輸出企業の割合が高い4カ国・地域

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「アジア」向け輸出は8割、国・地域別では「中国」が最高の33.8%を占める

 帝国データバンクが保有するデータベースから判明した製品やサービスを直接・間接的な輸出を行う企業全約3万5千社のうち、取引先企業の所在地などから具体的な輸出先国・地域が判明した約1万2千社を対象に分析・集計した結果、輸出地域として最も割合が高かったのは「アジア」(80.3%)で、全輸出企業のうち約8割がアジア地域を対象としていた。以下、「北米」(26.7%)、「欧州」(19.6%)、「中東」(3.4%)、「大洋州」(3.3%)、「中南米」(3.1%)の順。最も低いのは「アフリカ」(1.5%)だった。

 国・地域別では、「中国」が最も多く33.8%。以下、「米国」(25.8%)、「韓国」(20.2%)、「台湾」(18.0%)、「タイ」(12.3%)、「香港」(12.1%)、「シンガポール」(8.0%)の順。上位20のうちアジア域内の国・地域は11に上った。

《主要地域への輸出状況》
■アジア
▽中国(中華人民共和国)
輸出企業の主な業種は、「卸売」(45.7%)や「製造」(45.3%)など
輸出相手企業は、日本企業の現地法人や製造拠点向けのほか、アリババグループなどIT企業、東風汽車など現地自動車メーカーなど

▽韓国(大韓民国)
輸出企業の主な業種は、「製造」(47.7%)や「卸売」(44.2%)など
輸出相手企業は現代グループ、電機大手のサムスングループ、LGグループなど

■ 北米
▽米国(アメリカ合衆国)
輸出企業の主な業種は、「製造」(58.2%)や「卸売」(31.8%)など
輸出相手企業は、iPhoneをはじめデジタル家電の開発・販売を手がけるアップルやインテルなどのIT企業、航空機メーカーのボーイングや自動車メーカーなど

■ 欧州
▽ドイツ
輸出企業の主な業種は、「製造」(60.8%)、「卸売」(31.9%)など
輸出相手企業は、フォルクスワーゲンやボッシュなど自動車産業のほか、世界最大の総合化学メーカーであるBASFなど

複数国輸出の企業では、米中両国を軸に海外輸出事業を展開

 2カ国以上の複数国・地域への輸出が判明した企業は、輸出企業の42.5%を占めた。このうち輸出先国・地域の組み合わせ上位をみると、上位20通りのうち10通りで「米国」が、8通りで「中国」がそれぞれ占め、多くの輸出企業で、米中両国を中心に輸出事業を展開していた。

 輸出先国・地域の組み合わせで最も多いのは「中国・香港」(3.2%)だった。次いで「中国・台湾」(3.1%)、「韓国・台湾」(3.0%)と続き、上位はいずれもアジア地域をメインに輸出事業を展開していた。
 このほか、「中国・米国」へ輸出する企業は2.3%だったほか、「米国・ドイツ」(1.2%)、「米国・英国」(0.9%)、「米国・フランス」(0.6%)など、米国・欧州各国を軸に輸出事業を展開する企業も多数みられた。

 また、日本が締結した、または締結交渉中である多国間の自由貿易圏内に向けた輸出では、「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)」が66.8%を占め最高。同協定は現在交渉中であるが、発効されれば3社に2社の輸出面で恩恵が及ぶ。次いで、「日中韓・FTA(自由貿易協定)」圏が47.4%だった。3位は「日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)」圏(28.8%)となり、現在発効している貿易協定では最も多くの輸出企業をカバーしていた。

 4位以下は「TPP11(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)」圏(19.8%)、「日EU・EPA」(15.8%)と続く。

輸出環境は不透明な状況続く アジアでは対中・対韓向け輸出の動向に留意

 今後は、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)の利下げや英国のEU離脱などによる為替の変動などが不安要素となろう。アジア向け輸出については、特に対中輸出を行う企業では米中両国間での貿易摩擦や同国経済の減速による影響に留意する必要がある。約2割を占める韓国向け輸出企業についても、安全保障上の輸出管理で優遇措置を与える、いわゆる「ホワイト国」からの除外など、日韓関係の悪化による影響を一定程度受けるだろう。他方、高い経済成長率を見せるASEAN(東南アジア諸国連合)向けでは、輸出企業の増加といった動向に注目が必要だ。企業の3割超 が通商交渉の進展を期待するRCEPについても、対象域内では現在でも多くの企業が輸出を行っており、妥結に向けた交渉の加速も求められる。

 北米向け輸出については、特に米国の通商政策に左右される局面が続く。中南米向けでは、企業の半数超が「日本に必要」と回答したTPP11の発効1に伴い、既にEPAを結ぶペルーやチリ向けの輸出企業増加、事業展開の進展などが予想される。欧州向けでは、2019年に発効した日EU・EPAにより、今後EU加盟国向けの輸出企業増加が期待されるが、英国のEU離脱問題にともなう通商環境の変化には注視が必要だろう。