心のアンチエイジング+感情の輪

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7月も下旬に入ったが相変わらず梅雨らしい日が続いている。
雨に濡れた紫陽花の彩りなど梅雨には梅雨ならではの趣もあるが、スッキリ晴れた日が少ないと朝の寝起きの爽快感や日中の思考力・行動力も心なしか減るようだ。何をするにしても「気」、気分や心持ちは大切だ。

心のアンチエイジング

「アンチエイジング」という言葉には人によってその解釈やイメージにかなりばらつきがある。「抗加齢」や「抗老化」を意味する語であることを踏まえると、加齢による「何の変化」を、あるいは「何の」老化を、念頭に置くかによって抗(あらが)う対象や手段も変わる。解釈やイメージにばらつきが出るのも当然といえば当然のことかもしれない。

人の1日の活動や行動という視点からアンチエイジングを考えた場合の主な要素は「食事」「運動」「睡眠」の3つ。そしてこれらの活動を行う上での思考など脳の活動、つまり「心」や「精神」と、これらの活動を行う場を構成する「環境」は個々の活動の基盤として重要だ。その環境も含め、食事、運動、睡眠それぞれが「心身」の心と身の両方に深く関わり相互に作用する。

睡眠も含めた脳の活動全般を食事や運動と並ぶ3要素の一つとする考え方もあるが、僕自身は睡眠を食事や運動と同列の活動とした上で、精神・心は環境と同様、すべての活動の基盤としてとらえる方がしっくりくる。

たとえば、料理や空腹状態が同じであったとしても、それを自宅の食卓で一人で食べる場合と家族や友人たちと食べる場合ではまったく違うものになる。その時の心理・精神状態が食物の消化・吸収にも影響を与えるため、食事の「効果」は多少なりとも左右される。食事をする時の環境が心や精神に影響を与えることもある。運動や睡眠の場合も然り。心の老化や心のアンチエイジングは身(体)のアンチエイジングの効果を左右するものとして、今後、これまで以上に深く幅広く研究や実践が追求されるようになるだろう。

「プルチックの感情の輪」

「プルチックの感情の輪」(Plutchik's Wheel of Emotions)と呼ばれる図をご存じだろうか。40年ほど前にアメリカの心理学者、ロバート・プルチック博士が考案した、人間のさまざまな感情を整理した図だ。形状や色調には多少のバリエーションがあるが、喜びと悲しみ、信頼と嫌悪、恐れと怒り、驚きと期待という4対8種を基本的な感情とした上で、その種類や程度に応じて異なる色彩・色調を割り当て、それらの相関・混合も交えて図解したものだ。心の老化には感情の劣化以外にもさまざまな現象や症状があるが、日々の出来事を思い浮かべながらこの図に記載された言葉を眺めると感情や記憶のエクササイズになる。

ちなみにこの梅雨の間、僕にとって一番の「心のアンチエイジング」は読書。それに次ぐのは映画鑑賞、あるいは音楽鑑賞だろうか。

[執筆/編集長 塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」