友だち幻想

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 社会学が専門の著者・菅野仁による『友だち幻想 人と人の<つながり>を考える』(筑摩書房)が、2008年の刊行から10年を経た今、各メディアで続々と取り上げられ話題を呼び、38万部突破のベストセラーとなっている。今年(2018年)4月に「世界一受けたい授業」(日本テレビ系列)で又吉直樹が本書を紹介したことから、認知度が一気に高まったという。 著者によると、本書は「身近な人たちとのつながりを見つめなおし、現代社会に求められている『親しさ』とはどういうものであるかをとらえ直すための、『見取り図』を描こうとしたもの」。「友だち幻想」とは、例えば「一年生になったら」の歌に象徴される「みんな仲良く」という発想、教育現場の常識。本書は、こうした「人と人のつながり」の常識を根本から見直し、新たな発想を提示している。

第1章 人は一人では生きられない?第2章 幸せも苦しみも他者がもたらす第3章 共同性の幻想――なぜ「友だち」のことで悩みは尽きないのか第4章 「ルール関係」と「フィーリング共有関係」第5章 熱心さゆえの教育幻想第6章 家族との関係と、大人になること第7章 「傷つきやすい私」と友だち幻想第8章 言葉によって自分を作り変える
 目次には、友だち関係で行き詰った時に、よりどころとなってくれそうな言葉が並ぶ。本書のタイトル「友だち幻想」とある第7章の「『人というものはどうせ他者なのだから、百パーセント自分のことなんか理解してもらえっこない。それが当然なんだ』と思えばずっと楽になるでしょう。そこは絶望の終着点なのではなくて希望の出発点だというぐらい、発想の転換をしてしまえばいい」をはじめ、一歩前へ進ませてくれるメッセージが詰まっている。スマホ社会のいま、本書が再注目され、幅広い世代から共感を得ているのも納得できる。 本書が再注目されている現状を受けて、2016年に亡くなった著者に代わり、妻の言葉が帯に添えられている。著者が本書を書いたきっかけの一つに「長女が学校での友人関係に悩んでいたこと」を挙げ、「教育者そして子を想う父親の視点から書かれた」としている。優しく、温かく導いてくれる文章から、親心が伝わってくる。 著者の菅野仁は、1960年宮城県仙台市生まれ。96年宮城教育大学教育学部助教授、2006年より同大学教授。16年より同大学副学長(学務担当)を兼任。専攻は社会学(社会学思想史・コミュニケーション論・地域社会論)。2016年、没。担当編集者によると、本書は人間関係で初めてつまずきを感じる多感な年頃の中・高校生に向けて書かれたものであると同時に、初学者向けに社会学を紹介するテキストとしても定評があり、中学から大学の課題図書や入試問題文として繰り返し使われているという。

書名:  友だち幻想
サブタイトル: 人と人の<つながり>を考える
監修・編集・著者名: 菅野 仁 著
出版社名: 株式会社筑摩書房
出版年月日: 2008年3月10日
定価: 本体740円+税
判型・ページ数: 新書判・156ページ
ISBN: 9784480687807


(BOOKウォッチ編集部 Yukako)