1/6宇宙は静かで空虚な場所に思える。だがそれも、1秒間に8.7回転しながら宇宙空間を超高速で移動するパルサーに衝突されるまでのことだ。科学者たちは、米航空宇宙局(NASA)のガンマ線宇宙望遠鏡「フェルミ」と、ニューメキシコにある超大型干渉電波望遠鏡群のデータから、カシオペア座にある高エネルギーのパルサー「PSR J0002+6216」が発する強力な電波を発見した。暗闇に浮かぶ幽霊のシャボン玉のような画像は超新星残骸「CTB 1」だが、その左側には長い光の筋が見える。これこそ、CTB 1を生み出した爆発によって「PSR J0002+6216」が弾き出され、時速250万マイル(同約400万km)で宇宙空間を駆け抜けたときに残った軌跡(衝撃波)だ。PHOTOGRAPH BY JAYANNE ENGLISH/NASA/IRAS 2/6NASAの惑星探査機「OSIRIS-REx(オシリス・レックス)」は2019年はじめ、地球近傍小惑星「ベンヌ(Bennu)」の軌道に入った。目的は、この太古の岩でサンプルを採取して地球に持ち帰り、研究に役立てることにある。だが実際にベンヌに到着してみると、物事は思った通りには進まなかった。まず第一に、ベンヌは平らではなく、起伏のある岩だらけの場所だった。さらにベンヌは、「活動小惑星」という珍しい種類の小惑星であることがわかった。つまり、太陽に近づく時期には宇宙空間に物質を噴き出すという、彗星に近い性質があるのだ。この写真には、ベンヌの右側から小石や塵が吹き飛ばされている様子が写っている。この事実は、物質を持ち帰って分析したいと思っている科学者チームにとってだけでなく、オシリス・レックス自体の安全性と実行可能性にとっても新たな問題となっている。オシリス・レックスには「飛んでくる岩に気を付けて!」と声をかけたいところだ。PHOTOGRAPH BY NASA 3/6海王星は刻々と変化している。太陽系の外縁領域に位置するこの惑星を、NASAのハッブル宇宙望遠鏡は40年ほど観察してきたが、その間にいくつかの嵐が観測されてきた。左の画像では、海王星の上部に黒っぽい部分が写っており、これが最新の嵐だ。嵐が発生しては消滅していくことはわかっているものの、不意に出現したかと思うと一瞬で消えていく嵐もある。この青い球体の外観は変わり続けているため、科学者たちの好奇心は高まるばかりだ。右の写真は、「ヴォイジャー2号」が1989年に撮影したもので、海王星の中央に巨大な暗い嵐(大暗斑:Great Dark Storm)が渦巻いている。PHOTOGRAPH BY NASA/ESA 4/6NASAの探査機「ジュノー」は19年2月、木星の横を通過し、新たに巨大な嵐をとらえた素晴らしい写真を撮影した。右上にあるのはもちろん大赤斑(Great Red Spot)だ。こうした画像はただ美しいだけではない。ジュノー・チームの科学者たちや、木星の活発な大気に関する科学的洞察を得たいと思っている人々にとって極めて重要なものだ。PHOTOGRAPH BY NASA 5/6SF作家のアイザック・アシモフにこれを見せたかった。この幽霊のような赤いかたちは「W40」、別名「バタフライ星雲」という活動中の「星の工場」だ。星雲の中央に見える特に明るい星団が「羽」をつくりだしている。高温のガスを噴出して、塵やデブリを宇宙空間に放出しているのだ。W40は、地球からおよそ1,400光年離れた場所にある。有名なオリオン星雲とほぼ同じ距離だ。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH 6/6宇宙にも春の訪れだ。19年3月21日は、地球上のほとんどの場所で昼(日の出から日没まで)と夜の長さがほぼ同じになる「分点」だった。こうした日は年に2回、春と秋にやってくる。春分点を境に季節が変わり、北半球には、より多くの日光が降り注ぐようになる。NASAは19年3月20日、太陽・太陽圏観測機(SOHO)によって4種類の異なる紫外線波長で太陽を観察し、こうしたカラフルなレインボー・シリーズを生み出した。IMAGE BY ESA/NASA

宇宙は相変わらず奇妙でワクワクする場所だ。この太陽系ですら謎に満ちている。地球の近くにある控えめな小惑星「ベンヌ(Bennu)」を見てみよう。

「超高速で銀河を駆けるパルサーの軌跡、美しく青き海王星の嵐:今週の宇宙ギャラリー」の写真・リンク付きの記事はこちら

幅がエンパイア・ステート・ビルの高さとほぼ同じくらいのこの天体では、米航空宇宙局(NASA)の探査機が軌道を周回して詳細な調査を実施している。最終的にはサンプルを採取する予定だ。ベンヌは空中に浮かぶただの岩にすぎないのだから、たいして難しくないように思える任務だ。そうだろう?

ここに誤解がある。ベンヌは確かに小惑星なのだが、同時に彗星の特性も備えている。つまり、塵やデブリを噴出するため、これがNASAのミッションを危険にさらす可能性があるのだ。

小惑星は彗星と同じように、太陽系が生まれた当時のことを知ることができる古いタイムカプセルだと考えられており、生命の基礎となった有機物を含んでいる可能性がある。入念に調査した結果、岩は飛んでくるものの、探査機は大丈夫だろうという結論に達した。科学はひるまず突き進むのだ。

姿を消した「海王星の嵐」の謎

地球に近い天体から太陽系の外縁領域に目を移し、氷とガスの巨大惑星である海王星を見てみよう。「ヴォイジャー2号」が1989年にこの青い惑星のすぐそばを飛行したとき(探査機が海王星に接近したのは、いまだにこのときだけだ)、赤道の下に巨大な楕円形の嵐を見つけた(これは大暗斑=Great Dark Stormと呼ばれる)。ところが5年後、ハッブル宇宙望遠鏡から観測した科学者たちは、これが消えていることに気付いた。

この事実に、誰もが戸惑った。嵐の発生メカニズムに関する天文学者たちの理解によると、数年間で消えることはあり得なかったからだ。しかし今回、ハッブル宇宙望遠鏡が別の巨大な嵐を見つけたため、科学者たちはこの嵐を詳細に研究して、海王星で起きていることを正確に理解したいという思いを強めている。

何千光年も離れたカシオペア星雲の領域では、さらに奇妙なことが起きている。パルサーが時速250万マイル(同約400万km)で宇宙空間を駆け抜け、その痕跡を残しているのだ。この速度なら、地球から月まで6分で移動できる。上の写真を見て、こうした奇妙な現象の詳細を確認してほしい。

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