【特集】競争激化の家電量販店、選ばれるカギは「キャッシュレス決済」にあり？
「爆買い」需要は一服も、好調な家電量販業界
今日も、多くの外国人が日本を訪れる。「爆買い」という言葉が定着した当時、両手に多くの荷物を抱えている外国人が少なくなかった。家電を持ち運ぶ姿をイメージする方も多いだろう。しかし、爆買いが定着した2014年当時は訪日前に期待していたこととして「ショッピング」が第2位であったのに対し、2017年は「自然・景勝地観光」が第2位と「ショッピング」を追い抜いた（観光庁 訪日外国人の消費動向調査）。いわゆる「モノ消費」から「コト消費」へと観光目的に変化が生じてきている。しかし、家電量販店大手6社の動向をみると訪日外国人の「モノ消費」に一服感がありながら、業績は好調に推移している。
ビックカメラは「PayPay」が話題に、減収のヤマダ電機は新たなビジネスモデル構築を急ぐ
単体ベースで業績をみると6社中5社で増収となった。背景にはまず、各社共通して猛暑による影響で夏商戦のエアコン関連が増収に寄与したことがあげられる。多様化するライフスタイルにあわせた家電や、高付加価値商品への買い替えといった消費者の消費性向の変化も寄与した。今後は、昨年の猛暑や災害による家電の買い替え需要に加え、消費税率引き上げに際した電子決済によるポイント還元の各社キャンペーンの動向も注目される。昨年、ビックカメラでは、PayPayによる大型キャンペーンと併せたビックポイントの高還元が話題となった。消費税率引き上げに伴うキャッシュレス化の普及が、消費者の量販店の選択材料の一つとなるだろう。
数値面において、規模間に差はあるものの各社が概ね増収となったのに対して、唯一減収したのは業界最大手のヤマダ電機。同社は、グループ会社と連携して、住宅にかかる新築やリフォームの提案から家電品の販売へとつなげる新たなビジネスモデルの構築を図っている。新業態店舗（家電住まいる館）への転換に人件費の増加、部門間の調整の効果がいつ表面化してくるかが注目される。
異業種との競争激化が予想されるなか、”オンリーワン”に向けた差別化できるか
現段階ではインバウンドの「モノ消費」から「コト消費」への構造の変化が家電業界に直接影響を及ぼす様子はうかがえない。日本政府観光局によると訪日外国人旅行者数は2018年12月時点で史上初めて3000万人を超え、増加の一途をたどっている。引き続き、インバウンド需要の施策が図られるとみられるほか、家電販売のみならず、ビックカメラとユニクロが共同出店を果たしたビックロのような他業種とのコラボレーションによる改革が進むことも考えられる。他方、同業種のみならず、ドン・キホーテやイオンなど小売業者との競合激化も予想され、今後はオンリーワンに向けた差別化が求められてくるだろう。
