ソフトバンク✕トヨタの「MONET」が目指す、『移動のサービス化』とは
ソフトバンクとトヨタ自動車が設立した企業「MONET(モネ テクノロジー)」は28日、企業や自治体の関係者600名を招きイベントを開催。自動運転社会に向けた事業戦略を説明しました。

ITと自動車のビッグネームがタッグを組んだMONETが取り組んでいるのは、自動運転が当たり前になった社会で、クルマを活用した新しいサービスの準備をすること。堅い言葉で言うと「MaaS社会に向けたモビリティプラットフォームの構築」ということになります。

近未来に完全自動運転が実現すると、人がクルマの運転をする必要がなくなります。そうなると、移動時間を活用したさまざまなサービスが生まれると言われています。そうした新しい変化を表す言葉が「MaaS(Mobility as a Service、マーズ)」、すなわち「移動のサービス化」です。

MaaSで想定されているような新しい交通サービスを実現するためには、多くのデータを収集し、それを解析する必要があります。そこで役立つのが、ソフトバンクが手がけてきたデータ収集、AI処理の知見です。

MONETは自動運転社会の到来を2022年と予測しており、それに向けた新サービスの基盤を準備しています。同社が提供する情報、分析技術を、多くの企業や自治体が組み込んでサービスを提供する、プラットフォーム化を目指しているわけです。2018年12月に会社を設立し、2019年2月には全国17の地方自治体と協定を結び、3つの自治体で実証実験を展開しています。
▲MONETでは現在、クルマから得られるデータを分析、整理する研究を行っている

▲ソフトバンクの基地局から得たリアルタイムユーザー数も需要予測に活用
▲日本の道路事情や法規制に沿ったサービスを提供できるとアピール

■機動力のある交通サービスの実現


まず最初に実現するとみられているのが、コンパクトな交通サービスの設計です。これについてはMONETやソフトバンクに限らず、複数の企業が自治体と組んで実証実験を行っています。

一例としては、いわゆる「乗り合いタクシー」の形態があります。地方自治体では過疎化が進み、コミュニティバスを運行するにはコストがかかりすぎる地域があります。そうした地域の足として、注目されているものです。コミュニティバスとの違いは、運行ルートを需要に応じて柔軟に調整できること。加えて、AIによって需要を予測したり、スマートフォンで呼べる仕組みを整えたりといった工夫を組み合わせることで、運行にかかる車両代や人件費を抑えることができます。


▲自治体と情報連携すると、たとえば病院への配車予約の際に介助や緊急対応が必要か判断できるという
▲声で配車予約や、押すだけで予約できる「ダッシュボタン」も開発している

自動運転が実用化されると、さらに柔軟に展開できるようになります。たとえば、アプリで配車し、タクシーのように移動できるサービスを自動運転車で提供すれば、ドライバーの人員管理などの必要が無い分、より低コストに大規模なサービス展開ができるようになると見られています。

このほか、渋滞情報を元にした信号整理の最適化、複数の交通機関を串刺しで検索しまとめて手配する経路案内サービスなど、交通とデータ活用を軸にしたさまざまなサービスを検討していることが説明されました。

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■移動○○がより手軽に


自動運転が実現すると、移動販売や移動図書館のようなクルマを使った出張サービスなどを、ドライバーを手配せず提供できるようになります。それを見据えたコンセプトとしてトヨタ自動車が発表したのが「e-Pallet構想」です。クルマをサービスの"器"として捉え、内部の空間を柔軟に設計するというもので、たとえば移動自販機、過疎地向けの移動診療室、災害やイベント対応のための移動トイレといったコンセプトが発表されています。




26日にMONETが発表した「MONETコンソーシアム」は、こうした新しいサービスを開発するための組織。地方自治体や移動サービスの提供主体となる交通事業者、新しい形のサービスを展開したい企業などが会員となっています。発表時点で、80社以上が会員となっています。

▲鉄道、航空、不動産、銀行、食品製造などさまざまな分野の大手企業が名を連ねる

■HONDA、日野が資本参加


同じく26日、MONETに本田技研工業(HONDA)と日野自動車の2社との資本業務提携を発表しました。出資額は両社とも2億4995万円で、9.998%の株式を持つことになります。



ソフトバンクとトヨタ自動車の出資によりスタートしたMONETですが、多くの自動車会社の参加を促していく方針をとっています。MONETの宮川潤一社長(ソフトバンクCTO)は、「インターネットの世界のGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの4大企業)のように、『MaaSの世界のMONET』として、自動運転時代の中心になるようなプラットフォームへ育てていきたい」と語っています。