(C)Olaf Pignataro/Red Bull Content Pool

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Soapbox Raceというのは、あまり聞き慣れない単語かもしれない。日本語にすると「石鹸箱のレース」?石鹸がひとつ入っているあの箱を使ったレースということは、スロットカーレースのようなものかと想像しがちであろうが、さにあらず。ここでいう石鹸箱は、元来石鹸を詰めて運ぶための木箱であり、逆さにして街頭で即席の演壇に使ったりしたもの。日本でいえば、さながら酒屋の通箱や段ボールのミカン箱、木製のリンゴ箱といった感じだろうか。昔からどの家庭でも身近にある箱で、ちゃぶ台に踏み台に子どものおもちゃ箱に、と多用途に使うことができるというのが共通項。1950年代にアメリカで子どもたちがこの石鹸箱に車輪を付けてレースをしたのがその起源といわれている。

何を隠そう、私も過去に段ボールで息子(当時は幼稚園児)のために、子どもが乗れるサイズのF1マシンを作ったことがあり、実はこのソープボックスレースに出てみたいと密かに思ったことがある。そのときはさすがに4歳児にドライバーをさせるわけにもいかず出場を断念したが、以来、個人的にも注目していたレースがこの「Red Bull Soapbox Race」なのである。

これが当時レース参加を検討した段ボール製のF1マシン。

そんなRed Bull Soapbox Raceの2019年7月7日のロンドン大会「Red Bull Soap Box Race 2019 London」を、幸運にも取材する機会を得た。会場はロンドン市内を見下ろす丘にあるアレクサンダー・パレス。同レースは2000年にはじめてベルギー・ブリュッセルで開催されて以来、これまでに世界各国で110回以上開催されており、英国での開催は6回目、今年は2万人以上の観客が訪れたというビッグイベントだ。

(C)Mark Roe / Red Bull Content Pool

スタート前のパドックを訪れると、64の参加チームは準備とPRに余念がなく、さらにそれを観に来る老若男女で大賑わい。イギリスらしくユーモアやウィットに富んだエントリーチームのマシンやコスチュームを、観客はおろか警備にあたる警察官までが写真を撮って楽しんでいたのはお国柄の違いだろうか。

会場の案内係のスタッフも元気いっぱいの笑顔で迎えてくれる。

スタート前のパドックは熱気に包まれている。

ここであらためてルールのおさらいをしておくと、「動力を搭載しない、手作りカートによるレース」というのが基本的な内容となる。スタート時にマシンを押す人力と、坂道を駆け降りる重力だけが動力源。マシンの製作についてサイズや重量の規定はあるものの、裏を返せばそこさえ遵守していれば、あとはチームが好きなように製作やアレンジをすることができるというわけだ。

(C)Leo Francis/Red Bull Content Pool

レースはクリエイティビティ、パフォーマンス、レースタイムによって競われる。ということは、勝つために必要なのは、「コスチュームを含めた全体の意匠」「マシンの基本性能」にといった要素になるのだろうが、イベント全体を体験してみると、そんな勝因分析はナンセンスとさえ思えてくる。スタート時のパフォーマンスをジャッジが採点する様子を観察していても特に厳密な基準はないようで、いかにその場でジャッジの心をギュッと掴めるか?場を盛り上げることができるのか?によるところが大きいようだ。参加チームもジャッジも観客も、皆が思い思いに楽しむことができれば、お堅いルールは必要ない。それぞれの趣向を観ているだけでも、ハロウィンのお祭りか、クオリティの高い学園祭に紛れ込んだような錯覚を覚える。おバカなことを大真面目にやる。それがこのレースの根本的な魅力だ。

優勝チームは「GAS GAS GAS」。前回参加した2017年大会の14位からの大躍進だ。(C)Leo Francis/Red Bull Content Pool

(C)Olaf Pignataro/Red Bull Content Pool

立ち姿も勇ましく精巧な作りのバンブルビー、「BUMBLEBEE BRAWL」は2位に輝いた。

パドックでバンブルビーの隣にいたソーセージ。走るとこうなる。(C)Mark Roe / Red Bull Content Pool

食べ物といえばBLTサンドイッチも。各メンバーが具材に扮しているのもポイント。

宇宙・ロケット系も人気のテーマだ。「TEAM APOLLOCALYPTIC - MISSION ACCOMPLISHED」は3位に。

「APOLLO 50」は3段式の作りで、それぞれが切り離されるという凝りよう。(C)Olaf Pignataro/Red Bull Content Pool

イギリスの風刺精神はこんなところにも息づいている。

007も参加していた。ボンドカーはロータス・エスプリだ。

日本でもお馴染みのキャラクターも登場。ネコバスは英語ではそのまま「Catbus」。

日本車を発見!オレンジのスープラといえば、そう、「ワイルド・スピード」がテーマだ。デフォルメされた姿がなんともユーモラス。

ロンドン大会は、世界各国で行われる今シーズンの全8大会のうち、観戦料が必要な唯一の大会だ。つまり2万人の観客はわざわざ有料のチケットを購入して会場のアレクサンダー・パレスにやってくる。小さな子連れのファミリーがとても多いのが印象的で、週末に普通の家族が一家そろって「おバカな」カートのレースを観戦する姿に、自動車レースが文化として根付いていることをつくづく実感させられた。

そして2019年の全8大会の最終回を飾る舞台が日本であることをご存じだろうか。10月6日(日)に東京・よみうりランドで、日本では4回目となる「Red Bull Box Cart Race Tokyo 2019」が開催される。SoapboxではなくBox Cartという名称で行われるのは、Soapboxが日本ではあまり馴染みのない言葉だから、という理由からだという。

日本以外では南アフリカでBox Cart Raceの名称で過去に開催、それ以外の地域では、Red Bull Billy Cart Grand Prix(オーストラリア)、Red Bull Carros Locos(ペルー。スペイン語で”クレージーレース”の意味)、Red Bull Caisses a Savon(フランス。”石鹸箱”の意味)、Red Bull Ladeira Abaixo(ブラジル。ポルトガル語で”下に”の意味)、Red Bull Trolley Grand Prix(ニュージーランド)、Red Bull Zeepkisten Race(オランダ。オランダ語で”石鹸箱”の意味)というように、各国においてわかりやすい名称のもとに開催されていることも、豆知識としてお伝えしておきたい。

日本大会のエントリーはすでに締め切られ、一般公募による50チーム+特別枠(予定)の参加チームは現在マシンを鋭意製作中とのことだ。参加車両のデザイン案は公式サイトで公開されている。日本ならではのユニークなマシンとパフォーマンスに期待したい。日本大会はロンドン大会とは異なり無料で観戦できるとのことなので、秋の行楽シーズンに英国のように家族で観戦に訪れてみてはいかがだろうか。子連れで週末に気負わず自動車のイベントを楽しむことで、日本でも自動車レースが文化として根付いていくことを心から願う次第だ。



<日本大会実施概要>

Red Bull Box Cart Race Tokyo 2019


開催日:2019年10月6日(日) 12:00-18:00(予定)
※雨天時決行、荒天時は中止の場合あり
会場:よみうりランド特設会場
主催:レッドブル・ジャパン株式会社
備考:観戦無料(※遊園地を利用する場合、別途入園料が必要)