試合は、その後リバプールが守り、スパーズが攻めるという展開になった。しかしリバプールは前から守るプレッシング系のサッカーであり、一方のスパーズは、前に出てきそうなリバプールの背後を狙おうとするカウンターサッカーだ。開始2分以降のピッチには、そうした本来像とは別種のキャラが相まみえることになった。試合はすっかり噛み合わなくなった。

 そして終盤87分、ディボック・オリジの駄目押しゴールが決まると、多くのスパーズサポーターが席を立った。はるばるマドリードまでやってきたというのに、表彰式を見ることなくスタジアムを後にした。

 彼らがその後、どれほどマドリード観光、スペイン観光を楽しんだか知る由もないが、問いたくなるのが、この観戦ツアーはそれでもトータルで見て楽しかったのか、楽しくなかったか、だ。

 旅そのものは楽しかったが、肝心の試合は最悪。プラスマイナスはどうなのだろうか。旅行+スポーツ観戦。スポーツ観戦+旅行。優先順位はさておき、これはまさにスポーツツーリズムだ。スポーツ観戦は旅行とセットになりやすいものだが、CL決勝はその究極の存在であるように思う。

 スパーズサポに訊ねたいのは、それでも楽しかったか否かだ。最悪の試合内容を補う旅ができたか。少なくとも、忘れられない旅になることは確かだろう。

 スパーズサポでもリバプールサポでもない、ライターという中立な立場に身を置く第3者にとっては上々な旅だった。試合内容には確かに裏切られた側面が強いが、お祭り感、スポーツツーリズムを満喫することはできた。

 ちなみに過去、スポーツツーリズム的に極上だったのは93-94(バルセロナ対ミラン)、06-07(ミラン対リバプール)のアテネ。また試合内容が極上だったのは、レバークーゼン対レアル・マドリー(01-02グラスゴー)とミラン対リバプール(04-05イスタンブール)になる。

 また両者が高次元で噛み合っていたのは、ポルトガルのリスボンで行われた13-14のレアル・マドリー対アトレティコとなる。

 欧州各地の5つ星スタジアムを巡るCL決勝。W杯決勝より華やかさ、お祭り度で勝る。オススメしたい旅である。