校長に学校内に入ることを禁じられ、締め出された自閉症の少年(画像は『KIRO-TV 2019年1月23日付「Child with autism locked out of school」』のスクリーンショット)

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自閉症といっても個々により様々な症状があることから、それを抱える生徒を預かった学校側は理解と配慮を示すべきではないだろうか。しかし昨年12月、米ワシントンのある学校で、自閉症の少年が校長に学校の校舎から締め出されるという対応を受けた。現在、少年の家族は学校側に対し明確な回答を求めている。『KIRO-TV』『WAFB 9』などが伝えた。

昨年12月14日、ワシントンのケントにあるスプリングブルック小学校に通っていたジャマー・テイラー君(11歳)は、校長のアシュリー・ショートさんに校舎から締め出されるという対応を受けた。

家族の話によると、自閉症を抱えるジャマー君は特別学級に所属しており、この日は授業中にトイレに行きたいと訴えた。母のジャヴォーン・ペリーさんは「特別学級の子供たちはいつでもトイレに行かせるべき」と主張するが、校長はジャマー君の訴えを認めなかったという。

するとジャマー君は校長を通り抜けて、裏の出入り口から外に出た。そこで校長はドアの全てに鍵をかけ、ジャマー君を校舎から締め出し、校内放送システムで職員らにジャマー君を校内に入れるなと指示を通達した。ジャマー君は何度かドアを開けようとしたが開かず、外から教室に近付こうと窓のそばに行くと、職員がジャマー君の目の前で中からブラインドを降ろした。ジャマー君は困惑した様子で一旦駐車場のそばまで行きうろついたりしたが、通りがかった職員もジャマー君を気遣う素振りは一切見せず、校舎の中に入れようともしなかった。また、他の生徒に混じって中に入ろうとしたジャマー君を見た職員は、ジャマー君を再び外へ押し出した。

結局、15分ほど外にいさせられたジャマー君は、生徒の1人がドアを開けたことでようやく中に入ることができたそうだ。この出来事は学校側からジャマー君の家族に伝えられることはなかった。ジャマー君本人の口から「締め出された」と話を聞いたジャヴォーンさんと祖母ロヴィン・モンゴメリーさんは、学校側に詰め寄り「監視カメラの映像を見せてほしい」と頼んだ。

その映像を見ると、ジャマー君の話と一致する光景が映し出されていた。校長はジャヴォーンさんに、ジャマー君を締め出したことを認めながらも「脅されたので危険を感じた。生徒全員の安全を守るために、息子さんを校内から追い出した」と話したが、映像ではジャマー君が校長のそばを通り抜けようとした瞬間、一歩退いた校長の姿が収められているだけで、ジャマー君が「自分は校長を押したりしていない」と言うように、その行為が校長を脅しているとは到底捉え難いようだ。ロヴィンさんは、孫が締め出されて校舎の外をうろつき回る姿を見て「この映像を見るたび胸が締めつけられます。子供の安全を守るはずの学校がこの対応ですよ。意図的に11歳の子を校舎から締め出すなんて、学校側はどんな言い訳も通用しません」と怒りを口にした。また、ジャヴォーンさんはこのように語っている。

「監視カメラの映像を見て、酷い対応だと思いました。何が起こるかわからないのに、誰も息子につかずにひとりで外に追い出すなんて。息子がこの時どんな気持ちだったかわかりますか? これはいじめですよ。許し難い対応です。」

ジャヴォーンさんとロヴィンさんは、この件をケント学区教育委員会に「校長の対応は子供を危険に晒し、義務の怠慢である」と訴え、警察にも通報した。これを受けた同学区は調査を開始し、現時点では校長を有給休暇扱いにして休職させているようだが、同学区側は「懲戒処分ではなく調査の過程の一部として休職させております。我々の優先すべきことは、スプリングブルック小学校において全児童の安全を守り優れた教育を提供し続けることです」と述べている。

ジャマー君一家は、調査をしているという学区側から明確な答えを求めている。なお、今回の件で傷ついたジャマー君はスプリングブルック小学校を辞め、学区側が提供した家庭教師でマンツーマンの授業を受けているという。ジャヴォーンさんは「今、息子は個人授業を楽しんでいますが、いずれは息子のニーズに見合った学校を見つけて転校することができれば」と話している。

画像は『KIRO-TV 2019年1月23日付「Child with autism locked out of school」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)