格安SIMとダブル使いでiPhone料金を節約する
eSIM用プランを利用してiPhoneの通信料金を節約する裏技を3つ紹介する(筆者撮影)
【2019年7月24日12時00分 追記】記事初出時、サブタイトルに誤りがありましたので、修正しました。
格安スマホの老舗であるIIJmioが、eSIMを生かしたサービスを開始した。スマートフォンで対象になるのは、iPhone XS、XS Max、XRの3機種。現状では、ベータ版という位置づけで、料金プランは6GBの「ライトスタートプラン」だけだが、月額1520円と割安なのが特徴だ。大手携帯電話会社のSIMカードで電話を受けつつ、データ通信だけをIIJmioに切り替えれば、今の環境を大きく変えることなく、料金を節約できる。
eSIMは、容量を使い切ってしまい、速度制限がかかったときにも活用できる。IIJmioの料金プランは月額料金がかかってしまうが、海外に目を向けると、プリペイドプランを提供する事業者も多い。日本語に対応しているところを選べば、利用も簡単。海外事業者でも、日本にいながらにして契約できるのは、物理的なSIMカードが不要なeSIMの魅力だ。そこで今回は、eSIMを使って料金を節約する裏技を紹介していこう。
1.2回線目を加えることで料金が2〜3割安に
eSIMとは、端末に組み込まれたSIMカードのこと。その中身を、ネット経由で自由に書き換えられるのが特徴だ。
アップル製品では、iPhone XS、XS Maxが初めて対応し、以降に発売されたiPhone XRやiPad Pro、iPad Air、iPad miniにも搭載された。スマートフォンやタブレットでは対応製品が非常に少なく、アップルはeSIMで大きく先行したメーカーの1社といえる。販売台数の多いiPhoneが対応したことで、海外ではさまざまな通信事業者がeSIMのサービスを開始した。
日本で先行したのが、格安スマホの老舗といえるIIJだ。同社の格安スマホサービスであるIIJmioは、7月18日にeSIM用プランの提供を始めた。料金プランは、6GBまで高速通信が使える、月額1520円の「ライトスタートプラン」だけだが、“2回線目”に設定することで、料金を3割程度安くすることができる。
2回線目の料金が別途かかってしまうため、矛盾しているようにも思えるが、1回線目として契約している大手通信事業者のデータ通信量を抑えれば、節約は可能だ。
大手通信事業者は、3社とも、使ったデータ容量に応じて料金が変動する段階制の料金プランを用意しているため、これを利用するのが手っ取り早い。MNPで格安スマホ事業者に移るより手間が少なく、電話などのサービスはそのまま大手キャリアのものを使い続けられるのも、2回線持つメリットだ。
例えば、1回線目をauの「新auピタットプラン」にしつつ、2回線目のIIJmioのeSIMを設定したとする。auの料金プランは4GBを超えると料金は5980円になり、7GBを超えると通信速度が128Kbpsに制限される。
そのままIIJmioのeSIMを足すと、料金は7500円に跳ね上がってしまうが、au分の通信量がゼロになれば、料金は2980円まで下がる。そのため、2回線合計で料金は4500円に収まる。auに5980円払っていたときより、料金が1480円安くなるというわけだ。
発行されたQRコードを読むだけと、設定も簡単(筆者撮影)
契約も簡単で、IIJmioのサイトでアカウントを取得したあと、eSIMを申し込むだけ。ショップに出向いたり、SIMカードが郵送されるのを待ったりする必要がない。設定は、IIJが発行したQRコードをiPhoneで読み取るだけ。
「設定」アプリから「モバイル通信」に進み、「モバイル通信プランを追加」をタップすると、カメラが起動する。IIJmioの回線は、音声通話には対応していないため、「デフォルト回線」はメインで使っている通信事業者のままにしておくようにしたい。
なお、大手通信事業者が販売するiPhoneの場合、あらかじめSIMロックを解除しておく必要がある。各社とも、一括購入の場合は即日、分割払いの場合は購入から100日経過していていれば、SIMロックの解除が可能になる。
ショップでもできるが、手数料がかかってしまうため、オンラインで済ませたほうがお得だ。ドコモは「My docomo」、auは「My au」、ソフトバンクは「My SoftBank」でそれぞれ手続きすることができる。アップルから直接購入したSIMフリー版の場合は、SIMロックを解除する必要がない。
ただし、格安スマホは、大手通信事業者から借りた帯域を、ユーザーが分け合って使用するため、通信が集中する時間帯は速度が出づらい。実際、筆者が試したIIJmioのeSIMも、12時台は下りの速度が1Mbpsを切ってしまった。ニュースなど、比較的軽いサイトは見ることができるが、アプリのダウンロードなどには向かない点は、あらかじめ理解しておきたい。
2.高速通信をオフにしてギガ不足を防ぐ
eSIMとはいえ、ほとんどの仕様はSIMカード型のサービスと同じ。余ったデータ容量は翌月に繰り越せるうえに、容量が足りなくなったときは、100MBずつ容量を追加することも可能だ。
高速通信を自らオフにして、容量を消費しないようにすることができる(筆者撮影)
大手通信事業者の場合、1GBで1000円かかるが、IIJmioは100MBごとに200円。MB単価はIIJmioのほうが高いものの、細かく容量を増やせるため、“ギガ不足”になったとき、最適な容量を選べる。
また、大手通信事業者にない機能として、高速通信をあえてオフにして、データ容量を消費しないようにすることもできる。この場合、速度は最大200Kbpsに絞られてしまうが、文字中心のSNSやニュースなどを見るのであれば、ガマンできる範囲かもしれない。iPhoneはバックグラウンドでも通信するため、普段は高速通信をオフにしておき、手に取って使うときだけオンにすることもできる。データ容量を節約すれば、ギガ不足に悩まされることもないだろう。
高速通信のオン・オフは、アプリからワンタッチで設定できる。あらかじめ、App StoreからIIJmioの「みおぽん」というアプリをダウンロードしておき、IDとパスワードを入力しておこう。あとはアプリを開き、スイッチを切り替えるだけだ。このアプリからは、高速通信をオンにした状態とオフにした状態で、それぞれどの程度容量を消費したのかも確認できる。
ちなみに、IIJmioには「バースト転送」と呼ばれる機能があり、低速時でも、通信開始時の数秒間だけは制限がかからない。そのほうが、全体の通信を、効率よくさばけるためだ。結果として軽いサイトなら、高速通信をオンにしたときと、あまり変わらない時間で表示されることもある。手動で設定を変更するのが少々手間だが、データ容量を効率よく使えるため、ぜひ覚えておきたい。
3.海外事業者と契約し、ギガの“ちょい足し”も
eSIMはオンラインで契約が完結するため、物理的なSIMカードと違い、場所を選ばないのがメリットだ。極端な話、日本にいながら、海外の通信事業者と契約することもできる。海外事業者の中には、日本で使える料金プランを用意しているところもある。
海外契約の場合、日本での接続が国際ローミングになってしまうため、遅延が国内事業者の回線より大きくなってしまうが、その点に目をつぶれば、国内の通信事業者に固執する必要はない。とはいえ、日本語に対応している海外の通信事業者は少なく、言語の壁がネックになる。
Ubigiは海外の事業者だが、日本で一時的な回線として利用することも可能だ(筆者撮影)
オススメは、フランスに拠点を構えるUbigiだ。同社はNTTコミュニケーションズ傘下の格安スマホ事業者で、日本語のサイトも用意している。FAQまでしっかり日本語で公開されているため、安心して契約できる。日本国内用のプランの場合、プリペイドは4ドルで500MB。有効期間は1日と短いが、月の最終日に容量を使い切ってしまったときに契約するにはいいプランだ。
先に挙げたように、大手通信事業者は容量の追加が1GBあたり1000円のため、UbigiのeSIMを設定し、そちらに切り替えれば、半額以下で済ませることができる。日本ではauの回線につながるため、ドコモやソフトバンクを使っているユーザーが、圏外のときなどに、一時的に契約してもいいだろう。
もちろん、海外の通信にも対応する。大手キャリアの国際ローミングを使うより割安になるため、とりあえずUbigiのプロファイルを設定しておき、必要なときだけプランを買い足すようにしてもいい。Ubigi以外にもeSIMに対応した通信事業者は徐々に増えており、簡単な英語さえ読めれば、日本から契約できるケースは多い。たとえば、香港の通信事業者である「3香港」には、138香港ドル(約1890円)で10日間、1日500MB使えるeSIM専用のプランがある。これも日本で契約でき、ギガ不足のとき便利だ。対象端末は最新のiPhoneに限定されるが、今後、徐々に増えていくことが想定される。今から覚えておいても、損はないだろう。