市のものなどが挙げられるでしょう。これは2014年に府中市の市制施行60周年を記念して、600枚限定で交付されました。

原付のナンバープレート、なぜここまで自由なのか?

 自動車用のそれとは異なり、原付用のデザインナンバープレートは、記載事項の文字や数字の書体、配置なども様々です。なぜここまで自由にデザインできるのでしょうか。

 原付用「ご当地プレート」の情報を取りまとめて発信している前出の日本経済研究所によると、原付のナンバープレートは自動車用のそれとは違い道路運送車両法に基づかず、地方税法に基づき「市区町村へ税金を納めた証」として交付されるもの。このため、市区町村が自由にデザインを決めることができ、運輸当局のチェックも基本的に入らないのだそうです。


千葉市が2013年から限定で交付した原付用ナンバープレート(50cc以下)。千葉ロッテマリーンズのキャラクターと野球ボールがモチーフ(2016年12月、中島洋平撮影)。

「特に2012(平成22)年から2015年ごろにかけ、市町村合併10周年の記念事業などで予算を組み、ご当地プレートを導入する地域が増えました。以前は外部のデザイナーを起用することも多かったのですが、近年は子どもの自由研究や、高校、大学の授業の一環としてデザインを募集するケースが多くなっています」(日本経済研究所)

 日本経済研究所によると、自治体の宣伝というよりも、街への愛着心をはぐくみ、政治への参加を促す目的でデザインを公募して導入するケースが多いといい、「隣の自治体が導入したから、うちも」といった感じで広まっているそうです。